実際の治療例 “軟らかい便が続いている(大腸がん)”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
50代 女性 軟らかい便が続いている(大腸がん)
【症状】
以前は形のある普通便が出ていましたが、2か月ほど前から軟便が続くようになり、病気ではないかと心配され当院を受診されました
【診察】
便が軟らかくなる原因として、
- 大腸炎や小腸炎などの炎症
- 腫瘍などの出来物による大腸の内腔の狭窄
- 過敏性腸症候群に代表される大腸の蠕動運動の問題
- 腸管以外の膵臓・胆のうなどの消化器の病変
などが考えられます。
中でも頻度としては大腸疾患が多いため、まずは大腸内視鏡を行い病気があるかどうかを状態を確認することにしました。
【大腸内視鏡検査】
内視鏡を行うとS状結腸のに腫瘍を認め、生検にて大腸がんと診断しました。
大腸の内腔が大腸がんによって圧迫され、柔らかな状態でないと便が通過できない状態になっていたと考えられます、
出血を伴う不整な隆起(黄矢印部分)を認め、進行大腸がんを疑い生検を行い、がんと診断しました。
ガンによって大腸の内腔は狭窄して(青矢印部分)、便は柔らかな軟便でないと通過できない状態になっていました。
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・大腸がん
【治療・経過】
大腸ガンは早期の状態であれば内視鏡で治療が可能ですが、進行がんの状態になると手術や抗がん剤治療が必要となります。
今回は残念ながら進行がんで手術が必要な状態であり、対応できる医療機関に紹介となり、同院で治療を行い無事に根治となりました。
柔らかい便が続く原因としては前述のように
- 狭窄
- 蠕動異常
- 炎症
- 腸管以外の消化器の異常
などがあります。
特に大腸がんは放置しておくと腸が詰まってしまい腸閉塞になったり、ガンの進行に伴い転移を来し命に関わることも出てきます。
大腸がんによる便通異常は進行することはあってもがん治療しない限りは自然治癒することはなく、2週間以上便通異常が続いた場合は医療機関で検査を受けることが望ましいと考えます。
【大腸がんとポリープの関係について】
大腸ガン自体はほとんどがポリープから発生します
ポリープが出来て大きくなってガン化し、まず早期ガンとなり、そこから進行ガンになっていきます。
今回のような閉塞をきたす進行がんになるまではポリープの状態から5年以上はかかると思われますが、ポリープの状態や早期ガンの段階では症状が出ることはほぼなく、進行がんになりある程度成長して便通異常などの症状が出てきます。
ただその段階になると内視鏡治療は困難で、手術・抗がん剤治療を行ったり、また転移をきたした場合は根治治療が難しく命にかかわることもあります。
大腸がんのほとんどはポリープから発生するため、ポリープの段階で発見し切除することが大腸がんの予防に直結するので、自覚症状がなくとも定期的に大腸内視鏡を受け、大腸がんの予防・早期発見を行っていくことが重要です。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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