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逆流性食道炎・胸やけ外来

胸やけ

 

逆流性食道炎とは胃酸が胃から食道に逆流し、胃と食道のつなぎ目の部分に炎症が起きている状態です。

胸やけげっぷのどの違和感などの症状の原因となります。

 

強い痛みなどと違って耐えられないほどではないものが多いですが、不快感が強く、また慢性的に起こる場合も多いため何とかしたい症状の一つです。

当院では、単に逆流性食道炎を治療するだけではなく、繰り返さないための予防も含めた「脱・逆流性食道炎」を目標に治療を行っていきます。

 

<目次>
  1. 逆流食道炎の原因は?
  2. 症状は?
  3. 検査は?
  4. 治療は?(実際の治療例)
  5. Q&A

 

逆流性食道炎の原因

胃の粘膜はもともと胃酸に対して耐性をもっており、胃酸によって傷つかないようになっています。しかし食道にはそのような耐性がないため、胃酸が逆流すると粘膜が傷ついて炎症を起こしてしまい、逆流性食道炎が発症します。

そして、その胃酸の逆流自体は下記のような要因で起こります。

 

胃と食道のつなぎ目の緩み(食道裂孔ヘルニア)

胃から食道への逆流を防いでいる下部食道括約筋の締め付け機能の低下。もともとの体質や加齢などで生じてきます。

関連ページ:食道裂孔ヘルニア

 

・食道の内圧低下

アルコールの摂取・喫煙などにより食道運動機能が低下し、食道の内圧が下がります。また、食道の蠕動運動を調整する機能の異常でも起こることもあります。

 

・胃酸の分泌過多

ストレスや高たんぱく、高脂肪、香辛料、高カフェイン(コーヒーなど)の過剰摂取は胃酸の分泌の増加につながります。

 

・胃の動きの低下

ストレスや睡眠不足、薬剤の影響などにより胃の動きの低下が生じ、流れの停滞により逆流が生じやすくなります。

 

・胃の内圧上昇

食べ過ぎ、肥満、便秘、前かがみの姿勢、ベルトや下着による腹部の締めすぎなどにより胃の内圧が上昇し、胃酸の逆流の原因となります。また、胃の内部にガンが発生して通過障害を起こすことも内圧の上昇につながり二次的に逆流を起こします。

 

・唾液の分泌低下・アルカリ濃度の低下

唾液はアルカリ性なので飲み込むと食道に流れて胃酸を中和する作用がありますが、喫煙により唾液中のアルカリ濃度が低下するため、その中和能力が落ちます

 

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逆流性食道炎の症状

胃酸が胃から食道に逆流してくることで胸やけゲップなどが出やすくなり、炎症により粘膜が刺激され胸の痛みつまり感が出たり、逆流が咽頭(のど)にまで達してくると咽の違和感なども出てきます。

また胃酸が分泌過多傾向になっていることが多く、胃痛胃もたれもよく見られる症状です。

 

◆逆流性食道炎の代表的な症状◆

・胸焼け

・ゲップがよく出る

・呑酸(のどや口の中の酸っぱい感じ)

・胸痛、胸のつかえ感

・のどの違和感、つまり感

・咳がよく出る

・胃もたれ

・胃のむかつき

・胃痛

など

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逆流性食道炎の検査

逆流性食道炎の診断は、症状内視鏡(胃カメラ)によって診断します。

胃内視鏡(胃カメラ)で見た時の炎症の程度によりグレードN・M・A・B・C・Dと分類されます。
(N ⇒ M ⇒ A ⇒ B ⇒ C ⇒ Dの順に病気が進行します。)
 

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逆流性食道炎の治療は?

胃酸の逆流が起こっており胸焼けなどの症状があっても内視鏡的に炎症は起こっていない状態も多く認められます。(内視鏡所見のグレードN)
そのような場合でも症状があれば治療を行います。
 
逆に、内視鏡的な所見はあっても自覚症状がない方もおられます。
そのようなケースでは、内視鏡の程度が軽ければ症状がない場合は治療せずに経過をみることもありますが、炎症が続くとバレット食道という状態につながったり、いずれ自覚症状も出ることが多いので、なるべく治療することをお勧めしています。
 

具体的な治療としては、

①症状を抑える薬やサプリ

②逆流性食道炎を起こしにくくする生活習慣つくり

を柱に行っていきます。

 

薬治療

胃酸の分泌過多を抑える制酸剤

胃の動きを改善し胃酸の流れをよくする薬

食道粘膜の知覚過敏を抑える漢方薬

 

