のどのつかえ・つまり・違和感外来
「のどがつかえたような感じがして、耳鼻科に行ったんですが、異常はないと言われました」
「のどに違和感があって、病院に行ったら胃酸の逆流のせいと言われ、お薬を飲みましたが、効きません」
のどの違和感・つかえについてご相談に来られる方から、そのようなお話をよく伺います。
確かに、のどのつかえや違和感をの症状を引き起こす原因の一つに、“逆流性食道炎”やその仲間のひとつである“咽喉頭逆流症”という病気があります。
特に咽頭喉頭酸逆流症は、のどの症状を起こす病気としてここ最近注目されているのですが、実は診断が難しく、検査したが異常を認めず、“気のせい”や“ストレス”などと言われてしまい、見逃されていることも多い疾患の一つです。
しかし、異常なしと言われた方でも、再度問診をしっかりと行い、最新の胃カメラを用いて詳細に咽頭を観察することで診断がつき、適切な治療に結びついているケースも多々あるため、症状にお困りの方はご相談ください。
<目次>
2.検査は?
3.治療は?
4.Q&A
5.実際の治療例 ※治療例は随時更新しております。
■関連ページ■
1.のどの違和感・つかえ感の原因は?
のどの違和感・つかえ感・つまり感などの症状を医学的には「咽喉頭異常感症」と呼びます。
実際に原因となる病気や異常があって生じる場合を「症候性咽喉頭異常感症」、検査では全く異常がみられない場合「真性咽喉頭異常感症」と呼びます。
「症候性咽喉頭異常感症」の原因には、先ほど説明した胃酸の逆流によるもの(逆流性食道炎・咽喉頭酸逆流症)以外にも、
・アレルギーによる食道の炎症(好酸球性食道炎)
・のどや食道の真菌の感染(食道カンジダ)
・食道の運動機能異常(食道アカラシアなど)
・咽頭がんや食道がんなどの腫瘍性病変
・扁桃炎や咽頭炎などの耳鼻科系の疾患
・反回神経麻痺などの神経疾患
・甲状腺疾患やリンパ節病変などの前頸部の疾患
などがあります。
「真性咽喉頭異常感症」は、病気や器質的な異常がないのに起こってしまうのどの違和感ですが、その要因の一つにストレスがあげれます。
ストレス時には交感神経の働きが強まり、それにより咽喉頭周囲の筋肉が過剰に収縮し違和感が生じるもので、「ヒステリー球」などと呼ばれ不安や緊張状態があるときに症状が出現しやすい傾向があります。
また、全くストレスなどもなく起こってしまう特発性の真性咽喉頭異常感症という状態もあります。
真性の場合は下記のような症状があるのも特徴です。
・異常感が慢性的に続く
・仕事などに集中している時には起こりにくい
・のどに何かへばりついたような感覚がある
・液体を飲み込むときに違和感が出現しやすく、固形のものを飲み込むときには違和感が生じないことが多い
症状があるにも関わらず医療機関で異常なしと言われた方や、逆流性食道炎かもと言われてお薬飲んだけど治らない、といった方の中には、胃酸の逆流ではなく、アレルギーや甲状腺などの他の病気が原因であったり、真性咽喉頭異常感症であることも考えられます。
そのような場合には、胃酸を抑えるような逆流性食道炎の治療ではなかなか症状が改善せず、「薬を飲んでも治らない」と言うような状態になってしまいます。
また、食道がん・咽頭がんなどによる食道やのどの通過障害でものどの症状は起こり、放っておくと悪化することもあるため、症状のある方は一度は診察・検査を受けることをお勧めします。
2.検査は?
