大腸がん
名前を聞くだけで、目の前が暗くなるような怖い病気です。
実際に大腸がんは患者数・死亡者数とも年々増加し、2019年に新規に大腸がんと診断された方は、日本全国で約155,625人おられ、2014年と比べても5年で2万人以上増加しており、2020年の部位別がんの死亡率では男性3位、女性1位、全体でも2位となり5万人以上の方が命を落とされています。
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1位
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2位
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3位
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4位
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5位
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男性
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肺
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胃
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大腸
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膵臓
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肝臓
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女性
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大腸
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肺
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膵臓
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乳房
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胃
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男女計
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肺
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大腸
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胃
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膵臓
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肝臓
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でも実は大腸がんは、早期の段階であればほぼ完全に治すことができ、さらに予防もできる病気でもあります。
そしてそのカギは大腸内視鏡(大腸カメラ)なんです。
<目次>
大腸がんの原因は? なぜ大腸がんになるの?
大腸がんはごく一部のケースを除いて、大腸ポリープ由来であることがわかっています。
ポリープがある方すべてが大腸がんになるわけでないですが、遺伝的な要素や年齢(50 歳以上)1)・肥満2)・生活習慣(飲酒3)・喫煙4)・赤身肉や加工肉(ベーコン・ソーセージなど)の摂取5))が関連し、良性の大腸ポリープの遺伝子にキズが重なり大腸がんになると考えられています。
また、ご自身にポリープがあるかどうかは、大腸内視鏡(大腸カメラ)や大腸CTでも調べることが出来ます。
そして検査でポリープが発見された場合は切除を粉うことでがんの予防になりますし、また検査を受けることでがん自体の早期発見につながります。
大腸がんの検査画像
内視鏡写真
①早期大腸癌
いずれも自覚症状はなく、検便検査の2次検査ででたまたま発見されたものです
②進行大腸癌
便が出にくい、お腹が張るという症状を主訴に来院された方の内視鏡所見です。
エコー所見
大腸の一部が約4㎝の範囲で不整に壁肥厚(最大12㎜)し、狭窄像を認める。壁内部はかなり黒く描出される。
早期がんをエコーで見つけることは困難ですが、進行がんであれば上記のようにエコーで指摘できることも多く、エコーは体に負担をかけず簡単にできるので、便通胃所や血便などの症状のある方はまずエコーを受けてみるのもいい方法だと思います。
大腸がんの治療
胃がんの治療は、がんの進行度によって異なりますが、大まかにわけると、
① 内視鏡(大腸カメラ)治療
② 手術(腹腔鏡・開腹)、抗がん剤治療
となります。
大腸カメラを使った内視鏡治療が体への負担も少なく楽な治療ではあるのですが、早期の大腸がんでリンパ節転移の可能性がないと思われる病変が治療の適応となります。
これは内視鏡では大腸の中は観察して治療することはできるのですが、大腸の外のリンパ節の状態を見たり切り取ったりできないためです。
また、進行がんに対しては基本的には、手術(腹腔鏡や開腹)でがんを取り除くことになります。
ただ、進行度によっては(遠隔転移や全身への広がりがあるなど)、手術による治療は難しく抗がん剤を行うこともあります。
抗がん剤は術後の補助治療や、術後再発、全身転移・周囲浸潤を生じ手術的加療による根治が困難な場合に行われます。また最近は分子標的治療薬といった新たな種類の薬剤も登場し、成果をあげています。
Q&A
Q:大腸がんは治りますか?
A:早期であれば治すことができます。
国立がん研究センターでの大腸がん治療後の5年生存率は
Stage I | 94.5% |
Stage Ⅱ | 88.4% |
Stage Ⅲ | 77.3% |
Stage Ⅳ | 18.7% |
となっており4)、I期の段階で治療すればほとんどの場合は治ると言えます。
逆に進行すればするほど治癒できる可能性がどんどん減るため、定期的な大腸カメラを行いポリープ切除による予防や、ガン自体の早期発見することが重要となります。
Q:大腸がんの予防法はありますか?
A:あります。
前述のように大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いポリープを切除することが一番の予防となります。
大腸がんのリスクとして50 歳以上の年齢1)が挙げられますが、ポリープから癌に成長するには基本的には数年単位のことが多く、ガン化する前のポリープ段階で切除を行うという意味では40代になったらまず大腸カメラを受けることをお勧めします。
その他の危険因子としては、肥満2)・飲酒3)・喫煙4)・赤身肉や加工肉(ベーコン・ソーセージなど)の摂取5)が関連することが分かっており、これらを是正することも予防につながります。
また、運動や食物繊維の摂取が大腸がんのリスクを下げることがわかっており、取り組むことも大切です。
Q:大腸がん検診(検便検査)は有効ですか?
A:陽性の際にしっかり精密検査を受ける場合は有効です。
大腸がん検診である便潜血検査陽性の方も、実際に大腸カメラを行ってみると3%程度の方に大腸がんが見つかっており、放置せずに大腸カメラを受けることが大切です。
実際に便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告もあります7)
※便潜血検査陽性の方の診療事例は「当院での実際の治療例 “便潜血検査陽性”」からご覧いただけます。
参考文献:
- Strul H, Kariv R, Leshno M, et al. The prevalence rate and anatomic location of colorectal adenoma and cancer detected by colonoscopy in average-risk individuals aged 40-80 years. Am J Gastroenterol 2006; 101: 255-262
- Siddiqui A, Chang M, Mahgoub A, et al. Increase in body size is associated with an increased incidence of advanced adenomatous colon polyps in male veteran patients. Digestion 2011; 83: 288-290
- Cho E, Smith-Wamer SA, Ritz J, et al. Alcohol intake and colorectal cancer: a pooled analysis of 8 cohort studies. Ann Intern Med 2004; 10: 603-613
- Botteri E, Iodice S, Bagnardi V, et al. Smoking and colorectal cancer: a meta anlysis. JAMA 2008; 134: 388- 395
- Magalhaes B, Peleteiro B, Lunet N. Dietary patterns and colorectal cancer: systematic review and metaanalysis. Eur J Cancer Prev 2012; 21: 15-23
- 国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
- Zorzi M et al Gut 2022;71(3):561-567
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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