症状の出現タイミングや逆流の原因には個人差があるので、患者さん一人一人の症状に合わせお薬の種類を変えたり、また薬同士の飲み合わせを行ったり、服薬時間の工夫を行っていきます。

 

また当院では薬が効かない方や副作用が出て薬が飲めない方・薬を飲むのに抵抗がある方に対して、オリジナルのサプリ『i-katsu』を使用した治療も行っております

詳細は下記リンクからご覧ください。

逆流性食道炎に対してのi-katsuでの診療

 

生活習慣つくり

1.食事内容の見直し

以下のものの過剰摂取は控えるようにします。

・アルコール:食道運動機能が低下し、食道の内圧が下がります。

・高たんぱく、高脂肪、香辛料、高カフェイン(コーヒー・お茶):胃酸の分泌過多につながります。

 

2.喫煙を控える

喫煙は食道運動の低下、腹圧の上昇を招きます。また喫煙により唾液中のアルカリ濃度が低下するため、唾液が食道に流れた時に胃酸に対する中和能力が落ちます。

 

3.食べ過ぎない(腹八分目)

食べ過ぎて満腹になりすぎると、胃の内圧が上がってしまい胃酸や胃内容の逆流が起こりやすくなります。

 

4.食後すぐに横にならない・寝る前には食べない

食後と夜寝ている間は胃酸がよく出ます。

加えて横になる姿勢だと、食道の位置が低くなり重力もかかりにくくなるため、胃酸が逆流しやすくなります。

 

5.ベルトなどでお腹を絞めすぎない

腹圧が上がり、胃酸の逆流の原因になります。
 

※逆流性食道炎は繰り返しやすい??

逆流性食道炎の要因には、胃酸の分泌の増加胃や腸の動きの低下が関わってきますが、これらはストレスや生活習慣によってもたらされることが多いです。

 

胃酸の分泌や胃や腸の動きは自分の意志ではコントロールできずに、体が勝手に自律神経を介してコントロールしているのですが、ストレス生活習慣(食生活・アルコール・タバコ・睡眠など)の乱れがあるとコントロール機能が上手く働かず、胃酸過多になったり、胃や腸の動きが低下し、逆流性食道炎を起こし、胸やけが発生します。

 

ですので、ストレス因子が持続したり、生活習慣が改善しないと、一旦薬でよくなったあともぶり返すことが多いのです

そのため習慣の改善を行うことが大切になりますが、急激な習慣の改善が難しかったり、ストレス環境が続く場合には、薬を持続的に使用したり、胃酸の分泌を正常に保つようなサプリを使用することもあります。

 

また、胃酸を抑える薬を服用していると、薬をやめた際に一時的にリバウンド反応を起こし、胃酸が分泌しやすくなり胸やけの再発を起こすことが少なからずありますが、胃酸の分泌を正常化するサプリを服用することで、そのリバウンドが出にくくなると言われています。

そして、サプリは食品ですので、通常は副作用が出ることがなく、長期に安全に飲んで頂けるというメリットもあります

 

このように生活習慣の改善やサプリの服用を行い逆流性食道炎を起こしにくい体質をつくることも重要です。

◆実際の治療例◆

40代 男性 繰り返す胸やけ

【症状】

数年前から度々胸やけを繰り返しておられ、近所の内科で胃薬をもらって様子をみていました。ここ半年ほどは胸やけの頻度も増え、薬を飲んでも改善しないこともあり、内科の医師からは胃カメラを受けるように勧められていましたが、恐怖心もあり躊躇していました。

会社の同僚から、当院で無痛内視鏡で楽に検査を受けることが出来たとの話を聞き、当院を受診されました。

※関連ページ;無痛胃カメラについて

 

【診察】

症状からは逆流性食道炎を考える状態であり、経過も長いため、やはりまずは胃カメラでの状態評価が望ましいと考えました。

ご本人は、「胃カメラは今まで一度も受けたことがないものの、 “えづき”が強い体質なのでかなり恐怖心が強い」とのことで、鎮静剤を使って無痛状態で行うこととしました。

 

【検査】

実際に胃カメラで観察をを行ったところ、やはり逆流性食道炎の所見を認めました。

※検査自体は本人が眠った間に終了し、苦痛は全くない状態で施行できました。

 

【治療】

逆流性食道炎は胃酸の分泌過多や、胃の動きの低下などで生じることが多く、酸分泌過多を抑える制酸剤や胃の動きを改善する運動機能改善薬を組み合わせて治療することとしました。

また合わせて胃酸の分泌過多・逆流を抑えるための生活習慣の改善を指導しました。

 