のどの違和感やつかえ感の原因は前述のように多岐にわたるため、しっかりと検査を行い原因を見極めていく必要があります。
まずはつかえ感や違和感の状態を問診で把握し、胃内視鏡(胃カメラ)や前頸部のエコー検査でしっかりと状態を確認します。
<問診>
症状の確認を行います。
“のどの違和感”と言っても、「つまり感」、「飲み込みにくさ」、「圧迫感」、「痰のへばりつき」、など多彩な症状があるため、どのような状態なのかを把握し、そのうえで症状の特徴を掘り下げていきます。
酸の逆流によるものであれば胃酸の出やすいタイミング(食後や就寝中など)に症状が誘発されやすく、がんなどによる通過障害であれば食べ物を飲み込むタイミングで症状が出やすくなったり、また真性咽喉頭異常感症であれば特徴的な症状があり、そこから原因の推測を行い、診断に必要な検査の道筋を立てていきます。
<エコー>
エコー検査で甲状腺や周囲のリンパ節などののどの周りの臓器に病変がないかを調べます。
<胃内視鏡(胃カメラ)>
解像度の高い4Kフルハイビジョンシステム(CV-1500)を用いた詳細な内視鏡検査を行います。NBIというモードに切り替え色調を変えることでのど(咽喉頭)・食道もしっかりと見ることが出来ます。
症状の原因となるような逆流性食道炎・咽喉頭逆流症や食道がん、アレルギーによる好酸球性食道炎、食道アカラシアなどの食道運動機能異常、真菌感染による食道カンジダなどがないかを確認します。
また、当院では胃カメラ時にのどの観察にも力を入れており、咽頭がんの早期発見にもつながっております。のどの観察についての詳細についてはこちらをご覧ください。
※ご希望の方には鎮静剤を使った無痛胃カメラで受けて頂くことが可能です。
関連ページ:
・胃カメラでのどは見れるの?~当院の咽喉頭(のど)観察の工夫~
検査を行い、原因に合わせて治療を行います。
例えば、ガンなどの腫瘍が見つかった場合は、その治療を行いますし、胃酸の逆流に関連しておこる咽喉頭酸逆流症の場合は、基本的には逆流性食道炎同様の治療になります。(詳しくはこちらをご参照ください。)
また、のどの粘膜の知覚過敏(咽喉頭異常感症)と考えられる場合は知覚過敏を抑えるような漢方薬、カンジダ症の場合は抗真菌薬といった治療を行っていきます。
Q:一度胃カメラを受けていますが、もう一度受けた方がよいですか?
A:状況によりますが、基本的には再検査をお勧めします。
のどの違和感の原因の一つに食道疾患がありますが、その中でも、アカラシア・好酸球性食道炎などは見落とされやすく、以前に受けられた内視鏡検査が専門施設での検査でなければもう一度再検査を受けられてもよいかと考えます。
Q:漢方がよいと言われて処方されたものを飲んでいるのですが、あまりよくなりません。
A:漢方は即効性というよりも、続けていくうちにじわりと効いてくるイメージです。2週間~6週間程度は続けてみてもよいと思います。
またのどの違和感に効果がある漢方は種類が多く、1種類のものが効かない場合は他のものを試したり、数種類を組み合わせながら治療を行うこともあります。
Q:治りますか??
A:のどの違和感は難治性のことも多いですが、お力になれるように出来る限りの治療を行いますのでご相談ください!
のどの違和感は原因によって治療が大きく変わりますが、多くの方は調べても異常がない真性咽喉頭異常感症と呼ばれる状態です。
真性咽喉頭異常感症は時に難治性治で明確な治療法も確立されておらず、「気のせい」と言われて匙を投げられてしまうことも少なくありません。
当院では前述の漢方治療に加え、神経薬や粘膜保護剤なども組み合わせたハイブリッド治療を行ったり、本当に原因がない状態なのかを改めて検査したり、必要に応じて高次医療機関に紹介することで、他院で改善の見られなかった方も多くの場合で症状の改善を得ております。
のどの違和感・つまりなどでお困りの方は一度ご相談ください。
また、のどの違和感が治りにくい原因についてはこちらもご覧ください。
- Case① 20代 男性 のどの違和感・つまったような感覚(逆流性食道炎)
- Case② 40代 女性 のどに痰がへばりついた感じ(咽喉頭異常感症)
- Case③ 40代 男性 食事中ののどや前胸部つまり感・降りて行かない感覚(好酸球性食道炎)
- Case④ 60代 女性 食べ物がのどにつまる(食道がん)
- Case⑤ 40代 女性 胸やけ・げっぷ・のどの違和感(逆流性食道炎)
- Case⑥ 40代 女性 食べ物がつまる(食道アカラシア)
- Case⑦ 50代 男性 飲み込む時の違和感(咽頭カンジダ症)
- Case⑧ 20代 女性 突然数日前から食べ物がつまる
【症状】
