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機能性ディスペプシア

「胃が痛くて病院で検査したが、異常がないと診断され、胃薬を飲んだが治らない」

「吐き気や胃もたれが慢性的に続いて近くの内科に行ったが、精神的なものと言われちゃんと治療してもらえなかった」

日々の外来の中でそのようなお話を度々伺います。

 

“胃が痛いのに検査では異常はない”、“胃の調子が慢性的に悪い”

 

そんな方は機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)かもしれません。

 

機能性ディスペプシアとは、食道や胃・十二指腸、その他の内臓に病気がないにも関わらず、胃の機能の異常(※)や、食道・胃の粘膜の知覚過敏などで、痛み・はり・もたれ・吐き気などが起こる状態です。以前は「神経性胃腸炎」や「胃が弱い」などと表現されていた疾患になります。

 

※胃の機能

胃酸の分泌:胃酸が分泌過多になると粘膜を刺激して不快感や痛みの原因になります。

食べ物の排出:胃の排出機能がおちると、もたれや吐き気・張りや食欲不振が起こります。

 

<目次>

1.機能性ディスペプシアの原因は?

2.症状は?

3.検査は?

4.治療は?

5.なぜ「治らない」のか?その4つの理由とは?

6.実際の治療例

7.Q&A

 

機能性ディスペプシアの原因

もともと、胃や腸などの臓器は自分で動かそうと意識しないでも勝手に動いている臓器で、この動きをコントロールしている神経を自律神経と言います。

 

ストレスや疲れ・不規則な生活(アルコール・不眠・疲れ)などの外的な要因が加わると、自律神経の乱れが生じたり胃の粘膜に負担がかかることで胃が機能異常を来し、胃酸分泌過多胃の排出機能の低下や膨らみの低下といった運動異常が起こります。

 

また、胃や腸の粘膜は非常にデリケートなので、ストレスなどの外的要因によって知覚過敏になることもあり、通常の胃酸の刺激や腸の動きを違和感・痛みと誤認してしまうこともあります

 

このような胃酸分泌過多や胃の運動異常・知覚過敏によって胃痛・胃もたれ・早期飽満・不快感といった機能性ディスペプシアの症状が発症します。

 

そして同じようなストレス環境や生活環境にあっても症状を発症する方とそうでない方がいるのは、遺伝胃の形の違い胃内細菌叢などの体質的な要素も関わってきます。

 

 

機能性ディスペプシアは日本人の10%程度に見られ、実際に胃痛・胃もたれなどの胃の症状を訴えて受診する方の約半数が機能性ディスペプシアが原因と言われています1)

 

※機能性ディスペプシアを引き起こす要因としてわかっているもの※

体質的な要素

・遺伝的要因2)

・生育環境3)

・胃の形4)

・胃内細菌叢5)など)

外的な要因

・ストレス6)

・感染性胃腸炎7)

・運動・睡眠不足8)

・食事内容(高脂肪食・香辛料)や食習慣(食べ過ぎ)などのライフスタイル8)

・薬剤(抗不安薬・抗うつ剤など)

など

 

ここ最近では、コロナウイルスワクチンを接種後に食欲不振や胃の不快感などの胃腸症状を起こす方が増えており、一時的な胃の機能異常を生じている可能性があります。

 

※以前はピロリ菌感染によっておこる症状も機能性ディスペプシアとされていましたが、現在は別の病態として切り離されて考えられています。9) 10) 11)

 

◆胃内細菌叢と機能性ディスペプシアの関係◆

同じようなストレスや疲れがあっても機能性ディスペプシアを発症する人とそうでない人がいます。

その差は体質的な部分になってきますが、その一つに“胃内細菌叢によって形成される胃内環境”が関わっていると言われています。

 

健常な方と機能性ディスペプシアの方とで胃液の細菌叢構成を調べてみると、機能性ディスペプシアの方では典型的な腸内常在菌属であるバクテロイデス属、ビフィドバクテリウム属などに加え、病原性を持つエスケリキア属が多数検出されています。

