実際の治療例 “飲み込んだあとに詰まる感じがする”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
30代 男性 飲み込んだあとに詰まる感じがする
【症状】
数年前から食べ物を飲み込んだ後に詰まったような感じがあり、次第に頻度が増えてきたとのことで来院されました。
【診察】
詰まる感じは胸のあたりからみぞおちにかけて強く感じるとのことで、食道カンジダ・食道アカラシア・逆流性食道炎・アレルギー性食道炎(好酸球性食道炎)といった食道疾患を疑い胃カメラの検査を行うこととしました。
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・食道カンジダ・食道アカラシア・逆流性食道炎・アレルギー性食道炎(好酸球性食道炎)
【検査】
胃カメラを行うと食道に円を描くような段差を認め、好酸球性食道炎というアレルギーによる炎症を疑いました。
生検を行うと、実際にアレルギー細胞を多数認め好酸球性食道炎と診断しました。
【治療】
好酸球性食道炎とは、アレルギーを起こしたときに出現する白血球の一種である「好酸球」が、食道の粘膜に集中し慢性的に炎症をおこすことで起こる病気です。
アレルギーによっておこるものなので、別名「アレルギー性食道炎」とも言われています
食物によるアレルギー反応が主な原因で食道に慢性的な炎症が起こることで、食道の機能(蠕動して食事を胃に送る)が障害され、詰まりやつかえ感などの症状が起こります。
好酸球性食道炎は無症状の場合には特に治療を行わず様子を見る場合もありますが、今回のように症状がある方・内視鏡上の炎症がひどい方は治療を行います。
治療①薬物療法
A.制酸薬
好酸球性食道炎の約半数の方はPPIと呼ばれる胃酸を抑える薬で改善すると言われ、まず一番最初に試してみる薬です。
B.ステロイド
免疫反応を抑えるステロイドを用いアレルギーを抑制します。
喘息などの際に吸入する吸入用ステロイドを飲んで頂いたり、それでも効果がない場合や狭窄を来している場合にはステロイドの錠剤などを用います。
C.その他
ステロイドは副作用も多彩なため、ステロイド以外の免疫抑制剤や抗ロイコトリエン拮抗薬といったアレルギーを抑える別の薬を選択することもあります。
治療②食事療法
好酸球性食道炎の原因となっているアレルギー源を突き止め、その食物を抜いて頂くことで改善することがあります。
ただし血液検査や皮膚試験を行っても原因となるアレルゲンを見つけるのは難しいと言われおり3)、アレルギー専門科での精査が望ましいと考えます。
(当院での対応が難しいため専門施設への紹介を行っております。)
<治療内容>
今回は内視鏡上の所見は軽度のため、上記の投薬にて治療を開始しました。
【経過】
治療開始後数日は症状は変化がなかったものの、1週間ほど経過してきたころに詰まりの頻度が減りはじめ、1か月ほどでほとんど症状が出なくなったとのことでした。
ただ、好酸球性食道炎は薬物療法で症状が落ち着いた場合でも、やめてしまうと1年以内に半数以上の方が再発してしまうため、投薬治療を継続しつつ経過観察としました。
また炎症状態が続くと食道狭窄が起こることが少なからずみられるため、半~1年毎定期的に内視鏡で状態を評価することとしています。
その他の喉の違和感やつまり感などの治療例についてもご紹介しているので、もしよければご参考にされてください。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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