3か月ほど前から何となくのどの辺りの違和感が出始め、徐々にその違和感が強くなり、1カ月ほど前からはのどがつまったような感じになってきたとのことで、当初耳鼻科を受診されました。
耳鼻科で喉頭鏡(鼻から細いファイバースコープを入れてのどを観察する検査)の検査をしても異常はなく、「ストレスによるもの」と言われ様子を見るように言われましたが、やはり改善がなく症状が気になるとのことで当院を来院されました。
【診察】
「胸やけなどの症状はないが食後に痰が絡むような感覚もある」との訴えもあり、逆流性食道炎・咽喉頭逆流症などの胃酸逆流関連の症状と、またのどの違和感やつまったような感じは常にあるものの、仕事などに集中しているときは忘れることもあるとのことで、咽頭の知覚過敏も関連していると考えました。
【検査】
逆流性食道炎・咽喉頭逆流症などの病変が本当に起こっているが、のどにつまりの原因となる腫瘍などの出来物がないかなどを確かめるために胃カメラ(胃内視鏡)を行いました。
内視鏡では腫瘍などの病変はなく、図のように逆流性食道炎:グレードA※を認めました。
※逆流性食道炎の分類についてはこちらをご参照ください。
ただ、内視鏡上はのどの粘膜は正常で逆流による炎症は及んでいなかったため、やはり咽頭の知覚過敏もあると考えました。
(咽頭知覚過敏になると、通常の状態ではあまり気にならない程度の刺激・内視鏡でも所見にならない程度のわずかな胃酸逆流の刺激でも、違和感やつまりとして感じることがあります。)
【治療】
内視鏡で逆流性食道炎を認めたため胃酸の逆流を抑える薬と、のどの知覚過敏を抑える漢方薬を併用することとしました。
また合わせて胃酸の分泌過多・逆流を抑えるための生活習慣の改善を指導しました。
<治療内容>
1.制酸薬
胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌過多を適正化してくれることで逆流を抑えてくれます
今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。
2.漢方薬
のどの知覚過敏を改善する薬です。
のどに病変がないにも関わらず、のどの症状がある方にはよく効いてくれます。
3.生活習慣指導
ストレスが多く、ついついアルコールをたくさん飲んでしまうとのことでした。
アルコールは食道の運動機能を低下させ食道の内圧が下げてしまい逆流を起こしやすくするため、症状があるうちは控えて頂くようにしました。
また、忙しく時間がないせいで早食いになりがちとのことで、ゆっくりよく噛んで食べてもらうことも心掛けるようにしました。
早食いしてしまい、食べ物が大きい形のまま胃内に入ってくると消化に時間がかかり、胃内に滞留してしまい逆流性食道炎の一因となるためです。
【経過】
1週間後に再診して頂くと、食後のたんがらみはなくなり、のどの違和感もすこし程度と頻度が減ってきたとのことでした。
更にもう2週間薬を続けると、かなり症状がとれたとのことでした。
ただ、朝起きた時に少しのどの違和感を感じやすいとのことで、PPI(制酸剤)の服薬時間を寝る前に変更し夜間の酸分泌過多を抑えたところ、次の再診の時には朝の症状もなくなりのどの違和感はなくっていました。
生活習慣の改善も続けているとのことで、今度は薬を徐々に減らしていきましたが、症状の再燃はなく、そのまま薬は中止し、経過をみましたが、症状の再燃はありませんでした。
このように逆流性食道炎によるのどの違和感は薬で治療するとともに、生活習慣も改善していくことで再燃を防ぐことができ、薬も減らしていくことが出来ます。
また、逆流性食道炎の原因となる胃酸の分泌過多や胃の蠕動運動の低下には、胃内細菌叢なども関連しているといわれており、胃内細菌叢の改善や過剰な胃酸の分泌を正常な状態に保つ成分(胃由来の乳酸菌や生薬)を含んだサプリを服用して頂き、症状の再燃を抑えたり体質改善を行うこともあります。
※サプリは食品ですので、通常は副作用が出ることがなく、長期に安全に飲んで頂けるというメリットもあります。
【症状】
半年以上前からのどに痰がへばりついている感覚があり、耳鼻科を受診したが異常がないと言われ様子を見ていましたが、一向に改善がないとのことで来院されました。
【診察】【検査】
耳鼻科で喉頭ファイバーやアレルギー検査を受けたが異常はないとのことで、当院では食道疾患や甲状腺疾患などがないかを調べるため、胃内視鏡(胃カメラ)や甲状腺エコーを行いましたが、結果こちらも異常なく、特に病気で起こっているというよりは、咽喉頭の知覚過敏による、咽喉頭異常感症ではないかと考えました。
【治療】
咽頭・喉頭の知覚の異常は、咽喉頭異常感症や咽喉頭過敏症・ヒステリー球などと言われ、症状があるにも関わらず、調べても異常がない状態を指します。