<治療内容>

1.制酸薬

胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌過多を適正化してくれることで逆流を抑えてくれます

今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。

 

2.運動機能改善薬

胃の動きを改善する薬です。胃から十二指腸への排出機能を改善させることで胃酸の逆流を防ぎます。

 

3.生活習慣指導

・夕食から就寝までは2時間以上開ける

仕事が忙しく夜寝る前に食べてしまうことが多いとのことであり、何とか早めに食事を摂り、就寝までの間は最低でも2時間以上あけるようにしました。

座位の姿勢であれば、食べ物は重力で胃の先の腸に流れ易くなりますが、食べてからすぐに就寝すると、胃内に食事がうっ滞したり、逆流しやすくなります。

 

・早食いせずにゆっくりよく噛んで食べる

また、忙しく時間がないせいで早食いになりがちとのことで、ゆっくりよく噛んで食べてもらうことも心掛けるようにしました。

早食いしてしまい、食べ物が大きい形のまま胃内に入ってくると消化に時間がかかり、胃内に滞留してしまい逆流性食道炎の一因となるためです。

 

【経過】

2週間後の再診の際に状態を伺うと、投与開始後、3日目あたりから胸やけの頻度が減り、再院時にはかなり良くなっている状態でした。

ご本人と相談し、薬は徐々に減らしつつ、1か月後の再診の際には一旦中止してみました。

ごくたまにに胸やけはあるものの、全体としてはほとんど問題ない状態とのことで、症状があるときだけ薬を服用する方針としました。

 

もともと胸やけはあったものの、夜遅くに食事を摂るようになったころから胸やけの頻度が増加し始めたとのことで、その習慣の改善が逆流性食道炎がよくなった要因の一つと考え、今後も生活習慣には十分注意して頂くこととしております

 

② 40代 女性 胸やけ・げっぷ・のどの違和感

【症状】

5-6年前から胸やけげっぷのどの違和感を度々感じており、特に治療は受けずに様子を見ていましたが、ご家族から当院を勧められ受診されました。

 

【診察】

症状は食後に感じることが多いとのことで、症状と合わせて逆流性食道炎を疑いました。

胃内視鏡(胃カメラは一度も受けたことがないとのことで、まずは内視鏡を行いました。

 

【検査】

実際に内視鏡検査を行ったところ、やはり逆流性食道炎の所見を認めました。

 

【治療】

内視鏡上の炎症が中等度とやや目立つため、制酸剤機能改善薬による内服治療を考えましたが、ご本人が「アレルギー体質なので、薬はなるべく飲みたくない」とのことで、まずは胃酸の分泌過多・逆流を抑えるための生活習慣の改善を行い、また、サプリであればご本人が抵抗がないとのことで、当院のオリジナルサプリi-katsuも飲んで頂き経過を見ることとしました。

※サプリは食品と同じ扱いであり通常は副作用が出ることがなく、長期の服用に関しても安全性が高いと考えられています。

 

<治療内容>

 1.生活習慣指導

アルコールが好きで、ほぼ毎日飲んでおり、寝酒もするとのことで、休肝日をしっかりとつくること寝酒はやめることを徹底してもらいました。

※アルコール摂取により、胃酸分泌を促進させたり食道運動機能が低下し胃からの逆流が起こりやすくなります。

 

2.サプリ(i-katsu)

i-katsuの成分の一つであるLJ88は必要以上に胃酸を抑えることなく、過剰な部分の胃酸分泌抑制し、胃酸の状態を適正化してくれます。

また、麦芽や大根の種といった生薬は消化促進作用や胃腸の運動促進があるとが分かっています。

 

【経過】

2週間後の再診の際に状態を伺うと、症状は少しづつ良くなってきたが、まだ続いているとのことで、引き続き減酒とサプリを続けてみることとしまた。

さらに1か月後の再診時には症状がだいぶ軽くなり、食後のげっぷが少し気になる程度まで改善し、3か月後の再診時には症状はほとんど良くなっていました。

 

アルコールは引き続き休肝日を作ることと寝酒をやめることを続けて頂き、ご本人がサプリは続けたいとのことで続けてもらい、6か月後に経過チェックのため内視鏡を再検しました。

 

内視鏡上は炎症はかなり改善しており、ほぼ傷痕になっている状態でした。

そして、1年後の内視鏡検査では炎症は改善しており、症状の再燃もなく、現在も節度ある飲酒サプリを続けています。

 

 

逆流性食道炎のQ&A

Q:激しい運動が逆流を増加させるって本当ですか?

