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大腸憩室症・憩室炎

 大腸憩室とは、大腸内の腸管内圧が上昇することにより、大腸の一部が袋状に腸管外に突出した状態です。

先天性の憩室と後天性の憩室がありますが、後天性がほとんどで年齢を重ねるごとに腸管の筋肉が萎縮してくることで起こり高齢の方によく見られます。

<大腸憩室の内視鏡写真>

クリックすると拡大表示します。

<目次>

1.大腸憩室の原因は?

2.症状は?

3.検査は?

4.治療は?

5.実際の治療例

6.大腸憩室炎Q&A


<原因>

大腸憩室が出来る原因としては

・大腸内圧の上昇 

腸管壁の脆弱化 

があげられます。

便秘などで、大腸の内圧が上がると、腸管壁を支える筋肉が弱い部分が圧に負けて外に飛び出してしまい、袋状に膨らみこれが憩室となります。

特に血管が通る部分は筋肉が薄く飛び出しやすいと言われています。

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また、加齢により腸管を支える筋肉が薄くなることも憩室が出来る要因であり、このため高齢の方に大腸憩室がよく見られます。

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<症状>

憩室は、それだけでは特に症状がないことがほとんどです

ただ、憩室に便がはまり込んだりすると、細菌が繁殖して憩室炎という状態をおこすことがあります。

憩室炎を起こすと、腹痛・発熱などの症状が出ます。

特に憩室は上行結腸とS状結腸に出来やすいため、左右の下腹部に痛みを来しやすいです。

放っておくと悪化して穿孔(腸に穴があく)することもあるため、症状がある場合は早めの受診が大切です。

また、前述のように憩室は血管を通るところに出来やすいため、出血を来すことがあります。これを憩室出血とよびますが、時に大量の下血を来し貧血やショック状態になることもあるので、憩室炎同様、下血を来した場合は早期の来院が重要となります。

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<検査>

大腸憩室症自体は大腸内視鏡(大腸カメラ)の時に、偶然指摘されることがほとんどです。

腹痛や発熱を伴う大腸憩室炎の場合には、血液検査や腹部エコーの検査で診断を行います。

(痛みを伴うような憩室炎の場合は大腸カメラを行うと腸管の内圧を上げて悪化してしまうことがあるため、通常はあまり行いません。)

 

・血液検査:憩室炎の炎症の程度や下血による貧血がないかを調べます

エコー痛みのある部位にエコーをあてることで、憩室炎があるかやその炎症の広がりを確認します。

以前はCTで診断することも多かったですが、最近ではエコーでもしっかり腸管が診れるため、エコーで診断できることがほとんどです。

 

<大腸憩室炎のエコー画像>

腹痛のある部位に一致して憩室が描出され、憩室周囲の大腸の壁が炎症により肥厚し見えます。

大腸の憩室炎

 

 

<大腸憩室炎の内視鏡画像>

実際に軽度の炎症を起こした憩室の内視鏡画像です。

前述のように炎症が強く症状がある際には内視鏡は行わないことがほとんどですが、こちらは無症状で大腸内視鏡の際に偶然指摘されたものとなります。

この程度の軽度の炎症では症状が出ないことが多いですが、無症状の炎症でも繰り返すことで大腸が狭窄したり硬化したりすることがあります。

また、炎症が落ち着いた後には大腸内視鏡を行い、憩室の状態を評価することが望ましいと考えます。

 

関連ページ:

大腸内視鏡(大腸カメラ) ・腹部エコー

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<治療>

憩室に炎症が起こった場合(大腸憩室炎)は、抗生剤食事制限で様子をみます。炎症が強い時は入院や、憩室が穿孔(腸に穴があくこと)した場合には手術が必要になることもあります。

また、下血を伴っている場合(大腸憩室出血)は、大腸内視鏡(大腸カメラ)を行い憩室からの出血を止めます。

 治療期間は、軽症であれば外来で3-5日程度で改善することが多いですが、悪化することもありこまめに通院してもらいながら慎重に経過を見ます。

悪化の兆候があった場合は、入院に切り替え1週間~10日くらい治療を行います。前述のように穿孔し手術になった場合は、2週間~1カ月程度の入院のケースもあります。

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<実際の治療例>

・50代 女性 腹痛と発熱

【症状】

2日前から左の下腹部に違和感が出てきていましたが、寝れば治るだろうと思い、そのまま様子をみておられました。

ところが、翌日も違和感は取れておらず、次第にチクチクとした痛みに変わってきました。

病院に行こうか迷っておられましたが、日中に予定があるため受診出来ずにその日も様子を見られていました。しかし夜中になり痛みが強くなり、37度台の微熱も出てきたとのことで、朝になって当院を受診されました。

 

【診察・検査】

診察では、痛みが左下腹部に限局しており、以前に大腸カメラを受けて大腸憩室を指摘されていたとのことで、大腸憩室炎を疑いました。

エコーを行うと、痛みの場所に一致してS状結腸の憩室(図:赤部分)と周囲の大腸の壁の肥厚(図:水色部分)が描出されました。

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血液検査でも軽度の炎症反応が認められたことから、大腸憩室炎と診断しました。

