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便潜血検査陽性の場合は大腸カメラを受けた方がいいの?

よく患者さんから

便潜血検査陽性の場合は大腸カメラを受けた方がいいの?

というご質問を受けますが、

基本的には大腸カメラ(大腸内視鏡)を受けることをお勧めします。

 

大腸がん検診として行われている便潜血検査は、文字通り便の中に潜んでいる血液の反応をみる検査です。

大腸がんがあると、病変から出血して血が混じることがあり、実際に便潜血反応陽性の方に大腸カメラの検査をすると、3%程度に大腸がんが見つかっています

「自分は痔があるから痔の出血だろう」だと思って放っておいたら、実はその奥にあるがんからの出血だった、ということもありえるのです。

 

実際に便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告(※1)もあり、便潜血陽性の方は大腸内視鏡検査を受けることが大切です。

 

大腸がんではない残りの97%くらいの方は、ただのであったり大腸の炎症であったりしますが、その中には大腸ポリープが見つかる方も大勢おられます。

大腸がんはポリープが大きくなってがん化するケースがほとんどで、ポリープを切除することで大腸がんの予防につながりますので、がんは見つからなくても大腸カメラを受ける意味は大きいと考えます。

 

大腸カメラと聞くと、痛い・つらいというイメージを持たれる方も少なからずおられると思いますが、当院では挿入時の様々な工夫や鎮静剤を用いることで無痛状態で大腸カメラを受けていただけます。

 

関連ページ:・なぜ大腸内視鏡は痛くて苦しいの?

 

また早期がんなどは出血を来しにくく、便潜血検査が陰性だから大腸がんではないとは言い切れません。

ですので大腸がんの好発年齢に差し掛かってくる40歳になられたら、一度は大腸カメラをうけることをお勧めしています。

そして大腸カメラにて大腸の中の状態を評価しておけば、「次の大腸カメラは○○年後」という目安もお伝えすることができます。

 

実際に大腸カメラを受けるかどうかお悩みの方は外来でご相談いただけますので、一度ご受診ください。

 

 

実際に便潜血陽性で当院を受診された方の診療例です。

 

①60代男性 直腸がん

【症状】

特に自覚症状はありませんでしたが、人間ドックで受けた便潜血検査で陽性を指摘されて来院されました。

 

【診察】

便潜血検査は大腸がん検診の位置づけであり、陽性の方には大腸がんのリスクがあることをご説明し、大腸内視鏡検査を受けていただくことにしました。

 

【内視鏡検査】

精査のために大腸内視鏡を行ったところ、直腸がんが発見されました。

直腸がん

 

【治療】

残念ながら進行がんのため内視鏡治療はできない状態でしたが、幸いにも転移はなく手術にて完治しました。

 

前述のように便潜血検査陽性の方に大腸内視鏡を行ってみると3%程度の方に大腸がんが見つかるとのデータがあり、実際に今回のようにガンが見つかるケースもあります。

 

② 50代男性

【内視鏡検査】

大腸内視鏡検査ではガンやポリープなどは認めませんでしたが、内痔核(直腸の出口にある静脈叢がうっ血して浮腫んだ状態)を認め、便潜血反応陽性の原因と診断しました。

写真の黄色で囲まれた青黒い部分が内痔核です。 いきんだり、硬い便でこすれたりすると出血し下血したり、便に血が付着して便潜血検査の陽性反応が出ることがあります。

関連ページ:痔核(内痔核・外痔核)

 

【治療】

内痔核は悪化すると下血したり肛門から突出して痛みや違和感の原因となりますが、今回は自覚症状はなく、うっ血しないために排便時にいきまないなどの生活習慣指導で経過観察としました。

 

③ 60代女性

【内視鏡検査】

内視鏡検査では直腸ガンを認め、便潜血検査陽性の原因と考えました。

黄色で囲まれた隆起がガンです。

 

【治療】

内視鏡診断では進行がんが疑われ内視鏡治療の適応はなく、外科的に手術を行いました。幸い進行度はI期と早い段階だったため転移の心配もなく手術にて根治することができました。

 

区検診の検便検査(便潜血検査)は便中の血液の混入をチェックする検査なので、②の方のように単なる「痔」のこともありますが、①③の方のようにガンが見つかるケースもあります。

ただ検査をしてみないことには、「ガン」なのか「それ以外の痔などの良性疾患」なのかは判別がつかず、ガンだった場合には進行すると命にかかわることとなり、また便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告(※1)もあり、便潜血陽性の方は自覚症状がなくてもやはり大腸内視鏡を受けることが大切だと考えます。

 

その他の便潜血陽性の方の実際の診療事例については「当院での実際の治療例 “便潜血検査陽性”」からご覧いただけます

 

参考文献;※1 Zorzi M et al Gut 2022;71(3):561-567  有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン

 

◆関連ページ

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