実際の治療例【発熱は治ったのに下痢と腹痛が続く…原因は“感染性腸炎後過敏性腸症候群”だった】
発熱は治ったのに、下痢や腹痛だけが続くと、「胃腸炎が長引いているだけかもしれない」と様子を見てしまう方は少なくありません。
実際には、急性の感染性腸炎が落ち着いたあとも腸の敏感さが残り、感染性腸炎後過敏性腸症候群として症状が続くことがあります。
一方で、血便、体重減少、夜間の下痢、貧血、強い腹痛がある場合は、炎症性腸疾患など別の病気も考えて検査が必要です。
発熱が治ったあとも1週間以上、下痢や腹痛が続く場合は、一度消化器内科で相談することが大切です。
この記事では、実際の治療の流れをもとに、「どのくらい続いたら受診すべきか」「何の検査が必要?」「どんな治療で良くなるのか」を専門医としてわかりやすく解説します。
巣鴨駅前胃腸内科クリニックでは、下痢・腹痛が続く方に対して、問診だけでなく必要に応じて血液検査、腹部エコー、大腸カメラまで行い、炎症性腸疾患や大腸の病気が隠れていないか丁寧に確認しています。
「胃腸炎のあとからお腹の調子が戻らない」「発熱は治ったのに下痢だけ続く」「何科を受診すればよいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。
発熱後に下痢と腹痛が続く主な原因
発熱が治ったあとも下痢や腹痛が続くときには、次のような原因を考えます。
- 感染性腸炎後過敏性腸症候群
- 感染性腸炎の遷延(細菌性・ウイルス性など)
- 潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患
- 大腸憩室炎
- 虫垂炎(亜急性のもの)
- 薬剤性の下痢
- 甲状腺機能異常などの内科的疾患
とくに胃腸炎のあとに症状が長引く場合は、単なる「治りかけ」なのか、それとも腸の機能異常が残っているのかを見極めることが大切です。
関連ページ:下痢の一般的な原因については、下痢が起こる原因と治療法のページでも詳しく解説しています。
感染性腸炎後過敏性腸症候群とは?
感染性腸炎後過敏性腸症候群(Post-infectious IBS、PI-IBS)とは、急性胃腸炎のあとに、腸の炎症自体は落ち着いているのに、下痢や腹痛、腹部膨満感などが続いてしまう状態です。
報告によって幅はありますが、感染性胃腸炎のあとにPI-IBSを発症する方は一定数おり、腸の知覚過敏、腸の動きの乱れ、腸内環境の変化などが関与すると考えられています【1】【2】。
- 胃腸炎のあとから便通異常が続く
- 食後にお腹がゴロゴロしやすい
- 腹痛と下痢がセットで起こる
- 検査では大きな異常が見つからない
このような特徴がある場合には、PI-IBSを疑います。
関連ページ:過敏性腸症候群(IBS)の症状・診断・治療法
実際の治療例|20代女性「下痢と腹痛が続いている」
【症状】
-
10日前:発熱・下痢・腹痛で発症
-
発熱は2日で改善
-
しかし下痢と腹痛が継続
-
来院時:
・下痢は1日3〜4回
・腹痛は軽快しているが残存
・脱水や血便はなし
【診察】
発熱が治ったあとに下痢や腹痛が続く場合、感染性腸炎後IBSだけと決めつけることはできません。
診察では、症状の経過や便の性状、血便の有無、体重減少の有無、夜間症状の有無、食事との関係などを確認しながら、次のような病気を鑑別します。
- 感染性腸炎の遷延
- 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患
- 大腸憩室炎
- 虫垂炎
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 甲状腺機能異常
- 膵臓・胆のうの炎症
このように、長引く下痢や腹痛は鑑別すべき病気が広いため、正しく状態を把握し、治療方針を立てるため血液検査・腹部エコー・大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。
【検査】
-
血液検査: 炎症反応なし、貧血なし
-
腹部エコー: 胆のう・膵臓に異常なし
-
大腸内視鏡(大腸カメラ): 粘膜に炎症なし、ポリープなし
重い病気が隠れていないか確認するために大腸カメラまで行いましたが、異常はなく、
経過と合わせて、感染性腸炎後過敏性腸症候群と診断しました
<実際の内視鏡画像>
大腸粘膜は炎症や腫瘍などなく正常な状態でした
【治療】
今回の患者さんには以下を行いました:
-
腸の動きを整える薬
-
腸の知覚過敏を改善する漢方
-
必要に応じて整腸剤
-
食事指導
治療開始後は数日で症状が改善し、1週間ほどでほぼ通常の生活に戻られました。
放置すると数週間〜数か月続くこともあるため、早めの治療が効果的です。
