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実際の治療例 “昨晩からの腹部の激痛と嘔吐(急性虫垂炎)”

[2024.11.05]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

30代 女性 昨晩からの腹部の激痛と嘔吐

 

症状

昨日の夕食後しばらくしてから臍の上あたりの痛みが出てきて徐々に増強し、

数時間後にはかなり痛みが強くなり、嘔吐。ご家族が心配し、救急車を呼び救急外来を受診されました。

同院では急性胃腸炎と診断され、痛み止めと点滴を投与の上帰宅となりましたが、

その後も痛みが続くとのことで、朝になって当院を受診されました。

 

診察

受診時には嘔吐は落ち着いていたもののかなり強い痛みがあり、

触診では右下腹部に強い圧痛を認め急性虫垂炎(いわゆる盲腸)憩室炎右卵巣疾患などを疑い、腹部エコーやレントゲン・血液検査などを行いました。

 

検査

腹部エコーでは虫垂の腫大虫垂根部に糞石の陥頓を認め、急性虫垂炎と診断しました。

実際のエコー検査の画像です。 虫垂が9㎜大の腫脹し(黄色部分・正常は6㎜以下)、 根元の部分に約10㎜の糞石の陥頓(青部分)を認めました

関連ページ:

腹部エコー

 

治療

エコー検査では虫垂の穿孔(穴が開くこと)はありませんでしたが、悪化しやすいサインの一つである「糞石の陥頓」があり、血液検査でも強い炎症反応の上昇を認め、ご本人の疼痛もかなり強いため、手術の適応も含め高次医療機関にご紹介し入院となりました。

のちに紹介先の病院より、入院し点滴管理としていましたが当日の夜に痛みがさらに増悪し緊急手術となったものの、穿孔や腹膜炎などの重篤な状態にはならず5日ほどで退院となったとの報告がありました。

 

虫垂炎は発症初期は上腹部やみぞおちの痛みで発生し、痛みが強いと嘔吐してしまうこともあり、急性胃腸炎の症状と似ているため誤診されてしまうこともあります。

ただ、適切な検査をすれば診断がつくことがほとんどなので、当院では腹部エコーや血液検査などを行い、なるべく早期に正しい診断をつけることに力を入れています

 

軽症であれば抗生剤で散らす場合もありますが、今回のように糞石などの重症化のリスクがある場合痛みが激しい場合穿孔が疑われる場合などは緊急OPEになる可能性があり、

そのような場合は当院では速やかに高次医療機関にご紹介し、緊急OPEにも対応してもらえる医療体制で治療を行ってもらえるようにしております。

 

なお、散らした場合は15~30%程度の再燃リスクもあるため※1、落ち着いた後に1-3か月をめどに予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります※2

 

参考文献:※1)Tekin A, Kurtoglu HC, Can I, et al: Routine interval appendectomy is unnecessary after conservative treatment of appendiceal mass. Colorectal Dis 10:465-468,2018

※2)前田 大,藤崎真人,高橋孝行ほか:成人の虫垂膿瘍に対する interval appendectomy.日臨外会誌 64:2089-2094,2003

 

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

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