当院ではそのような知覚過敏症と考えられる方には、漢方による治療や神経に作用する薬による治療を行っております。
<治療内容>
今回は副作用などが出にくい漢方を使用して治療を開始しました。
【経過】
治療を開始してしばらくは、あまり変化を感じなかったとのことでしたが、10日ほどするとのどについた感じが和らいだ感じがしてきて、2週間目の再診時には痰のへばりつき感が気にならない日も出てきたとのことでした。
そのまま漢方を継続してもらい、1か月ほど服用してもらうとほとんど症状はなくなったとのことで、症状が再燃したときに再度漢方を飲んで頂くことにして、今回は一旦終了としました。
咽喉頭異常感症(知覚過敏症)には治療のガイドラインなどはなく、また特別な特効薬などもなく、治療に難渋することもありますが、漢方が効果を出してくれる場合も多々あります。
のどの知覚過敏症に効果があるとされる漢方は種類が多く、初回のものが効かない場合でも種類を変えたり、組み合わせることで効果を得られることがあり、症状を見ながら使用していきます。
Case③ 40代 男性 食事中ののどや前胸部つまり感・降りて行かない感覚
【症状】
数か月ほど前から食事中に時々のどや胸のあたりがつまったり、下に降りて行かない感覚が出現。頻度が多くないので様子をみていましたが、最近頻度が増えてきたとのことで当院を来院されました。
【問診】
症状は食事中に毎回出るわけではなく、最初は2-3週間に1度くらい、最近は週に3-4回とのことでした。
食事の時以外は症状はほとんど感じないとのことで、食道病変による症状を考え胃カメラ(胃内視鏡)を行い状態を確認しました
【検査】
内視鏡では、アレルギーによる食道炎(好酸球性食道炎)を強く疑う所見を認めました。
確定診断のため生検を行い病理検査をしたところ、食道粘膜に多数の好酸球(アレルギーを起こしたときに出現する白血球の一種)を認め診断が確定しました。
【治療】
好酸球性食道炎とは食物によるアレルギー反応が主な原因と考えられていますが、調べてみてもアレルギーの元がはっきりとしないこともあります1)。
慢性的な炎症が起こることで食道の機能(蠕動して食事を胃に送る)が障害され、のどのつまり感や食事が降りて行かないような感覚が生じます。
アレルギー源が分かる場合は、アレルギーとなる食物を避けてもらうことが多いですが、わからない場合は薬物療法を行います。
今回のケースでもアレルギーの原因が特定できなかったため、投薬治療を行いました。
<治療内容>
1.制酸薬
好酸球性食道炎の約半数の方はプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる胃酸を抑える薬で改善すると言われており今回も使用しました。
2.漢方薬
アレルギーを抑える漢方薬も有効との報告があり、薬自体の副作用も少ないため今回はPPIと併用して使用しました。
【経過】
投薬を開始してから数日間は症状があったものの、8日目くらいからは症状が出る頻度が減ったような感じがして、1か月経過する頃には症状がほぼ出なくなったとのことでした。
ただ、好酸球性食道炎は薬物療法で症状が落ち着いた場合でも、やめてしまうと1年以内に半数以上の方が再発してしまうため、しばらく薬は継続して様子を見る方針としました。
今回は幸いPPIと漢方の併用が非常によく効いてくれましたが、改善が乏しい場合はステロイドや免疫抑制剤などのアレルギー反応を強く抑える薬を併用し治療するケースもあります。
※好酸球性食道炎の詳細はこちらもご参照ください。
参考文献:1) Ishimura Net al: Limited role of allergy testing in patients with eosinophilic gastrointestinal disorders. J Gastroenterol Hepatol 2013; 28; 1306-1313
【症状】
半年ほど前から「食べ物を食べると何となくのどのあたりにつまった感じ」を自覚しておられ、ここ最近は固形物を食べると吐いてしまうこともあるとのことで受診されました。
【診察】
訴えておられた症状の他に、体重が減ってきた・水分も通りにくい感じもする・熱いものがしみるなどの症状もあり、食道がんなどの悪性腫瘍の可能性も考えれ、直ちに胃カメラ(胃内視鏡)を行いました。
【検査】
内視鏡検査では上部食道に腫瘍を認め、病理検査で「食道がん」の診断でした。
食道がんが食道の内腔を圧迫し、食事の通り道を塞いでしまうことでつまり感が出ていた状態でした。
今回の場合は食道の上の方(上部食道)に腫瘍があったせいでのどのあたりのつまりとして自覚していたと考えられます。
【治療】
既に進行がんの状態であったので、食道外科の病院をご紹介させて頂き、同院で治療を行いました。