 

【治療】

憩室炎は重症の場合は入院して様子を見ることもありますが、今回はエコー所見・血液検査ともに軽症であったので外来で治療を行うこととしました。

■治療内容■

①抗生剤

外来にて抗生剤の点滴を行い、内服薬の抗生剤を飲んで頂きました。

②食事制限

腸管を安静にし憩室部分に便による圧がかからないように、お食事は水分やスポーツドリンク、ゼリーやプリンなどの流動形のものの摂取にとどめてもらいました。

また、炎症と戦うための栄養を補うために抗生剤と同時に栄養剤の点滴も行いました。

 

【経過】

憩室炎が悪化してないかどうかの経過をみるため、翌日にクリニックを再診して頂いたところ、腹痛はだいぶ改善してきており、血液検査での炎症反応も低下してきていました。

このままの治療方針で憩室炎の改善が見込める状態と判断し、食事は2-3日おかゆやうどんなどの柔らかいものを食べて頂くようにし、抗生剤の内服で治療を継続とし、4日後に再診としました。

再診時には腹痛の症状はすっかりなくなっており、血液検査・エコーの所見とも改善しており、憩室炎の治療は終了となりました。

 

今回の方は比較的早期に受診して頂いたため、幸いにも憩室炎が悪化せずに外来通院で完治することが出来ました。

このように憩室炎は早期に治療を開始することが重要ですので、当院では大腸カメラで憩室を指摘された方や憩室炎の既往がある方には、腹痛や発熱などの症状があるときにはすぐに来院してもらうようにお伝えしております。

ただ、憩室炎は悪化すると穿孔といって腸が破れてしまい腹膜炎という重篤な状態に陥り緊急手術になったりするケースもあるので、炎症が強い場合や腹痛が強い場合には入院して慎重に経過を見る必要があります。

 


<大腸憩室Q&A>  

Q;憩室があると言われましたが、必ず憩室炎や出血を起こすのでしょうか?

A:必ず起こすわけではありません。

大腸憩室保有者の出血のリスクは期間とともに増加し、 0.2%/年・3%/5 年・10%/10 年程度と言われています。(※1)

また、憩室炎の発症は憩室出血の3倍程度との報告がありますが(※2)、憩室の数によっても変わってきます。(憩室の数が多いほど増加します。)

※1)Niikura R, Nagata N, Shimbo T, et al:Natural history of bleeding risk in colonic diverticulosis patients: a long-term colonoscopy-based cohort study. Aliment Pharmacol Ther 41:888-894, 2015

※2)Wheat CL, Strate LL:Trends in hospitalization for diverticulitis and diverticular bleeding in the United States from 2000 to 2010. Clin Gastroenterol Hepatol 14:96-103, 2016

 

Q:憩室炎を起こすリスクはなんですか?

A:肥満喫煙がリスクになると言われています

肥満の方は憩室炎の発症リスクが3割ほど高まり、穿孔などの合併症のリスクも2倍になるという報告があります。(※1)

また喫煙者の方は重症化・死亡のリスクが高まるというデータもあります。(※2)

※1)Hjern F, Wolk A, Håkansson N:Obesity, physical inactivity, and colonic diverticular disease requiring hospitalization in women:a prospective cohort study. Am J Gastroenterol 107:296-302, 2012

※2)Rose J, Parina RP, Faiz O, et al:Long-term outcomes after initial presentation of diverticulitis. Ann Surg 262:1046-1053, 2015

 

Q:憩室炎の治療は入院が必要ですか?

A:軽症の場合は外来での食事制限・抗生剤治療が可能です(※1)。ただし、発熱を伴う場合や血液検査での炎症反応が高い時などの重症時や悪化時は入院や手術が必要になります。

ですので、重症化する前に外来を受診し治療を開始することが重要です。腹部の痛みがある際には早めに医療機関を受診しましょう。

※1)Weizman AV, Nguyen GC:Diverticular disease:epidemiology and management. Can J Gastroenterol 25:385-389, 2011

 

Q:手術になることもありますか?

A:あります。

憩室穿孔」といって炎症が強くなり腸に穴が開いた場合には緊急手術になることもあります。また、慢性的に炎症を繰り返す方は予防的に手術を検討したり、狭窄を伴う場合などにも手術を検討します(※1)。

1)Klarenbeek BR, Samuels M, van der Wal MA, et al:Indications for elective sigmoid resection in diverticular disease. Ann Surg 251:670-674, 2010

 

Q:大腸内視鏡は必要ですか?

A:憩室炎の際には逆に悪化させることがあるので、急性期の炎症がある際に基本的には行いません。ただし、炎症が落ち着いた後には大腸内視鏡を行い、憩室の状態を評価することが望ましいと考えます(※1)。

また下血を起こす憩室出血の場合には止血のため緊急内視鏡を行います。

※1 日本消化管学会雑誌 第 1 巻 Supplement(2017)p42-43

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

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