 

機能性ディスペプシアの方に特定の乳酸菌の摂取を続けてもらい、胃液を採取し再検査したところ、これらの胃内細菌叢の異常の大部分が是正され、胃の症状も改善していたとの報告があり12)、症状の発症に関わっている可能性が示唆されています。

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症状

機能性ディスペプシアの症状としては、

・みぞおちや胃の痛み、上腹部の違和感

・胃や上腹部のはり、胃もたれ

・すぐにお腹いっぱいになる(早期腹満感)

・吐き気、むかつき

・食欲不振

などが起こります。

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検査

機能性ディスペプシアは、症状の原因となる他の病気がないことをしっかり調べたうえで初めて診断されます

(例えば、胃痛・胃もたれといった症状であれば、機能性ディスペプシアの他に胃潰瘍胃がん、膵臓や胆のう疾患などの可能性もあります。)

 

まずは問診でしっかりと症状や状況を確認し、以下の検査を組み合わせて診断を行っていきます。

腹部エコー■

外から膵臓胆のうなどの上腹部の内臓の状態を確認します。また大きな胃潰瘍・十二指腸潰瘍はエコーでもわかります。

血液検査■

痛みの原因となる炎症などがないかを確認します。

胃内視鏡検査(胃カメラ)■

実際に胃の粘膜の状態を確認し、症状の原因となる病気(胃炎・潰瘍・がん)などがないかを調べます。

 

※当院は苦痛なく検査をお受け頂ける無痛胃カメラを行っております。

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治療

検査をして異常がなければ、機能性ディスペプシアと考え治療を行います。

 

■内服薬■

①胃酸の分泌過多を正常化するような制酸剤

②胃の動きを改善し、お腹の張りやもたれを改善するような消化管運動改善薬を使います。

 

■漢方薬■

粘膜の知覚過敏を抑えたり、動きを健全化させてくれる作用のある漢方を使います。また「胃が弱い」といったような体質を改善するのにも役立ちます。

 

■胃のサプリi-katsu■

機能性ディスペプシアの発症には、前述のように胃内の常在細菌叢の変化が関わっているとの報告があり、当院では胃内細菌叢を改善させたり、胃酸の分泌過多や動きを改善させるオリジナルのサプリ「i-katsu」による治療も行っております。

※関連ページ;当院オリジナルのサプリi-katsuの詳細について

 
生活習慣の改善■

食生活の見直し、ストレスが多い場合は休養など

高脂肪食を避ける

脂肪分は胃の動きを低下させる作用があるため、もたれ感や張り・違和感などの要因になります。

特に揚げ物やクリームの多いデザートなどは避けたり、2食連続して食べないように心がけましょう。

アルコール、香辛料、高カフェイン(ブラックコーヒーなど)

胃の粘膜を刺激して酸の分泌が強くなるため、症状が出ている際には避けるようにします。

早食いをしない

食事が形が大きいまま胃の中に入れたり、胃の中に入ってくる量が多いと、とどまる時間も長くなり消化に時間もかかるため、張りや胃もたれの要因になったり、胃酸の分泌も増加し胃痛の要因になります。

また、胃は食事開始後15~20分で動きが強まってくるため、胃の動きに合わせて早食いをせずゆっくり食べることで、症状が出にくくなります。

さらにしっかりとよく咀嚼することで、迷走神経という自律神経が刺激され、胃が動きもよくなるというよい循環が生まれます。

回数を分ける

ゆっくり食べてもすぐ満腹になったり、食欲が出ない場合は、一回の量を抑えて回数を増やす方法もあります。

無理矢理食べることで、胃に負担になったり、そのことがストレスになりさらに機能性ディスペプシアを悪化させることもあるため、症状が安定するまでは1日5-6食に分けて頂くこともあります。

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なぜ「治らない」のか?その4つの理由とは?

