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急性虫垂炎

虫垂は大腸の始まりの部分から突出している腸管の一部で、通常右下腹部に存在します。

急性虫垂炎(いわゆる盲腸)は、虫垂の内部が閉塞し細菌が増殖し炎症・感染が生じた腫れた状態をさします。

 <目次>

 

原因

急性虫垂炎は,虫垂内腔の閉塞が発生の要因となります。

リンパ組織の過形成や糞石、異物、腫瘍によって閉塞が引き起こされ.閉塞によ虫垂内圧が上昇し,腸内細菌異常増殖や循環障害が生じ、二次的に感染が加わることで発症します。

 

症状

腹痛:

上腹部や臍周辺に突然始まり、時間とともに右下の腹部移動することが多いです。

時に嘔吐、吐き気もおこります。

発熱:

炎症が強くなると発熱も起こります

 

検査

急性虫垂炎と同じように、大腸憩室炎過敏性腸症候群、時に大腸がんなどでも右下腹部に痛みを生じるため、まずは血液検査やレントゲン・腹部エコー(もしくはCT)などで状態を評価し、確定診断をつけます。

血液検査:炎症の程度の確認

腹部エコー ・レントゲン/ CT:虫垂炎の状態やその炎症の広がり、穿孔(腸に穴が開くこと)がないかを確認します

 

※実際の急性虫垂炎のエコー所見※

右下腹部の痛みがある部位に一致して腫大した虫垂を認め、急性虫垂炎と診断しました。

 

治療

炎症が虫垂に限局している場合は、内科的に抗生剤治療を行います。痛みが強い場合や、炎症反応が強い場合・穿孔(腸に穴が開くこと)を来している場合には外科治療=手術を行います。

 

内科的治療 

・抗生剤(8-9割くらいは改善しますが、悪化時は緊急手術になる可能性もあります)

・安静

・食事制限

 

外科的治療

・手術 

※疼痛強い時・重症時・穿孔を来した際に考慮します。(そのような場合には速やかに連携病院にご紹介させて頂きます。)

※内科的治療で改善した場合でも、後日再発するリスクがあるため、炎症が落ち着いた後に待機的に手術をする場合もあります

 

実際の治療例

20代女性 急に発症したみぞおちの痛み・右下腹部痛 

【症状】

前日夜から急にみぞおちの痛みが出現。改善するかと思い様子を見ていましが、どんどん増強してきたとのことで当院を受診されました。

 

【診察】

診察時にはみぞおちに加え、右下腹部にも痛みが出てきており、触診上でも右下腹部にかなり強い痛みがありました。

急激に症状が発症していることと、痛みがみぞおちから右下腹部に移動してきたことから急性虫垂炎(いわゆる盲腸)を疑いエコー検査を行いました。

 

【検査】

エコー検査では、虫垂の肥厚を認め虫垂炎と診断しました。

 

【治療】

エコー検査では虫垂の穿孔(穴が開くこと)はなく、血液検査でも炎症は軽症であり、抗生剤の点滴で炎症を散らすこととしました。

翌日の再診時には痛みはかなり落ち着いており、炎症は改善傾向であり、3日ほど抗生剤を続け、最終的に痛みの改善、エコーや血液検査でも炎症の鎮静化を確認し、いったん治療終了としました。

 

薬で散らした場合は再燃するリスクもあるため、落ち着いた後に予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります。(今回は患者さん本人が希望されず、手術までは行いませんでした。)

 

Q&A

Q:入院が必要ですか?

A:軽症であれば外来診療が可能です。

ただし、点滴なども行うため頻回な通院が必要になります。また、悪化時には入院に移行するケースもあります。

 

Q:抗生剤治療中に手術になることもありますか?

A:あり得ます。

抗生剤治療での改善率は80~90%と言われていますが、逆に言うと10~21%は手術になるとのデータがあります1)

改善効果が乏しいまたは悪化j時には 48 時間以内に手術へ移行することが推奨されており2)、タイミングを逸しないように抗生剤治療の際は慎重に経過を見る必要があります。

参考文献:1)Rolins KE, Varadhan KK, Neal KR, et al: AntibioticsVersus Appendectomy for the Treatment of Uncomplicated Acute Appendicitis: An Updated Meta-Analysisof Rondomised Contorolled Trials. World J Surg 40:2305-2318, 2016

2)Podda M, Serventi F, Mortola L, et al: A prospectivenon-randomised controlled, multicenter trial comparingAppendectomy and Conservative Treatment for Patients with Uncomplicated Acute Appendicitis (theACTUAA study). Int J Colorectal Dis 32:1649-1660,2017

 

Q:抗生剤で散らした場合は再発しますか?

A:ありえます。

薬で散らした場合は15~30%程度の再燃リスクもあるため1)、落ち着いた後に1-3か月をめどに予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります2)

参考文献:1)Tekin A, Kurtoglu HC, Can I, et al: Routine interval appendectomy is unnecessary after conservative treatment of appendiceal mass. Colorectal Dis 10:465-468,2018

2)前田 大,藤崎真人,高橋孝行ほか:成人の虫垂膿瘍に対する interval appendectomy.日臨外会誌 64:2089-2094,2003

 

Q:ガンによって虫垂炎を起こすことはありますか?

A:あります。

40 歳以上ではおよそ 16%に虫垂悪性腫瘍を指摘したとの報告があり1)、ガンによる閉塞で虫垂炎が引き起こされることもあります。

炎症や症状の改善後も、エコー検査などの画像検査でも虫垂の腫大が改善していることを確認することが重要です。

参考文献:1))Wright GP, Mater ME, Carroll JE, et al: Is there a trulyan oncologic indication for interval appendectomy? AmJ Surg 209:442-446, 2015

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

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