【実際の治療例】左わき腹の痛み…放置していたら「大腸憩室炎」でした
「左わき腹に鈍痛、そのうち治るだろう…」
このように思って様子を見ているうちに、痛みが強くなって受診される方は少なくありません。
今回は、3日前から左わき腹の鈍痛が続き、歩くと響くほど痛みが強くなったため当院を受診され、下行結腸の大腸憩室炎と診断された50代女性の実際の治療例をご紹介します。
大腸憩室炎は、軽症であれば外来治療で改善することもありますが、放置すると膿瘍形成や穿孔、腹膜炎などに進行することがあります【1】【2】。
左わき腹や左下腹部の痛みが続く場合は、「便秘かな」「筋肉痛かな」と自己判断せず、早めに消化器内科・胃腸内科で相談することが大切です。
左わき腹の痛みが続く方へ
左わき腹や左下腹部の痛みが1日以上続く、痛みが強くなっている、歩くと響く、発熱を伴う場合は、早めの受診をおすすめします。
巣鴨駅前胃腸内科ではWEB予約・電話予約を受け付けております。是非ご相談ください。
左わき腹痛を起こす主な原因
左わき腹の痛みは、大腸・腎臓・尿管・筋肉・婦人科臓器など、さまざまな原因で起こります。
特に消化器内科で注意したいのは、大腸憩室炎、大腸炎、大腸がん、便秘による腸管の張りなどです。
| 原因 | 痛みの特徴 | 一緒に出やすい症状 |
|---|---|---|
| 大腸憩室炎 | 左わき腹・左下腹部の持続する痛み | 発熱、歩くと響く痛み、便秘・下痢 |
| 虚血性腸炎 | 急な腹痛 | 下痢、血便、冷や汗 |
| 感染性腸炎 | 差し込むような腹痛 | 下痢、発熱、吐き気 |
| 尿管結石 | 背中からわき腹にかけての激痛 | 血尿、吐き気、落ち着かない痛み |
| 婦人科疾患 | 下腹部からわき腹の痛み | 不正出血、月経周期との関連 |
| 大腸がん | 鈍い痛み・張り感・違和感 | 血便、便通異常、体重減少 |
左わき腹痛の原因を症状だけで正確に判断することは難しいため、診察・血液検査・腹部エコーなどを組み合わせて原因を確認します。
▶関連ページ:胃痛・腹痛外来|腹痛の原因と検査
大腸憩室炎について
今回の原因であった大腸憩室炎とは、大腸の壁の一部が外側に袋状にふくらんだ「憩室」に炎症が起こる病気です。
憩室そのものは無症状のことも多いですが、憩室の中に便や細菌が入り込み、炎症が起こると腹痛や発熱をきたします【1】【3】。
大腸憩室炎が起こる流れ
大腸の内圧上昇・加齢などで憩室ができる
↓
憩室に便や細菌が入り込む
↓
憩室の周囲に炎症が起こる
↓
大腸の壁がむくみ、左わき腹や左下腹部に痛みが出る
炎症が軽い段階では外来で治療できることもありますが、炎症が強い場合や、膿瘍・穿孔・腹膜炎が疑われる場合には、CT検査や入院治療が必要になることがあります【2】【3】。
▶関連ページ:大腸憩室症・大腸憩室炎について詳しくはこちら
実際の治療例|50代女性「左わき腹の鈍痛」
【症状】
3日前から左わき腹に鈍痛が出現。
良くなるかと思い様子を見ていましたが、次第に悪化。歩くと響くような強い痛みとなったため当院を受診されました。
【診察】
左側腹部に強い圧痛を認め、何らかの炎症が起こっている状態でした。
-
大腸憩室炎
-
虚血性腸炎
-
尿管結石
-
卵巣疾患 などが考えられ、診断のため血液検査や腹部エコーなどを行いました。
【検査】
・血液検査:炎症反応(白血球とCRP)の上昇
・腹部エコー:下行結腸に憩室を認め、周囲に炎症による強い浮腫みの所見
以上から下行結腸憩室炎と診断しました
■実際のエコーの画像■
赤丸部分が憩室で周囲の大腸壁が肥厚しています(矢印部分)。大腸憩室炎の所見です
【治療】
今回は幸いまだ軽症であり、抗菌薬と消化器症状を和らげる内服治療を行い、数日で痛みは軽快しました。
憩室の状態を正確に把握するため後日大腸内視鏡を行ったところ、下行結腸~S状結腸に多発する憩室を認め、
今後も繰り返すリスクがあり、再発防止のための生活指導を行い一旦治療は終了となりました。
■実際の大腸カメラの画像■
憩室(黄色部分)が多発していました
憩室炎を放置するとどうなる?
