エコー(超音波)検査
<目次>
1.検査方法 [検査時間 目安:10~15分]
検査室へ入りましたら、シャツは胸のあたりまで持ち上げ、ズボンやスカートは腰骨あたりに下げてください。
準備ができましたら、ベッドに仰向けでお待ちください。
検査部位にゼリーを塗り、プローブと呼ばれる超音波を発する探触子を当てながらモニターで臓器の形態などを観察していきます。
観察しやすくするため、検査担当者の声に合わせて息を吸ったり吐いたり、体の向きを変えたりしていただきます。
画像を見やすくするため、お部屋を少し暗くして検査を行います。
2.注意事項
- 胆嚢の観察が出来なくなるため、検査前は食事を取らないでください。
午前の検査では朝食を、午後の検査では昼食を抜いてください。
また牛乳などの脂肪分を含む飲み物も控えてください。 - 我慢できる範囲でお小水を溜めておいてください(腹部エコーの方のみ)。
お小水が溜まっている方が、観察しやすい場合があります。
3.当院のエコー(超音波)検査でみれる臓器
4.実際にエコーで見つかった症例
5.費用(概算)
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項目 1割負担 3割負担 腹部エコー(超音波)検査 ¥530 ¥1,590 ※ 診察代などが別途かかります。
Q&A ~当院エコーの工夫~
なぜ、膵臓はエコー検査で観察し辛いのか?
「膵臓がんは怖い」と、耳にしたことはないでしょうか。
毎年検査受けていたにも関わらず、気づいたら大きくなっていた。
そんな話を聞いたことがあります。
何故でしょうか。
エコー検査において、膵臓は非常に見づらい臓器です。
上の図のように、膵臓は解剖学的に頭部・体部・尾部で区切られています。
膵臓の体部は胃や十二指腸との重なりが少ないため、比較的観察しやすい場所です。
しかし、頭部は十二指腸にぐるりと囲まれ、更に尾部は完全に胃の裏にもぐりこんでいます。
胃や十二指腸の中には空気が入っています。
エコーは空気に触れると減衰が大きくなり、画像を出すことが出来なくなるため、
矢印部分は非常に観察しづらい場所となってしまうのです。
もし、この死角にがんが出来てしまったとしたら。
膵臓がんは他の部位に浸潤しない限り痛みが出にくいため、発見できるのは「相当大きくなってから」ということにもなり得ます。
これが世間で「膵臓がんは怖い」と言われる所以です。
当院ではこの死角を出来るだけ少なくするため、積極的な体位変換を検査に取り入れています。
仰向けの観察のみでは、膵臓問わず様々な臓器で死角が生じます。それに対し上体を起こして頂いたり、横向きになって頂いたりすることで重力方向に内臓が動き、それまで見えなかった部位が明瞭に観察できます。
下の写真はとある患者さんの膵臓の写真です。
仰臥位での観察です。この時点では膵頭部、体部、尾部に明らかな病的所見は見当たりません。しかしコメントにあるように、尾部が胃のガスの影響で一部描出不可能でした。
当院では、この患者さんに対し右側臥位をとって頂きました。
側臥位にすることにより内臓が動き、ガスの影響も少なくなり、いい条件が重なったことで尾部の観察が可能になりました。
と同時に仰臥位では発見し得なかった病変を認めました(矢印)。大きさは8×7㎜です。
もちろん、体位変換によって全ての人が好条件になるわけではありません。しかし、当院では死角を減らすため必ず体位変換を行うようにしています。
お小水をためて検査を受ける理由は?
お小水をためる必要があるのは、腹部エコー検査の方のみです。
頸動脈エコー・甲状腺エコーをご希望の方はお小水をためていただく必要はありません。
では、なぜお小水をためる必要があるのか?
