バレット食道
バレット食道とは?
バレット食道は、胃と食道のつなぎ目から食道下部にかけての食道粘膜(扁平上皮といいます)が、胃の粘膜(円柱上皮といいます)に置換されている状態をいいます。
バレット食道には食道腺がんの発生に関係する腸上皮化生が80%程に認められており、食道がんに対してリスクのある状態といえます。
食道側への胃の粘膜の広がりによって
①3cm未満のショートバレット食道(SSBE)
②3cm以上のロングバレット食道(LSBE)
とに分けられます。
発癌のリスクがLSBEの方がSSBEに比べ倍ほど高いというデータがあります。
原因
原因については、胃酸や胆汁の食道への逆流(いわゆる逆流性食道炎です)によっておこるといわれています1)2)。
胃酸や胆汁の逆流によって、食道粘膜が炎症を繰り返し、改善の過程で細胞が置き換わっていくと考えらえています。
また、胃酸と胆汁が組み合わさることによってバレット食道のリスクが上がるともいわれています2)
関連ページ;逆流性食道炎の原因や治療・予防
頻度は?
逆流性食道炎の患者さんに起こるバレット食道の頻度は、
LSBE で平均 0.3%
SSBEで平均 15.8% 程度です3)
また内視鏡で逆流性食道炎を認めない方にも4.4%程度の方にSSBEを認めたとの報告があります 4).
内視鏡写真
食道と胃のつなぎ目の部分から食道側に向かって胃の粘膜が上がってくることで、胃と食道の境界線が口側に移動したように見えます。
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治療
一度発生したバレット食道が改善することはありませんので、
- ガンの発生リスクを減らすためバレット食道が進展しないようにすること
- バレット食道は食道腺がんの発生のリスクになるため、定期的な胃カメラを行うこと
が大切です。
治療については逆流性食道炎を伴っているか否かで方針が変わります。
◆逆流性食道炎を伴う場合
胃カメラで逆流性食道炎併発している場合、胸やけやのどの違和感などの症状がある場合はまずしっかりと逆流性食道炎の治療を行い、
その後に定期的に胃カメラでバレット食道の進展や逆流性食道炎の再発の有無をチェックしていきます。
※逆流性食道炎の治療は
- 胃酸分泌過多を抑える制酸剤
- 胃の動きを改善させ逆流しないようにする運動機能改善薬
- 逆流性食道炎を起こしにくくする生活習慣作り
などを行います。詳細は下記リンクからご覧いただけます
◆逆流性食道炎を伴わない場合
①経過観察
逆流性食道炎を伴わない際には基本的にはバレット食道の状態を経過観察していきます。
バレット食道の状態によって半年-1年毎の胃カメラを行います。
②予防
バレット食道が広がらないように予防的に薬やサプリを用いることもあります。
※当院ではバレット食道の伸展予防には胃酸分泌過多を適正化するサプリ「i-katsu」を多くの場合に使用しております。
「i-katsu」は乳酸菌と生薬で作られており、薬と違い副作用が出ることがなく長期の服用に関しても安全性が高く、予防のために使用するのに非常に向いているためです。
◆関連ページ:なぜ逆流性食道炎に「i-katsu」が効くのか?
当院ではバレット食道の状態評価や予防にも力を入れており、バレット食道が気になる方・お悩みの方はお力になれますので、ご相談ください!
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Q&A
Q:食道がんの発生リスクはどのくらいですか?
A:LSBEからの発癌頻度は年率1.2%程度5)との研究結果があります。
日本においては SSBE からの発癌頻度に関する正確性の高い報告はなく,現時点での発癌頻度は不明ですが、欧米の報告では SSBEからの年間の癌の発生リスクは 0.24%との報告があります6)
また日本の食道癌の多くは扁平上皮癌であり腺癌は少ないものの、Barrett 食道からの腺癌発症を含めて確実に増加傾向となっており 7)、バレット食道の方は定期的に内視鏡を行い状態を見ていくことが望ましいと考えます。
Q:Barrett 食道がガン化しやすくなる要因はありますか?
A:あります。
欧米における Barrett 食道における発癌の明らかな危険因子は、男性・喫煙・Barrett 食道の長さ・細胞異型の存在といわれていいます。
Barrett 食道癌と喫煙に関しては因果関係あるといわれており 8)、喫煙者は非喫煙者に比較し約 2 倍の発癌リスクがあり 9)、禁煙による発癌予防効果も報告されています 9)。
なお、飲酒に関してはBarrett 食道癌のリスクには関連はないと言われています 9)
また、発癌リスクをスコア化した最近の報告では,男性に 9 点,喫煙習慣に 5 点,Barrett 食道の長さ 1 cm につき 1 点,細胞異型 の確認で 11 点を付与し,合計 20 点以上を発癌の高リスク(年間発癌率2.1%)、10 点以下を低リスク(年間発癌率 0.13%)としており10)、高リスク群の方は特に注意が必要です。
◆関連ページ◆
参考文献:
1)Fass R, Hell RW, Garewal HS, et al. Correlation of oesophageal acid exposure with Barrettʼs oesophagus length. Gut 2001; 48: 310-313
2)Koek GH, Sifrim D, Lerut T, et al. Multivariate analysis of the association of acid and duodeno-gastrooesophageal reflux exposure with the presence of oesophagitis, the severity of oesophagitis and Barrettʼs oesophagus. Gut 2008; 57: 1056-1064
3)日本消化器病学会胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2021 p137-138
4)Matsuzaki J, Suzuki H, Kobayakawa M, et al. Association of Visceral Fat Area, Smoking, and Alcohol Consumption with Reflux Esophagitis and Barrettʼs Esophagus in Japan. PLoS One 2015; 10:
5) Matsuhashi N, Sakai E, Ohata K, et al. Surveillance of patients with long-segment Barrettʼs esophagus: Amulticenter prospective cohort study in Japan. J Gastroenterol Hepatol 2017; 32: 409-414
6) Chandrasekar VT, Hamade N, Desai M, et al. Significantly lower annual rates of neoplastic progression in short- compared to long-segment non-dysplastic Barrettʼs esophagus: a systematic review and meta-analysis. Endoscopy 2019; 51: 665-672
7)天野祐二,安積貴年,坪井 優,ほか.本邦における Barrett 食道癌の疫学―現況と展望.日本消化器病学会誌 2015; 112: 219-231
8) Cooper S, Menon S, Nightingale P, et al. Risk factors for the development of oesophageal adenocarcinoma in Barrettʼs oesophagus: a UK primary care retrospective nested case-control study. United European Gastroenterol J. 2014; 2: 91-98
9) Cook MB, Kamangar F, Whiteman DC, et al. Cigarette smoking and adenocarcinomas of the esophagus and esophagogastric junction: a pooled analysis from the international BEACON consortium. J Natl Cancer Inst 2010; 102: 1344-1353
10)Parasa S, Vennalaganti S, Gaddam S, et al. Development and Validation of a Model to Determine Risk of Progression of Barrettʼs Esophagus to Neoplasia. Gastroenterology 2018; 154: 1282-1289
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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