受診の目安
発熱が治ったあとも、1週間以上下痢や腹痛が続く場合は、一度消化器内科で相談することをおすすめします。
とくに次のような症状がある場合は、感染性腸炎後IBSだけでは説明しにくく、早めの検査が必要です。
- 血便がある
- 黒い便が出る
- 体重が減ってきた
- 夜間も下痢で目が覚める
- 強い腹痛が続く
- 脱水症状がある
- 貧血を指摘されている
- 発熱がぶり返す、または持続する
「胃腸炎のあとの不調だから」と思っていても、別の病気が隠れていることはあります。不安なときは早めの受診が安心です。
院長からのコメント
「胃腸炎が治ったはずなのに、なぜか下痢だけ続く」という方はとても多いです。
感染性腸炎後IBSは適切に治療すれば改善しやすい病気で、逆に放置すると長引く傾向があります。
以下のような症状がある場合は早めの受診をおすすめします:
-
1週間以上下痢が続く
-
発熱は治ったのに腹痛・下痢だけ残る
-
食べるとお腹がゴロゴロする
-
下痢と便秘を繰り返す
当院では即日の腹部エコー・血液検査、内視鏡の早期対応も可能です。気になる症状があればお気軽にご相談ください。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
よくある質問(FAQ)
Q1. 胃腸炎のあとに下痢だけ残るのはよくあることですか?
A. はい。10〜30%で過敏性腸症候群が起こると報告されています【1】。
Q2. どれくらい続いたら受診すべき?
A. 1週間以上続く場合、受診をおすすめします。
Q3. 過敏性腸症候群はストレスと関係しますか?
A. あります。ストレスで腸の過敏性が強くなります。
Q4. 大腸カメラは必要ですか?
A. 長引く下痢・血便・体重減少・炎症数値の上昇がある場合は推奨します。
Q5. 市販薬で治りますか?
A. 一時的には楽になりますが、根本治療には専門的な薬が必要なことが多いです。
Q6. 感染性腸炎後過敏性腸症候群は治りますか?
A. 多くの方が薬と生活改善で改善します。
Q7. 食事で気をつけることは?
A. 発酵性の高い食品・脂質・アルコール・カフェイン・刺激物を控えると軽減します。
Q8. 便の検査は必要ですか?
A. 重症例や血便、発熱が続く場合に行います。
Q9. プロバイオティクスは効果ありますか?
A. 補助的に有効との報告があります。
Q10. 運動はしてもよいですか?
A. 軽い運動は腸の働きを整えるためおすすめです。
まとめ
発熱は治ったのに下痢や腹痛が続く場合、感染性腸炎後過敏性腸症候群が原因のことがあります。急性の炎症は落ち着いていても、腸の敏感さや動きの乱れが残ることで、症状が長引いてしまうためです。
- 胃腸炎のあとに下痢や腹痛が続く場合、感染性腸炎後IBSが原因のことがある
- ただし、血便、体重減少、夜間の下痢、強い腹痛がある場合は別の病気の除外が必要
- 血液検査、腹部エコー、大腸カメラが診断に役立つことがある
- 薬物治療や食事調整で改善する例が多い
- 1週間以上続く場合は早めの受診が安心
関連ページ
医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。
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参考文献
- Thabane M, Marshall JK. Post-infectious irritable bowel syndrome. World J Gastroenterol. 2009;15(29):3591-3596.
- Berumen A, Schmulson M, et al. Post-infection Irritable Bowel Syndrome. Gastroenterol Clin North Am. 2021;50(2):445-461.
- Lacy BE, Pimentel M, Brenner DM, et al. ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2021;116(1):17-44.
- Klem F, Wadhwa A, Prokop LJ, et al. Prevalence, Risk Factors, and Outcomes of Irritable Bowel Syndrome After Infectious Enteritis: A Systematic Review and Meta-analysis. Gastroenterology. 2017;152(5):1042-1054.e1.
