食道がん
食道がんは、主に「食道扁平上皮がん」と「食道腺がん」の2種類があります。
欧米では「食道腺がん」が多いのですが、日本では圧倒的に「食道扁平上皮がん」の割合が高くなっています。(その他、食道未分化がんなど稀ながんもあります。)
<目次>
食道がんの原因は?
日本人に多い「扁平上皮がん」はお酒やたばこを吸う方に出来やすく、逆にお酒やたばこをしない方にはほとんど出来ないと言われています。
また扁平上皮がんは咽頭にも出来やすく、食道がんと同じように飲酒と喫煙が関わっているため、アルコール多飲者やアルコールを飲んだらすぐ顔が赤くなる方、喫煙者の方には胃カメラを定期的に受けることを勧めます。
一方「腺癌」は、食道と胃の接合部近傍のバレット上皮と呼ばれる部位に出来る胃腺由来の癌で「バレット腺がん」とも呼ばれており、アルコールや喫煙とはさほど関連はないものの、逆流性食道炎を繰り返されている方や肥満の方はリスクが高まると言われており、注意が必要です。
(詳しくは、「がん予防外来」をごご覧ください。)
食道がんの症状は?
早期の段階では症状が出ることはほとんどありません。
進行してくると、
・熱い飲み物がしみる
・のどや食道がつまる感じや食べ物が下りていかない感じ
などが起こってきます。
食道がんの内視鏡写真
◆食道扁平上皮がんの内視鏡写真
食道の扁平上皮がんです。ご本人の自覚症状はなく、たまたま行った胃カメラ(内視鏡)で偶然見つかったものです。
幸いにも早期に発見することが出来たので、内視鏡で治癒することが出来ました。
◆食道腺がんの内視鏡写真
食道のバレット上皮に生じた食道腺がんです。
逆流性食道炎とそれによるバレット上皮があり、年に1度の定期的に胃カメラ(内視鏡)を行っており、その際に発見されました。
◆食道がんによる通過障害の写真
食べ物が食道に詰まって下に降りて行かない感じとの訴えで来院されました。
胃カメラを行ってみると中部食道に進行がんを認め、内腔を圧排して通過障害をきたしている状態でした。
食道がんの治療は?
食道がんの治療はその進行度によって大きく変わります。
早期癌のうち、リンパ節の転移のリスクが少ないと思われる病変については、まず、内視鏡での治療を第一に考えます。
ただ、食道がんは進行が早いため早期に見つけるには、症状が出る前に胃カメラ(内視鏡)の検査を受ける必要があります。
食道がんのリスクである、飲酒歴(特に顔が赤くなる方)・喫煙歴のある方は定期的に検査をうけることが大切です。
また内視鏡治療の適応が低い食道がんに対しては、手術や放射線療法、抗がん剤治療、またはその組み合わせ、手術+抗がん剤、放射線療法+抗がん剤があります。
Q&A
Q:食道がんは治りますか?
A:早期であれば治せる可能性があります
国立がん研究センターでの食道がん治療後の5年生存率は
Stage I | 78.7% |
Stage Ⅱ | 50.8% |
Stage Ⅲ | 26.9% |
Stage Ⅳ | 8.6% |
となっており4)、進行すればするほど治癒できる可能性がどんどん減るため、リスクのある方は定期的に内視鏡を受け、ガン自体の早期発見することが重要となります。
Q:なぜ飲酒で顔が赤くなると食道がんのリスクが高くなるのですか?
A:分解産物のアセトアルデヒドが影響しています。
お酒をのんですぐに顔が赤くなる方は、アルコールの分解能力が低く、分解される過程で発生するアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすい体質だということを意味します。このアセトアルデヒドが、顔が赤くなる・頭痛・吐き気といった症状や二日酔いを引き起こし、さらに発がん物質にもなるため、分解できずに体内に蓄積されるとがんのリスクが上がってしまうのです。
Q:食道がんの予防法はありますか?
A:あります。
前述のように食道がんのリスクを確実に上げるものとしては、「喫煙」、「飲酒」があり、2つが相乗的に作用してリスクを上げることも指摘されています。
特に、飲酒後すぐに顔が赤くなる方は、少量飲酒の場合健常人と比較して8.84倍の食道癌発ガンリスクがあり、3合以上飲酒した場合はなんと114倍の発ガンリスクがあるとの報告もあります。
また、逆に喫煙や飲酒の習慣がない人は食道がんになることはほとんどありません。
このリスクを念頭に食道がんになりにくくなるような生活習慣をつくり、禁酒・禁煙を徹底することで食道がんの予防はかなり期待ができるのですが、嗜好品であるお酒・たばこを完全にやめるのは簡単ではありません。
ですから、なるべくリスクを減らすための努力をしつつ、胃カメラを定期的に行いガンの早期発見を行う二次予防が大切になってきます。
食道がんのリスク評価は、国内の食道がんのリスク研究で有名な国立病院機構久里浜医療センターのHPにて行うことができます。この評価で上位10%に含まれた方は食道がんハイリスク群とされ、実際に約1%に食道がんが見つかっています。
食道がんは年間約19000人の方に見つかり、そのうち6割強に当たる約12000人の方が亡くなる非常に恐ろしい病気です。
病気の発症者数に対しての死亡者数の割合が6割と高くなっている理由としては、食道の壁が薄いため浸潤・転移し易く、がんの進行が早いという特徴のためですが、ただ、表面にとどまっている表在がんの場合は胃カメラで根治することが可能なため、先ほどの食道がんハイリスク群の方は定期的(半年~1年毎)な胃カメラを受けることを勧めています。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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