なぜ鎮静剤(静脈麻酔)が効かないの??
患者さんから、
「以前に他院で内視鏡を受けた際に、鎮静剤を使ったのに全然効かずにきつかった、すぐに目が覚めてしまい検査が辛かった」
というお話を聞きます。
これにはいくつか理由があります
- 鎮静剤の量が少ない
- 鎮静剤が体質的に効きづらい。鎮静が覚めやすい
- 普段から抗不安薬や安定剤を飲んでいる
などが挙げられます。
当院ではこれらの効かない理由に対して対策を行い、苦痛のない検査を受けていただくようにただ鎮静剤を使うだけでなく、お一人お一人に合わせ工夫して鎮静剤を使用しております。
1.鎮静剤の量が少ない
鎮静剤は種類により体重あたりの目安量があり、超過すると副作用が出てしまったり鎮静からの覚醒が遅くなったりすることがあります。
ただ少量増やすだけでも効きが具合が変わり、体重だけでなく患者さんの年齢や性別によって微調整することで、極力副作用を出さずに効果を発揮させることができます。
当院では鎮静剤の量を0.1㎎(1gの1万分の1)単位で調整しており、必要最小限の薬の量でも無痛で、かつ副作用の頻度も少なく安全に検査を行うことができます。
2.鎮静剤が体質的に効きづらい。鎮静剤が覚めやすい
鎮静剤は種類がいくつかあり種類によっては体質的に効きづらいことがあり、効きづらいからと言って量を増やすと副作用が出てしまうこともあります。
当院では種類の違う鎮静剤を組み合わせ、1種類では効かない方でも鎮静効果が出るような体制で検査を行っております。
また、覚めやすい体質の方は検査中に鎮静から醒めてしまうことがあります。そうした際にも途中で適量を追加投与出来るようにしております。
3.普段から抗不安薬や安定剤を飲んでいる
心療内科や精神科で薬を飲んでいる方は、鎮静剤に対して耐性ができており鎮静がかなり効きづらい状態となっています。このような場合でも上記のような量や種類の調整で対応できることがほとんどで、多くの方が苦痛なく検査を受けていただいております。
実際の診療例
30代 男性 “嘔吐反射が強すぎて鎮静剤を使っても胃カメラが受けられない”
【症状】
以前から検診のバリウム検査でポリープを指摘され胃内視鏡(胃カメラ)を受けるように言われており、何度かトライしたものの嘔吐反射が強く途中で中止となっており、一度も胃カメラをきちんと受けれない状態でした。
友人が当院で胃カメラを苦痛なく受けれたとの話を聞き、何とか当院で胃カメラを受けることが出来ないかとのことで来院されました
【診察・検査】
以前の検査では通常の経口内視鏡では口に挿入しただけで嘔吐反射が起こってしまい全く検査ができず、鎮静剤を使って経鼻内視鏡での検査も鎮静剤がほとんど効かずに反射が止まらずに検査ができなかったとのことでした。
鎮静剤にも
- 反射を抑えるもの
- 眠りを促すもの
など種類があり、組み合わせることで効果をより発揮でき、また組み合わせたうえでそれぞれの量を調整することでしっかりと鎮静を効かせることが可能となるため、
今回は鎮静剤を組み合わせて検査中でも量を調整できる体制を整えて経鼻内視鏡での検査を行いました。
内視鏡検査開始前に鎮静の組合せ・量をしっかりと調整し、眠りに入った状態になったことを確認して検査を開始しました。
今回は反射は全く起こらず、検査自体もスムーズに行うことが出来、無事に終了となりました。
胃にポリープは認めましたが、胃底腺ポリープと呼ばれるピロリ菌がいない方に発生する良性のポリープで、特に治療は必要ないものでした。
実際の胃の内視鏡画像です。青い丸で囲まれた隆起が胃底腺ポリープです。
胃の内視鏡検査は嘔吐反射が強い方にとっては大変苦痛な検査ではありますが、今回のように鎮静剤を適切に選択し用いることで楽に受けることが可能です。
胃痛・胃もたれなどの症状の原因検索、病気の早期発見につながる大変有用な検査ですので、反射が強く検査がうまくいかない方・検査が怖くて不安な方はお力になれますので、是非一度ご相談ください。
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