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ピロリ菌がいないと胃がんにならないって本当?

胃がんの原因のほとんどはピロリ菌ということがわかっていますが、では逆にピロリ菌がいない人は胃がんにならないのか?

 

答えは No です。

 

実はピロリ菌に未感染の方でも確率は低いですが胃がんになることはあります。

胃がん全体の1-2%程度にピロリ菌未感染の胃がんがあると言われ1)、2019年の胃がんと診断された患者数は男性85,325人、女性38,994人 計124,319人ですので2)、およそ2000人程度の方が1年間にピロリ菌未感染の胃がんを発症している計算になります。

 

<当院の指摘されたピロリ菌陰性がん>

図の中央の矢印で囲まれた領域の3㎜大の領域がガンです。 早期の状態なので内視鏡治療で完治しました。 胃がんの中でも「未分化がん」と呼ばれるタイプでピロリ菌がいない方に発生することが多いものです。 頻度は低いガンですが、悪性度が高く、進行するとスキルスと呼ばれ治療が非常に困難になります。

 

◆危険因子◆

ピロリ菌感染以外の胃癌の原因として,生活習慣自己免疫性胃炎 3)遺伝子異常 4)などが挙げられます。

 

遺伝子異常があるかは専門的な検査が必要となりますが、内視鏡で自己免疫性胃炎を指摘された方や、生活習慣として高塩分摂取 5) ・ 喫煙 6)・高血糖 7)などに該当する方は、定期的に内視鏡(胃カメラ)で状態を確認することが望ましいと考えます。

 

不幸にも胃がんになったとしても内視鏡で早期で発見すればほとんどの場合は内視鏡で治療が可能で、命を脅かすこともありません。

※早期がんの切除後の5年生存率は97.3%であり、早期であればほとんどの方は完治します。

 

ただ、バリウムの検査では胃がんを早期の状態で見つけるのは難しく、リスク因子に応じて胃カメラを1-2年毎に受けるようにしましょう。

 

 
◆実際の症例◆

40代男性 ラズベリー型胃がん

【症状】

定期的に人間ドックで胃カメラを受け胃のポリープを指摘され経過観察とされていましたが、消化器の専門施設で胃カメラを受けたいと胃のことで当院を受診されました。

 

【胃カメラ】

胃カメラを行うとピロリ菌はいないきれいな胃でしたが、襞の中に発赤の強い隆起性病変を認めました。

生検を行ったところ、胃がん(低異型度高分化型腺癌)との病理検査結果でした。

青矢印に囲まれた赤い発赤部分が病変です

 

【治療】【経過】

内視鏡治療のため高次医療機関に紹介とし、同院にて内視鏡治療を行い治癒切除となりました。

 

今回のピロリ菌陰性の方にできる発赤の強い隆起性の胃がんで「ラズベリー型胃がん」とも呼ばれます。近年報告された新しいタイプの胃がんで、非常に頻度が低く専門医でも知らない医師もおり、検診などで単なるポリープと思われ見逃されていることもあります。

 

ピロリ菌陰性の方にできるポリープとしては胃底腺ポリープと呼ばれるタイプのものがありますが、こちらは発赤はそれほど目立たず良性のものです。人間ドックや検診などでポリープを指摘される場合はたいていこちらのタイプになりますが、発赤が強いものであった場合や詳しく説明がない場合などは一度専門施設でご相談することをお勧めします。

ピロリ菌がいない人にできる胃底腺ポリープ(黄色で囲まれた隆起) いずれも胃の粘膜と同等の色調で、発赤は目立ちません。 ガン化することはまずないため特に治療は必要ないものです。

 

50代男性 同定の難しいピロリ菌陰性胃がん

症状

特に自覚症状はありませんでしたが、もともと定期的に胃内視鏡(胃カメラ)を受けておられ、転居に伴い当院での内視鏡検査を希望され受診されました。

 

【胃カメラ】

胃カメラを行ったところ、胃の前庭部と呼ばれる部位に淡い退色部分(周りと比べて色が白っぽく見える部分)を認め、同部を生検したところがん細胞が検出され、早期胃がんと診断しました。

実際の内視鏡画像です。青い矢印で囲まれた色の白い領域(褪色域)がガンの部分です。 ピロリ菌陰性胃がんは今回のように非常に分かりにくいことも多く見落とされることもあります。

NBIというモードに切り替えると矢印で囲まれた褪色域がより分かりやすくなります。 内視鏡検査時には通常の観察だけでなくモードを切り替えて病気を見つける精度を高めることも重要です。

治療

ガンではありましたが、早期胃がんであったため内視鏡治療が可能な状態であり、入院治療ができるガン拠点病院に紹介し治療を受けていただき、無事に治癒切除となりました。

 

ピロリ菌陰性胃がんは今回のように非常に視認性が悪いものもあり見逃されてしまうこともあります。

当院では丁寧に詳細な観察をするのはもちろんのこと、次世代内視鏡システムEVIS-X1Ultra HDの4Kモニターを導入し、高品質で明瞭な画像により内視鏡検査の質を飛躍的に上げ、今まで以上により正確な検査が実現可能になっています。

詳細はこちらから:次世代内視鏡システム「EVIS-X1」導入

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

<参考文献>

1)Helicobacter pylori - negative Gastric Cancer : Characteristics and Endoscopic Findings. Yorimasa YAMAMOTO Gastroenterol Endosc 2016;58:1492-503

2)国立がん研究センター HPより

3)Zamcheck N, Grable E, Ley A et al. Occurrence of gastric cancer among patients with pernicious ane[1]mia at the Boston City Hospital. N Engl J Med 1955;252:1103 – 10

4)Cisco RM, Ford JM, Norton JA. Hereditary diffuse gastric cancer : implications of genetic testing for screening and prophylactic surgery. Cancer 2008; 113:1850 – 6

5). Joossens JV, Hill MJ, Elliott P et al. Dietary salt, ni[1]trate and stomach cancer mortality in 24 countries. European Cancer Prevention (ECP) and the INTER[1]SALT Cooperative Research Group. Int J Epidemiol 1996;25:494 - 504

6)La Torre G, Chiaradia G, Gianfagna F et al. Smoking status and gastric cancer risk : an updated meta - analysis of case - control studies published in the past ten years. Tumori 2009;95:13 - 22

7)Ikeda F, Doi Y, Yonemoto K et al. Hyperglycemia increases risk of gastric cancer posed by Helicobacter pylori infection : a population - based cohort study. Gastroenterology 2009;136:1234 - 41

 

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