答えは下の写真を見てください。
緑枠に囲まれた黒い部分が膀胱です。
排尿後であるため内腔のみえる面積が少なく、周囲の腸管ガスの影響でぼんやりしています。
一方、下の写真は、十分にお小水がたまっている膀胱です。
約1.5㎝の膀胱がんが偶然見つかった一例です。
しっかりお小水がたまっているため、内腔がしっかり観察できます。はりが出ることで、周囲の腸管ガスの影響もほとんど受けません。
この様に条件が良ければ、1㎝以下の小さな膀胱がんも、発見することが可能です。
お小水をためて検査を受けることのメリットはまだあります。
膀胱が膨らむことでその背中側にある臓器、男性であれば前立腺、女性であれば子宮や卵巣がよく観察できるようになります。
※子宮・卵巣はお小水を溜めていても見えない場合もあります。
前立腺がよく見える場合はその大きさを測り、肥大の有無を確認します。
子宮や卵巣がみえた場合は、腫大や腫瘍がないかどうかを確認します。
このように膀胱、前立腺、子宮、卵巣は条件が良ければ観察可能です。
かといって、検査まで無理にお小水を我慢していただく必要はなく、つらい場合は排尿してしまって構いません。あくまでも我慢できる範囲で結構です。
エコーでみえるもの、見えないもの
検査中、患者さんからよく「エコーで何がみえるの?」という質問をうけます。
ひとつひとつ挙げたらきりがないので、ここでは大雑把にエコーでみえるものとみえないものをご紹介します。
まず、エコーでみえないものは主にこの二つです。“骨”と“ガス(空気やおなら)”です。エコーはこの二つにぶつかると、減衰・反射を起こし画像を作ることが出来なくなります。
時折、「背中が痛いから、背中からエコーを当てて検査をしてほしい。」という患者さんがいらっしゃいますが、背中はエコーの天敵、“骨”で覆われているばかりか、その奥に“空気の塊である肺”が存在するため、背中からエコーを当てても情報を得ることは難しく、基本的にはお腹側から検査をします。
それでは、エコーでみえるものはなんでしょうか。
それは“骨より柔らかくてガスを含まないもの”と“水”です。
具体的にいうと臓器なら肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胆嚢、大動脈(詳しくはエコー検査:3を参照してください)などがみえます。
そしてそれらに出来た
良性の腫瘍、がん、石、ポリープなどを見つけることが出来ます。
またその他に、形や大きさの変化、色の変化などを観察しています。
◆ポリープ
エコーでみえるポリープは、主に“胆嚢ポリープ”です。
たまに患者さんからポリープがあると伺い、必死になって胆嚢ポリープを探していると、よくよく聞いてみたら大腸のポリープの話だった、ということがあります。
前述のとおり、大腸には腸内細菌が産生したガスが存在するため、残念ながらエコーでは大腸の壁の厚さは測れても、内側は観察できません。大腸の内側の観察には大腸カメラが有用です。
この写真は胆嚢と、矢印はそこに出来たポリープです。胆嚢の中は胆汁という液体で満たされているため、内腔が黒く観察できます。この写真の胆嚢ポリープは直径3~4㎜程ですが、1㎝をこえてくると癌との鑑別が必要になります。
検査の8時間以内にお食事をしてしまうとこの胆嚢が収縮してしまい、内腔がつぶれてポリープの観察が出来なくなってしまいます。
そのため、午前中の腹部エコーをご希望の方には朝食を、午後の腹部エコーをご希望の方には昼食を抜いて頂いております。
◆形や大きさの変化
形の変化や、大きさの変化をみつけた場合、検査中の痛みの程度などを確認しながら、炎症かどうかを考えながら検査をします。
例えば、上の写真は腫大した虫垂(いわゆる盲腸)の写真です。圧痛が一致したため、急性虫垂炎と判断しました。
◆色の変化
エコーでは色の変化をみることもできます。白と黒の世界ですが、その中でもわずかな色調の変化に気づくことで新たな疾患に気づくことができます。
上の写真は脂肪肝の様子です。脂肪肝は通常の肝臓より全体的に白っぽく描出されますが、主観で評価にばらつきが生じないよう、“脂肪肝”と診断するには決まりがあります。それは腎臓より肝臓の色が白く、かつ脾臓より肝臓の色が白いことです。
写真をみてお分かりになるように、三つ並んだ臓器の中で、一番白いのは肝臓です。
これにより、“脂肪肝”という診断がつきます。
太っているとエコーで見辛いって本当?
本当です。
脂肪が多い人は、少ない人に比べ一枚ベールをかけたような、ぼやっとした画像になります。
実際の写真で見比べてみましょう。
左が痩せた患者さん、右が太った患者さんの膵臓の写真です。二つを比較し、右の膵臓のほうが下に写っているのに気づかれると思います。太った方は当然脂肪の量が多く、膵臓の上に厚い脂肪がのってくるため、このような高さの違いとして現れます。
しかし、見え方自体にはあまり違いが無いように思われるでしょうか。
ガイドの線を外してもう一度提示します。
ご覧のとおり周囲の脂肪にとけこみ、ベールをかぶった膵臓です。
観察は非常に困難です。
エコーは脂肪を通過する際、減衰します。その脂肪の厚さがあればあるほど(距離がのびるほど)減衰も大きくなります。
結果、脂肪の厚い人すなわち太った人は、“エコーで見づらい”ということになります。
こういう場合の対処法として、機械操作で焦点を合わせたり、最新の機械を使用するなど環境面を整えることはもちろん、技術的に効果的なのは“圧迫”する事です。
お腹の上から圧迫することで、プローブと臓器の距離を物理的に近づけることができ、脂肪を通過するエコーの距離を縮めることができます。また圧迫は、ちょっとしたコツで周囲の胃や腸のガスを移動させることも可能です。そのため圧迫しない場合に比べ明瞭に臓器が観察できます。
逆に痩せた患者さんに対しては、圧迫することでみえなくなってしまう臓器もあるので、殆ど力を加えずに検査するなど、患者さんの体型に合わせて工夫をしています。