機能性ディスペプシアは冒頭のように治療を受けても治らないというケースが多く見受けられますが、「治らない」のにも理由があります。

理由①薬があっていない

機能性ディスペプシアの直接的な要因としては

  • 胃と十二指腸の運動異常
  • 胃酸分泌過多
  • 内臓知覚過敏 

が挙げられます。

ご自身の胃の症状が上記のどの状態によって引き起こされるのかをしっかり把握した上で投薬を行わないと症状を治すことができません。

実は同じ「胃もたれ」の症状についても、胃の動きが落ちて食事が滞留しておこるのか、胃酸の分泌過多によってもたれが生じるのか(胃酸は出すぎても粘膜を刺激して胃もたれ感を感じます)によって使う薬が全く変わります。

同じ「胃もたれ」でも原因が違う

 

治療ガイドラインでもまず最初の治療と位置づけされる制酸剤は、胃酸分泌過多の症状には効きますが、動きが落ちて胃もたれが出ている方には全く効果がない薬となります。

ですので、ただ漫然と投薬を行うのではなく、症状から胃の状態を考え検査を行い、機能性ディスペプシア症状をもたらす直接的要因を把握して適切な薬を使用することが大切です。

 

理由②外的因子が解決していない

機能性ディスペプシアの症状の原因となる胃の運動異常・胃酸分泌過多などは、外的因子(ストレスやライフスタイルなど)によって引き起こされます。

適切な薬を使い胃の機能のコントロールを行っても、強いストレスがつづく場合や機能性ディスペプシアの引き金になっているライフスタイルを変えないと、症状が中々取れなかったりぶり返しやすくなります。

当院では投薬治療を行うと同時に、適切な食事指導ライフスタイルの改善指導なども治療の一環として合わせて行い、治療の効率化・再発予防にも取り組んでいます。

 

理由③体質的な要因に対しての治療が難しい

同じようなストレス環境やライフスタイルであっても機能性ディスペプシアを発症する人とそうでない人がいます。

これには「機能性ディスペプシアの原因」のところで用いた図の一番上にあたる「体質的な要因」が関わってきます。

 

残念ながら遺伝的な素因や胃の形などを変えることはできませんが、前述のように機能性ディスペプシアの方に特定の乳酸菌の摂取を続けてもらうことで胃内細菌叢の異常の大部分が是正され胃の症状も改善していたとの報告があり、

“胃内細菌叢によって形成される胃内環境”をコントロールすることで機能性ディスペプシアになりやすい体質を変えていくことができる、と考えています。

 

現在の所は薬として胃内細菌叢を是正するようなものはありませんが、当院ではオリジナルの胃由来の乳酸菌のサプリを使用することで胃内環境を適正化する診療を行い、より深い部分での機能性ディスペプシアの治療にも取り組んでいます。

オリジナルサプリi-katsuの詳細はこちら

 

理由④そもそも診断が間違っている

機能性ディスペプシアは「検査しても何も異常がないにも関わらず、胃の症状で悩まされる状態」を指しますが、実際に機能性ディスペプシアと診断されている方の中に、別の病気の方がおられることがあります。

当院でも他院で機能性ディスペプシアと診断され治らないと受診された方で、調べてみると胃がんが見つかったり膵炎がみつかったりすることもあります。

これは機能性ディスペプシアの診断にあたり症状や年齢だけで判断されてしまい、きちんと検査をしないことが原因であり、胃カメラ・腹部エコー・レントゲン・血液検査などを行い病気が潜んでいないかを見極めることが重要です。

 

実際の治療例

 

ケース① 20代 女性 食後の胃痛

【症状】

以前から何となく胃が痛くなることが多かったが、社会人になり環境が変わってから胃痛の頻度が増え、最近は食事をとると痛みが出て、あまり食事をとれず体重も減ってきたとのことで当院を受診されました。

 

