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なぜ、膵臓はエコー検査で観察しづらいのか?

「膵臓がんは怖い」と、耳にしたことはないでしょうか。

毎年検査受けていたにも関わらず、気づいたら大きくなっていた。

そんな話を聞いたことがあります。

何故でしょうか。

 

エコー検査において、膵臓は非常に見づらい臓器です。

 

上の図のように、膵臓は解剖学的に頭部・体部・尾部で区切られています。

膵臓と胃、十二指腸の位置関係の図です。

膵臓の体部は胃や十二指腸との重なりが少ないため、比較的観察しやすい場所です。

しかし、頭部は十二指腸にぐるりと囲まれ、更に尾部は完全に胃の裏にもぐりこんでいます。

 

胃や十二指腸の中には空気が入っています。

エコーは空気に触れると減衰が大きくなり、画像を出すことが出来なくなるため、

矢印部分は非常に観察しづらい場所となってしまうのです。

 

もし、この死角にがんが出来てしまったとしたら。

膵臓がんは他の部位に浸潤しない限り痛みが出にくいため、発見できるのは「相当大きくなってから」ということにもなり得ます。

これが世間で「膵臓がんは怖い」と言われる所以です。

 

当院ではこの死角を出来るだけ少なくするため、積極的な体位変換検査に取り入れています。

仰向けの観察のみでは、膵臓問わず様々な臓器で死角が生じます。それに対し上体を起こして頂いたり、横向きになって頂いたりすることで重力方向に内臓が動き、それまで見えなかった部位が明瞭に観察できます。

下の写真はとある患者さんの膵臓の写真です。

仰臥位での観察です。この時点では膵頭部、体部、尾部に明らかな病的所見は見当たりません。しかしコメントにあるように、尾部が胃のガスの影響で一部描出不可能でした。

当院では、この患者さんに対し右側臥位をとって頂きました。

側臥位にすることにより内臓が動き、ガスの影響も少なくなり、いい条件が重なったことで尾部の観察が可能になりました。

と同時に仰臥位では発見し得なかった病変を認めました(矢印)。大きさは8×7㎜です。

もちろん、体位変換によって全ての人が好条件になるわけではありません。しかし、当院では死角を減らすため必ず体位変換を行うようにしています。

 

【実際の症例】

50代男性 人間ドックの腹部エコーで膵臓の描出不良

 

【症状】

数年前から人間ドックで腹部エコーを受けた際に膵臓の描出不良を指摘され、ドックの施設からも専門科への受診を指示されていましたが、自覚症状も特になく様子見としていました。

今回は時々背中が痛くなることがあり、心配になり当院を受診されました。

 

【腹部エコー】

腹部エコーを行うと、膵尾部に34㎜大の腫瘍を認め膵臓がんを疑いました。

膵尾部に35㎜大の低エコー域(矢印)を認めました。 ドップラーエコーでは血流が乏しく膵臓がんと考えました。

【治療】【経過】

診断の確定と治療のため、高次医療機関にご紹介としました。

CTで動脈浸潤を伴う進行膵臓がんの診断となり、手術が難しく化学療法にて治療をする方針となりました。

 

膵臓がんは症状が出た時にはある程度進行しており根治できない状態のことが多く、早期発見が治療できるかどうかの鍵になります。

そのためにエコーは非常に有用ではあるのですが、描出が難しいこともあり検診や人間ドックで描出不良となることも少なくなく、その際には専門施設で再検査を受けることが重要です。

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

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