軽度の憩室炎であれば抗菌薬などの内服で改善しますが、炎症が進むと膿瘍(のうよう)形成や穿孔(腸に穴が開く)を起こすことがあります。
このような状態になると、腹膜炎を起こして緊急入院や手術が必要となるケースもあります【3】。
再発予防のために
-
規則的な排便を保つ(便秘の改善)
-
食物繊維と水分を十分に摂取
-
腸内環境を整える(整腸剤・発酵食品・i-katsuなど)
-
ストレスをためない生活習慣を意識
再発を防ぐためには、「炎症を起こさせない腸環境づくり」が最も重要です。
▶関連ページ:大腸憩室症・憩室炎|より詳細な情報がご確認いただけます
受診の目安
左わき腹の痛みは、便秘や筋肉痛のような一時的な原因で起こることもあります。
しかし、次のような場合は大腸憩室炎や大腸炎、尿管結石、大腸がんなどの病気が隠れている可能性があります。
早めの受診をおすすめする症状
- 左わき腹や左下腹部の痛みが1日以上続く
- 痛みが徐々に強くなっている
- 歩くとお腹に響く
- 押すと強く痛む
- 発熱がある
- 下痢や便秘を伴う
- 血便がある
- 吐き気や食欲低下がある
- 以前に大腸憩室を指摘されたことがある
- 大腸カメラを長期間受けていない
特に、強い痛み、発熱、血便、歩くと響く痛みがある場合は、早めに胃腸内科・消化器内科で相談してください。
関連ページ:血便・下血外来はこちら
院長コメント
軽度の憩室炎であれば、薬で改善しますが、
放置すると膿瘍形成や穿孔を起こすこともあります。
「1日経っても痛みが治らない」「悪化している」場合は我慢せず、早めの受診をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 左わき腹の痛みは大腸憩室炎の可能性がありますか?
A. はい。左わき腹や左下腹部の痛みは、大腸憩室炎でみられることがあります。特に、痛みが続く、歩くと響く、発熱を伴う場合は炎症が起きている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。
Q2. 大腸憩室炎は自然に治りますか?
A. 軽症で自然に落ち着くこともありますが、放置すると悪化する場合があります。膿瘍や穿孔を起こすこともあるため、症状が続く場合は医療機関で診断を受けることが安全です【1】【3】。
Q3. 大腸憩室炎ではどのような検査をしますか?
A. 診察に加えて、血液検査で炎症反応を確認し、腹部エコーやCTで腸管の炎症や合併症の有無を確認します。炎症が落ち着いた後に、大腸カメラで大腸の状態を確認することもあります【2】【3】。
Q4. 憩室炎の急性期に大腸カメラはできますか?
A. 強い炎症がある急性期には、大腸カメラで腸に空気や圧がかかり、状態が悪化する可能性があるため、通常は避けることが多いです。必要な場合は、炎症が落ち着いてから行います。
Q5. 大腸憩室炎の後、大腸カメラは必要ですか?
A. 必要性は、過去の大腸カメラ歴、症状、炎症の程度、年齢、大腸がんを除外する必要性によって判断します。AGAでは、急性憩室炎後の大腸カメラは症状が落ち着いてから6〜8週間以降、または完全に改善してから行うことが推奨されています【2】。
Q6. 大腸憩室炎は再発しますか?
A. 再発することがあります。報告では、初回の憩室炎後に少なくとも1回再発する方が約20%程度いるとされています【4】。便秘対策、食事、運動、体重管理、禁煙などが再発予防に大切です【2】。
Q7. 憩室炎のときは何を食べればよいですか?
A. 急性期は腸を休ませるため、症状に応じて水分、ゼリー、おかゆ、うどんなど消化のよい食事から始めることがあります。食事内容は炎症の程度によって変わるため、医師の指示に従ってください【2】。
Q8. 左わき腹痛と大腸がんは関係ありますか?
A. 左わき腹痛だけで大腸がんとは限りませんが、血便、便が細い、便秘と下痢を繰り返す、体重減少、貧血などがある場合は大腸がんの確認も必要です。症状が続く場合は大腸カメラを検討します。
Q9. 腹部エコーで大腸憩室炎はわかりますか?
A. 腹部エコーで、痛みの部位に一致した憩室や大腸壁の肥厚、周囲の炎症を確認できることがあります。ただし、体型や腸管ガス、炎症の程度によって見えにくい場合もあり、必要に応じてCTを検討します【3】。
Q10. どのタイミングで受診すればよいですか?
A. 左わき腹の痛みが1日以上続く、痛みが強くなる、歩くと響く、発熱、血便、吐き気がある場合は早めに受診してください。特に以前に大腸憩室を指摘された方は、腹痛を我慢せず相談することが大切です。
まとめ
-
左わき腹痛の原因として大腸憩室炎は比較的多い
-
早期診断で内服治療のみで改善することが多い
-
放置すると重症化するリスクあり
-
腹部エコーやCTで早期に発見可能
-
繰り返す場合は食生活の見直し・整腸が重要
巣鴨で左わき腹痛・腹痛のご相談を希望される方へ
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医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
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参考文献
- 日本消化管学会. 大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026 改訂第2版. 南江堂, 2026.
- Peery AF, Shaukat A, Strate LL. AGA Clinical Practice Update on Medical Management of Colonic Diverticulitis: Expert Review. Gastroenterology. 2021;160(3):906-911.e1.
- Hall J, Hardiman K, Lee S, et al. The American Society of Colon and Rectal Surgeons Clinical Practice Guidelines for the Treatment of Left-Sided Colonic Diverticulitis. Dis Colon Rectum. 2020;63(6):728-747.
- Strate LL, Morris AM. Epidemiology, Pathophysiology, and Treatment of Diverticulitis. Gastroenterology. 2019;156(5):1282-1298.e1.
- 日本消化管学会. 大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン. 日本消化管学会雑誌. 2017;1 Suppl.
文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介 (消化器学会・内視鏡学会専門医)