【診察】

診察上は心窩部(みぞおちの辺り)を押すと痛みを感じ、食後に増強するとのことから胃潰瘍胆石・膵炎、環境が変わったことを契機に症状が悪化したとのことから機能性ディスペプシアなどが鑑別として考えました。

 

【検査】

腹部エコーにて肝胆膵の状態を、胃内視鏡検査を行い胃の状態の検査を行いました。

腹部エコーでは、肝胆膵などの上腹部の臓器に痛みの原因となるような異常は認めませんでした。また、胃カメラでも幸いなことに、胃の中に病変はなく、ピロリ菌もなく異常所見はない状態でした。

【治療】

以上のように検査では特に疾患はなく、機能性ディスペプシアと診断しました。

機能性ディスペプシアは、前述のように病変がないにも関わらず、心因的ストレス・疲労などの身体的ストレスなどが原因となり胃酸分泌過多胃の粘膜の知覚過敏を生じることで、胃痛が生じます。

治療としては、制酸剤・粘膜保護剤を飲んでいただきました。

 

 <治療内容>

①制酸剤

胃酸分泌過多を抑えることで、胃痛が出ないようにします。

②胃粘膜保護剤

胃の粘膜を刺激から保護し、痛みを抑えます。

 

【経過】

内服開始してしばらくすると胃痛は6割くらいになったものの、完全には取れない状態でした。

胃酸分泌過多だけではなく、粘膜の知覚過敏も関与していると考え、知覚過敏を抑えるような漢方薬を追加したところ、痛みは徐々に改善しました。

今回の胃痛は環境の変化によって悪化しており、今後変化に体が順応することで落ち着くと考えますが、しばらく時間がかかりそうとのことで、そのまま薬と漢方を継続し経過を見ています。

 

機能性ディスペプシアの胃痛は、胃酸分泌過多の他に粘膜の知覚過敏も関与しているといわれ、制酸剤があまり効かない場合に知覚過敏に有効な漢方などを使用すると症状が改善するケースがよく見られ、当院では漢方を組み合わせる治療も積極的に行っております。(漢方も保険診療にて処方できます。)

 

ケース② 30代 女性 食べるとすぐに満腹になってしまう

症状

 2-3か月前から家庭内でのストレスがあり、その頃から食べるとすぐに満腹になってしまい、食事量が減り、病気ではないかと心配になり来院されました。

 

診察

触診上は腹部特に問題なく、ストレスを契機に症状が悪化したとのことから機能性ディスペプシアなどを考えました。

ただ、胃がんなどで胃の内腔が圧排されたり、胃の伸展が悪くなった場合や、胃の周囲の臓器からの圧迫でも同様の症状が起こるため、まずは腹部エコーや胃内視鏡(胃カメラ)で胃や周りの臓器の状態を確認しました。

 

検査

腹部エコーでは、胃の周囲からの圧迫などの異常は認めませんでした。また、胃カメラでもガンなどの病変はなく、ピロリ菌もなく異常所見はない状態でした。

 

治療

以上のように検査では特に疾患はなく、機能性ディスペプシアと診断しました。

食べると胃がすぐに満腹になることを、早期飽満感といい、機能性ディスペプシアの中でも適応性弛緩や排出機能の低下といった胃の動きの異常で生じてきます

 

胃の中に食べ物が入ると、胃の緊張が解け、胃の筋肉が弛緩し食べ物を受け入れるため弛緩し膨らみ(適応性弛緩)、蠕動を起こし食べ物を排出します。

この弛緩がうまくいかず、緊張が続くと、胃が膨らまずにすぐに食事でいっぱいになってしまい、満腹になってしまいます。

 

今回もこの適応性弛緩がうまく機能していないことを考え、改善するための投薬治療を行いました

(※蠕動がうまくいかないと、胃の中に食べ物がたまり胃もたれなどを起こします。)

 