A:本当です

 

1時間の運動を行った際の胃酸の逆流回数は増加し、食道の胃酸の暴露時間は安静時に比べ3倍にも増加するという報告があります

ですので、普段から逆流症状でお悩みの方は運動後の食事や姿勢に気を付けたり、胸やけなどの症状が強い時は薬を服用するなどの準備をしておくとよいと思われます。

参考文献

  • Kraus BB, Sinclair JW, Castell DO. Gastroesophageal reflux in runners: characteristics and treatment. Ann Intern Med 1990; 112: 429-433
  • Pandolfino JE, Bianchi LK, Lee TJ, et al. Esophagogastric junction morphology predicts susceptibility to exercise-induced reflux. Am J Gastroenterol 2004 ; 99 : 1430-1436

 

Q:内視鏡で異常がなくても逆流性食道炎ということはありえますか?

A:ありえます

 

胸やけなどの自覚症状がある場合に内視鏡検査を行ってみても25%程度の方にしか内視鏡的な炎症を認めなかったとの報告があります。

 

実際に当院でも症状がある方に内視鏡をやってみても異常はなかったという事態には度々遭遇します。

そうした場合には食道粘膜の知覚過敏などの要素がかかわっていることもあり、ただ単に酸の分泌過多を抑える治療ではうまくいかないこともあるため、治療方針を決める上で内視鏡を行い「炎症がある逆流性食道炎」なのか、「炎症がない逆流性食道炎」なのかを把握することは重要です。

参考文献

Okamoto K, Iwakiri R, Mori M, et al. Clinical symptoms in endoscopic reflux esophagitis: evaluation in 8031 adult subjects. Dig Dis Sci 2003; 48: 2237-2241

 

Q:症状改善に有効な生活習慣はありますか?

A:あります

 

逆流性食道炎の症状を悪化させる要因としてデータがあるのは「タバコ」・「アルコール」です。

症状がある方はこれらの習慣の是正は望ましいです。

 

また、肥満の方は腹圧が上がり酸の逆流を惹起しますので、体重コントロールは大切になってきます。また臥位時には酸が逆流しやすくなりますので、頭側を挙げるなどの対応も有効です。

実際にこれらの行為は、症状改善させるデータとして有効性が証明されています。

参考文献

  • Kaltenbach T, Crockett S, Gerson LB. Are lifestyle measures effective in patients with gastroesophageal reflux disease? Arch Intern Med 2006; 166: 965-971
  • Stanciu C, Bennett JR. Effects of posture on gastro-oesophageal reflux. Digestion 1977; 15: 104-109
  • Meyers WF, Herbst JJ. Effectiveness of positioning therapy for gastroesophageal reflux. Pediatrics 1982; 69: 768-772

 

Q:食道以外にも症状が出ますか?

A:出ます

 

狭心症などの心臓疾患と間違われるような胸痛慢性的に続く咳のどの違和感・痛み喘息副鼻腔炎などを引き起こすと言われています。

胸やけなどの典型的な症状がない場合でも、上記のような症状がある場合は逆流性食道炎を疑って検査・治療を行ってみてもよいと考えます。

参考文献

  • Ford AC, Suares NC, Talley NJ. Meta-analysis: the epidemiology of noncardiac chest pain in the community. Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 172-180
  • Jaspersen D, Kulig M, Labenz J, et al. Prevalence of extra-oesophageal manifestations in gastrooesophageal reflux disease: an analysis based on the ProGERD Study. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: 1515-1520
  • Kamargiannis N, Gouveris H, Katsinelos P, et al. Chronic pharyngitis is associated with severe acidic laryngopharyngeal reflux in patients with Reinke’s edema. Ann Otol Rhinol Laryngol 2011; 120: 722-726
  • Tsai MC, Lin HL, Lin CC, et al. Increased risk of concurrent asthma among patients with gastroesophageal reflux disease: a nationwide population-based study. Eur J Gastroenterol Hepatol 2010; 22: 1169-1173

 

Q:薬を飲んでいるのですが治りません。どうすればいいですか?

A:様々な治療法があります。あきらめずに治療していきましょう!

 

逆流性食道炎の治療薬には制酸剤や運動機能改善薬、さらには漢方などもあり症状や病態に合わせてそれらの組み合わせを行っていきます。

また当院では当院オリジナルのサプリ“i-katsu“を利用する独自の治療も行ったり、内視鏡で食道裂孔ヘルニアなどの物理的な逆流の原因があった際には内視鏡治療なども検討したり、一つの治療で治らない場合でも色々と方法があるのであきらめずに治療していきましょう。

文責:神谷雄介院長(消化器病専門医・内視鏡専門医)

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<関連ページ>

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