実際の治療例 “数年前から下腹部痛を繰り返している”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
30代 女性 下腹部痛が続く
【症状】
学生時代から腹痛が出やすく繰り返しやすい体質でしたが、我慢できる程度だったので特に検査や治療は受けずに様子を見ていました。
ここ数か月間、下腹痛が出てくる頻度が増加し、まず婦人科を受診されましたが異常はなく、消化器内科での診察を勧められ当院を受診されました。
【診察】
診察時には特に痛みはありませんでしたが、特に食後に症状が出ることが多いとのことでした。
婦人科では異常がないとのことで、腹部レントゲン・腹部エコー・大腸内視鏡(大腸カメラ)などの検査を行い消化器疾患の有無をチェックすることとしました。
【検査】
腹部レントゲンでは異常ガスなどはなく、腹部エコーでも痛みの原因となる疾患は認めませんでした。
また、大腸内視鏡も行いましたが、異常は認めず問題ない状態でした。
婦人科でも消化器でも問題は認めないため、過敏性腸症候群による腹痛と考えました。
関連ページ:過敏性腸症候群
【治療】
症状のきっかけは特に感じてなかったものの、転職を契機に生活のリズムが変わったり、慣れない仕事にストレスを感じることが多かったのが原因かもしれないとのことでした。
現在はだいぶ仕事に慣れてはきたものの、下腹部痛がストレスとなっているとのことで、痛みによるストレスが腸の知覚を過敏にしさらに痛みを感じさせるという悪循環になっていると考えられました。
治療としては、知覚過敏を抑える漢方や整腸剤を使用し経過を見ることとしました。
■治療内容■
・整腸剤
腸内細菌のバランスを整えることで、便通や知覚過敏の改善が期待できます。
・漢方薬(人参湯)
食後に症状が出やすいとのことで、食後の腸の蠕動を適度に保ち知覚過敏やお腹の冷えからくるような痛みに効果があります。
【経過】
薬を飲み始めて1週間ほどすると下腹部痛が出現する頻度が減ってきて、痛みが出たときも程度がそれほど強くないような状態になり、1か月ほど薬を続けて頂くと下腹部痛はほぼなくなったとのことでした。
その後は症状が出た時だけ服用して頂くこととしましたが、落ち着いた状態が続いておられます。
この方も、前の方と同じように「症状がストレスになりさらに症状を起こす」という状態であったため、症状の改善とともに安定した状態になったと考えられます。
ただし、痛みがある場合は、過敏性腸症候群ではなく、婦人科疾患や大腸憩室炎などの他の病気の可能性ももちろんあるため、しっかりと検査で状況を見極めた上で治療を行う必要があります。
関連ページ:大腸憩室炎
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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