 <治療内容>

①消化管運動改善薬

胃の動き(適応性弛緩)を改善するアコチアミドを使用しました。

②漢方

漢方にも胃の動きを改善させるものがあり、アコチアミドと相性の良いものを併用しました。

③食事指導

胃の動きは食事開始後15~20分で動きが強まってくるため、胃の動きに合わせ、症状の出にくいゆっくりとした食べ方を実践して頂きました。

 

【経過】

内服開始直後は症状はあまり変わらない感じとのことでしたが、3-4日目から少し和らいだ印象が出てきて、その後も少しづつ改善し、2週間目の再診時には7割くらい改善していたとのことでした。

投薬はそのままさらに2週間継続し、計1か月経過した際には、腹満感は消失し食事も通常通りに食べれるようになっていました。

その後家庭内のストレスも無くなってきたとのことで、薬は徐々に減薬し、いったん終了としましたが、再発なく落ち着いた状態が維持できています。

 

ケース③ 30代 男性 機能性ディスペプシアが治らない

症状

3年ほど前に急性胃腸炎になり、胃腸炎自体は改善したものの、その後から食後の胃痛と嘔気が続いており、他院にて機能性ディスペプシアと診断され、いくつかの医療機関で投薬治療を受けましたが改善なく、当院を受診されました。

 

問診・診察

腹部の触診上は大きな異常はありませんでしたが、ご本人が食後に痛みを感じる部位は心窩部といういわゆるみぞおちの辺りで、胃や十二指腸・小腸・膵臓などが原因となり痛みを感じる部位でした。

以前に受診された医療機関にて、胃の内視鏡検査やCTなどの検査などは施行され異常はなかったとのことでしたが、以前の検査から3年ほど経過していることと、ご本人が再度当院で検査を受けたいとのことで、胃内視鏡(胃カメラ)腹部エコー・血液検査などを行うこととしました。 

 

検査

腹部エコーでは、膵臓を含め、肝臓・胆のうなどの心窩部周囲の臓器に異常は認めず、血液検査も問題所見はなく、胃内視鏡検査でも異常所見はありませんでした。

また、今回はご本人の希望で小腸に異常がないかも確認したいとのことで、小腸カプセル内視鏡も施行しましたが、こちらも問題なく、当院でも機能性ディスペプシアとの診断に至りました。

 

治療

感染性胃腸炎(いわゆる食当たり)を起こした後に、機能性ディスペプシアを発症する方が時におられます。

感染を起こしたことによる身体的なストレスや、菌の感染や治療時の抗生剤による腸内細菌叢・胃内細菌叢の変化などが発症の要因と推察されます。

今までの治療で様々な内服薬を試したものの、改善が今一つとのことでしたので、原因の一つと考えられる細菌叢の改善を目指し、内服薬に加えサプリを追加して飲んで頂き経過を見ることとしました。

 

 <治療内容>

サプリ

当院で作成したオリジナルサプリのi-katsuには、胃酸分泌の正常化や胃内細菌叢の改善、胃の動きの改善を期待できる成分が含まれています。

いずれも薬とは異なる作用機序のため、今までの治療が効かない場合にも効果がでる可能性があるため、試して頂きました

※前医の薬の継続及び内容の見直し

消化管運動改善薬

嘔気の原因には胃の動きの低下があり、動きを改善する薬を使用しました。

制酸剤+粘膜保護剤

胃酸分泌過多を抑え、胃の粘膜保護することで胃の痛みを抑えます。

 

【経過】

服用を始めてしばらくすると、痛みも嘔気も頻度・程度ともに減ってきたとのことでした。

2週間目の再診時には症状は半分くらいになった印象とのことであり、もう2週間治療を継続し、1か月目の再診時には症状はほぼなくなったとのことで、内服は一旦中止しました。

