好酸球性食道炎
好酸球性食道炎とは?
好酸球性食道炎とは、アレルギーを起こしたときに出現する白血球の一種である「好酸球」が、食道の粘膜に集中し慢性的に炎症をおこすことで起こる病気です。
アレルギーによっておこるものなので、別名「アレルギー性食道炎」とも言われています。
5000人に1人くらいの頻度で起こる比較的珍しい病気で、約半数の方に喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患を併発しています。1)2)
症状がでて胃カメラ(内視鏡)を受けて見つかる方もいますが、たまたま検診で胃カメラを受けて見つかる方もおられ、検診などでの胃カメラの受診率の増加に伴い、最近は有病率が増加していると言われています。
原因は?
食物によるアレルギー反応が主な原因と考えられていますが、調べてみてもアレルギーの元がはっきりとしないこともあります。
症状は?
好酸球性食道炎は無症状の方もおられますが、慢性的な炎症が起こることで食道の機能(蠕動して食事を胃に送る)が障害され、下記のような症状が出ます。
・のどのつかえ感。
・飲み込みにくさ。
・食事が胃に降りて行かない感じ。
・胸部の痛み
長期間炎症が続くことで、食道が狭窄を来し食事の通過障害(食べれない・食べても吐いてしまう)ような状態になることもあります。
診断は?
好酸球性食道炎の診断は、内視鏡検査(胃カメラ)とその際に食道粘膜の生検(組織を一部採取して顕微鏡で細胞を見る検査)を行い確定します。
■好酸球性食道炎の内視鏡写真■
同じような症状を来す病気として逆流性食道炎がありますが、治療が異なったり、好酸球性食道炎の場合は前述のように狭窄を来すことがあるため、つかえ感や飲み込みにくさが続く場合には内視鏡検査を受けてみることが重要です。
治療は?
好酸球性食道炎は無症状の場合には特に治療を行わず様子を見る場合もありますが、症状がある方や内視鏡上の炎症がひどい方は治療を行います。
また、未治療のまま10年以上の炎症が続くと食道狭窄が起こることが少なからずみられるため、定期的に内視鏡を受けて評価をすることも重要です。
①薬物療法
A.制酸薬
好酸球性食道炎の約半数の方はプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる胃酸を抑える薬で改善すると言われ、まず一番最初に試してみる薬です。
B.ステロイド
免疫反応を抑えるステロイドを用いアレルギーを抑制します。
喘息などの際に吸入する吸入用ステロイドを飲んで頂いたり3)、それでも効果がない場合や狭窄を来している場合にはステロイドの錠剤などを用います。
C.その他
ステロイドは副作用も多彩なため、免疫抑制剤や抗ロイコトリエン拮抗薬といったステロイド以外のアレルギーを抑える薬を選択することもあります。
好酸球性食道炎は薬物療法で症状が落ち着いた場合でも、やめてしまうと1年以内に半数以上の方が再発してしまうため、基本的には投薬治療を継続します。
②食事療法
好酸球性食道炎の原因となっているアレルギー源を突き止め、その食物を抜いて頂くことで改善することがあります。
ただし血液検査や皮膚試験を行っても原因となるアレルゲンを見つけるのは難しいと言われおり3)、アレルギー専門科での精査が望ましいと考えます。
(当院での対応が難しいため専門施設への紹介を行っております。)
実際の治療例
40代 男性 食事中ののどや前胸部つまり感・降りて行かない感覚
【症状】
数か月ほど前から食事中に時々のどや胸のあたりがつまったり、下に降りて行かない感覚が出現。
頻度が多くないので様子をみていましたが、最近頻度が増えてきたとのことで当院を来院されました。
【問診】
症状は食事中に毎回出るわけではなく、最初は2-3週間に1度くらい、最近は週に3-4回とのことでした。
食事の時以外は症状はほとんど感じないとのことで、食道病変による症状を考え胃カメラ(胃内視鏡)を行い状態を確認しました
【検査】
内視鏡では、アレルギーによる食道炎(好酸球性食道炎)を強く疑う所見を認めました。
確定診断のため生検を行い病理検査をしたところ、食道粘膜に多数の好酸球(アレルギーを起こしたときに出現する白血球の一種)を認め、好酸球性食道炎の診断が確定しました。
【治療】
好酸球性食道炎とは食物によるアレルギー反応が主な原因と考えられていますが、調べてみてもアレルギーの元がはっきりとしないこともあります1)。
慢性的な炎症が起こることで食道の機能(蠕動して食事を胃に送る)が障害され、のどのつまり感や食事が降りて行かないような感覚が生じます。
アレルギー源が分かる場合は、アレルギーとなる食物を避けてもらうことが多いですが、わからない場合は薬物療法を行います。
今回のケースでもアレルギーの原因が特定できなかったため、投薬治療を行いました。
<治療内容>
1.制酸薬
2.漢方薬
アレルギーを抑える漢方薬も有効との報告があり、薬自体の副作用も少ないため今回はPPIと併用して使用しました。
【経過】
投薬を開始してから数日間は症状があったものの、8日目くらいからは症状が出る頻度が減ったような感じがして、1か月経過する頃には症状がほぼ出なくなったとのことでした。
ただ前述のように、薬物療法で一旦症状が落ち着いた場合でも、やめてしまうと1年以内に半数以上の方が再発してしまうため、しばらく薬は継続して様子を見る方針としました。
今回は幸いPPIと漢方の併用が非常によく効いてくれましたが、改善が乏しい場合はステロイドや免疫抑制剤などのアレルギー反応を強く抑える薬を併用し治療するケースもあります。
Q&A
Q:好酸球性食道炎の診断方法は?
A:胃カメラと病理検査で行います。
また、経過観察する場合も放置するのではなく定期的な胃カメラで狭窄の有無、炎症の程度を見ていく必要があります。
Q:好酸球性食道炎に制酸剤は効きますか?
参考文献:
1)Kinoshita Y et al: Systematic review: Eosinophilic esophagitis in Asian countries. World J Gastroenterol
2015; 21; 8433-8440
2) Kinoshita Y et al: Clinical characteristics of Japanese patients with eosinophilic esophagitis and eosinophilic gastroenteritis. J Gastroenterol 2013; 48; 333-339
3) Ishimura Net al: Limited role of allergy testing in patients with eosinophilic gastrointestinal disorders. J Gastroenterol Hepatol 2013; 28; 1306-1313
4) Dellon ES et al: ACG clinical guideline: Evidenced based approach to the diagnosis and management of esophageal eosinophilia and eosinophilic esophagitis
(EE) . Am J Gastroenterol 2013; 108; 679-692
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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