その後も、症状は落ち着いていますが、i-katsuを飲むと胃の調子が良い気がして食事もおいしく食べれるとのことであり、継続して頂き、経過を見ております。

※サプリは薬と違い、通常は副作用が出ることがないため長期でも安全に飲んでいただけます。

 

機能性ディスペプシアは、時に治療に反応が悪く症状が長引くこともありますが、薬の種類を変更したり、サプリなどの薬とは違う作用機序のものを使うことで症状が改善するケースもあります。治らない場合はサプリを試してみるのも選択肢の一つです。

当院オリジナルサプリ"i-katsu"の詳細はこちらから

 

ケース④ 30代 女性 胃痛があるが胃薬を飲むと便秘してしまう

【症状】

以前からストレス時に胃痛を感じることが多く、転職を気に常に胃痛を感じるようになり、前医にて機能性ディスペプシアと診断を受け胃薬を処方されましたが、飲むとひどい便秘になってしまい薬が飲めないとのことで当院を受診されました。

 

【診察】【検査】

前医にてすでに胃カメラや腹部エコーなどの検査は受けておられ、持参された検査画像を確認しましたが異常はなく、症状と合わせて当院でも機能性ディスペプシアの診断としました

 

【治療】

機能性ディスペプシアの胃痛の原因としてはストレスなどによる胃酸の分泌過多が挙げられます。

ですので治療としては制酸剤を使用することが多いのですが、制酸剤の副作用として便秘や下痢などの便通異常をきたす方がおられます。

今回も前医で数種類の制酸剤を使用しましたが、いずれも便秘になってしまったとのことで、制酸剤の代わりにi-katsuを使用することとしました。

※i-katsuに含まれる乳酸菌LJ88には、胃酸の分泌を促す「ガストリン」というホルモンを作る細胞に働きかけることで、過剰な胃酸の分泌を抑制する制酸作用があります。

参考文献:乳酸菌LJ88による胃酸の適正化試験 食品と開発51巻/9号 P71-73, 2016

 

【経過】

i-katsuを飲み始めて2-3日すると胃の痛みが明らかに減り、2週間ほど経過するとほとんど感じなくなる状態となりました、

便通についても便秘になることはなく、むしろ調子がよくなったとのことで、i-katsuを継続し胃も腸もよい状態をキープすることができています。

 

今回のように胃薬で便通異常を来したり、血球異常や肝障害などの副作用が出る方が稀におられ、薬を中止せざるを得ず、治療に難渋することもあります。

i-katsuはサプリであり薬でみられるような副作用が起こらないという特徴があり、胃薬が飲めない方にも安全に使用することができ、また、乳酸菌には整腸作用があり、便通が悪くなるどころか調子がよくなる方が多く、副作用で薬が使えない方、薬を飲むのに抵抗がある方などにもお役立ちできると思います。

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QA

 

Q:機能性ディスペプシアの頻度はどのくらいですか?

A:日本人の約10%程度に見られ、実際に上腹部の症状で受診された方の45~53%程度が機能性ディスペプシアと言われています。

頻度的にはよくある病気ということができますが、逆に言うと症状がある方の半分は何らかの病気が潜んでいるということであり、診察や検査を行いしっかりと診断をつけることが重要です。

 

Q:機能性ディスペプシアの診断に内視鏡(胃カメラ)やピロリ菌・腹部エコーの検査は必要ですか?

A:基本的には必要と考えます。

機能性ディスペプシアにみられる胃痛や胃もたれ・吐き気などの症状は、胃がんピロリ菌感染などの胃の疾患や、胆石膵炎甲状腺疾患などの他の病気でも起こりうるため、胃カメラやピロリ菌検査・腹部エコー・血液検査などを行いそれらの病気をきちんと否定しておくことが重要です。

 

Q:機能性ディスペプシアは家族歴や遺伝的な要因が関連しますか?

A:関連すると考えられています。

機能性ディスペプシアは家族歴があることが示唆されており、また様々な遺伝子多型が関連しているとの報告があり、発症しやすい家系や遺伝子があると考えられています。

 

Q:胃腸炎や食あたりを起こした後に機能性ディスペプシアになることがありますか?

A:あります。

胃腸炎による下痢や嘔吐などの症状や炎症自体が改善したにも関わらず、胃もたれや食欲不振などの症状が続くケースが報告されており、感染後機能性ディスペプシアと呼ばれています。

時に胃腸炎が治っていないと誤診されてしまい誤った治療が続けられ一向に症状が改善しないケースなどもあり、適切な治療を受けるため胃腸の専門で診察を受けることが大切です。

 

Q:機能性ディスペプシアは治らないと言われましたが、本当ですか?

A:しっかりした治療・習慣の改善を行っていくことで治療することは可能です!

機能性ディスペプシアによって引き起こされる胃痛・吐き気・むかつき・食欲不振などの症状は投薬治療にて抑えていくことができますが、繰り返しやすい疾患ではあります。

(実際に機能性ディスペプシアは一旦改善しても、20%程度の再発があるとのデータがあります

発症や再発にはストレスや食生活などが関わってきますので、ストレス因子の改善や生活習慣を改善することも大切です。

また、同じようなストレス環境や生活習慣であっても、機能性ディスペプシアになる方・ならない方がいるのは胃内細菌叢・遺伝的素因・胃の形などの体質が関わってきます。 そのような体質的な部分を改善するために、漢方やサプリを使用して繰り返さないようにするための予防治療も行っております。

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

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参考文献

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2)Song YZ, You HY, Zhu ZH, et al. The C825T polymorphism of the G-protein β3 gene as a risk factor for functional dyspepsia: a meta-analysis. Gastroenterol Res Pract 2016; 2016: 5037254(メタ)

3)Drossman DA, Talley NJ, Leserman J, et al. Sexual and physical abuse and gastrointestinal illness: review and recommendations. Ann Intern Med 1995; 123: 782-794(メタ)

4)Kusano M, Hosaka H, Moki H, et al. Cascade stomach is associated with upper gastrointestinal symptoms: a population-based study. Neurogastroenterol Motil 2012; 24: 451-e214

5)Nakae H, Tsuda A, Matsuoka T, et al. Gastric microbiota in the functional dyspepsia patients treated with probiotic yogurt. BMJ Open Gastroenterol 2016; 3: e000109

6)Henningsen P, Zimmermann T, sattel H. Medically unexplained physical symptoms, anxiety, and depression: a metaanalytic review. Psychosom Med 2003; 65: 528-533(メタ)

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10)Stanghellini V, Chan FK L, Hasler WL, et al. Gastroduodenal disorders. Gastroenterology 2016; 150: 1380- 1392 6)

11)日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会(編).H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2016 改 訂版,先端医学社,東京,2016

12)第105回日本消化器病学会総会 ワークショップ7「機能性消化管障害診療の科学的エビデンス」)

・Pinto-Sanchez MI, Yuan Y, Hassan A, et al. Proton pump inhibitors for functional dyspepsia. CochraneDatabase Syst Rev 2017; 11: CD011194
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functional dyspepsia: a meta-analysis. Gastroenterol Res Pract 2016; 2016: 5037254
・Drossman DA, Talley NJ, Leserman J, et al. Sexual and physical abuse and gastrointestinal illness: reviewand recommendations. Ann Intern Med 1995; 123: 782-794
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※Meineche-Schmidt V, Talley NJ, Pap A, et al. Impact of functional dyspepsia on quality of life and healthcare consumption after cessation of antisecretory treatment: a multicentre 3-month follow-up study. ScandJ Gastroenterol 1999; 34: 566-574

 

 

■関連ページ■

なぜ機能性ディスペプシアは治らないのか?

胃腸内科が作ったサプリ「i-katsu」

胃内視鏡(胃カメラ)

エコー

胃潰瘍

胃がん

小腸カプセル内視鏡

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