【経過】
幸いにも手術と放射線療法の組み合わせで治療することができ、その後は以前のように食事を摂ることが可能な状態にまで改善されています。
のどのつまり感は食道の悪性腫瘍(ガンや肉腫など)でも生じることがあります。
腫瘍性の病変の場合は進行性で放っておくと命を落とすこともあるため、症状がある場合はなるべく早期に胃カメラを受けてみることが大事になります。
【症状】
5-6年前から胸やけやげっぷ・のどの違和感を度々感じており、特に治療は受けずに様子を見ていましたが、ご家族から当院を勧められ受診されました。
【診察】
症状は食後に感じることが多いとのことで、症状と合わせて逆流性食道炎を疑いました。
胃内視鏡(胃カメラ)は一度も受けたことがないとのことで、まずは内視鏡を行いました。
【検査】
実際に内視鏡検査を行ったところ、やはり逆流性食道炎の所見を認めました。
【治療】
内視鏡上の炎症が中等度とやや目立つため、制酸剤や機能改善薬による内服治療を考えましたが、ご本人が「アレルギー体質なので、薬はなるべく飲みたくない」とのことで、まずは胃酸の分泌過多・逆流を抑えるための生活習慣の改善を行い、また、サプリであればご本人が抵抗がないとのことで、当院のオリジナルサプリi-katsuも飲んで頂き経過を見ることとしました。
※サプリは食品と同じ扱いであり通常は副作用が出ることがなく、長期の服用に関しても安全性が高いと考えられています。
<治療内容>
1.生活習慣指導
アルコールが好きで、ほぼ毎日飲んでおり、寝酒もするとのことで、休肝日をしっかりとつくること寝酒はやめることを徹底してもらいました。
※アルコール摂取により、胃酸分泌を促進させたり食道運動機能が低下し胃からの逆流が起こりやすくなります。
i-katsuの成分の一つであるLJ88は必要以上に胃酸を抑えることなく、過剰な部分の胃酸分泌抑制し、胃酸の状態を適正化してくれます。
また、麦芽や大根の種といった生薬は消化促進作用や胃腸の運動促進があり、胃酸の逆流を抑えてくれることが期待されます。
【経過】
2週間後の再診の際に状態を伺うと、症状は少しづつ良くなってきたが、まだ続いているとのことで、引き続き減酒とサプリを続けてみることとしまた。
さらに1か月後の再診時には症状がだいぶ軽くなり、食後のげっぷが少し気になる程度まで改善し、3か月後の再診時には症状はほとんど良くなっていました。
アルコールは引き続き休肝日を作ることと寝酒をやめることを続けて頂き、ご本人がサプリは続けたいとのことで続けてもらい、6か月後に経過チェックのため内視鏡を再検しました。
内視鏡上は炎症はかなり改善しており、ほぼ傷痕になっている状態でした。
そして、1年後の内視鏡検査では炎症は改善しており、症状の再燃もなく、現在も節度ある飲酒とサプリを続けています。
関連ページ:
・ 逆流性食道炎
【症状】
数年前から食事が詰まるような感じを自覚しており、1年ほど前から悪化。のどから胸のあたりに食事が詰まって降りて行かない感じが強くなり、たまに嘔吐してしまうこともあり、医療機関を数軒受診し、内視鏡検査(胃カメラ)も2回ほど受けましたが異常なしとの診断でした。ストレスによるもと言われ、薬を出されましたが、一向に改善しないとのことで当院を受診されました。
【問診】
症状が出るのは食事の時のみで、嚥下(ものを飲み込むこと)事態は問題なく、のどから下で詰まっているような状態とのことでした。
症状からは食道の通過障害などが疑われ、ご本人と相談し、再度胃カメラを行い状態を見てみることとしました。
【検査】
胃カメラを行うと、上部~下部食道に拡張を認め食道内に水分が貯留している状態で、胃と食道のつなぎ目に狭窄を認め、症状の原因と考えました。
内視鏡や生検でも悪性の所見はなく、食道アカラシアと診断しました。
食道アカラシアとは、胃と食道のつなぎ目の括約筋が異常に収縮してしまい狭窄して通過障害を起こす病気です。
固形物が通りにくくなることで、つまり感が起こったり、実際に嘔吐してしまうなどの症状が出ます。
【治療】【経過】
アカラシアに対しては、異常に収縮した括約筋を内視鏡で切開するという治療があり、アカラシアを根本的に改善してくれます。
入院が必要となる治療のため、対応可能な高次医療機関に紹介し、治療を受けて頂きました。
治療後から症状は速やかに消失し、現在もつまり感などは一切感じない状態となっておられます。
アカラシアは内視鏡で疑い、造影検査や食道の内圧測定などで確定診断をつけますが、比較的稀な疾患のため内視鏡医も遭遇する機会が少なく、今回のように複数の施設の内視鏡で気づかれずに見逃されているケースもあります。
内視鏡で異常がないと言われても症状が改善ない場合には、専門施設での内視鏡を受けることも重要です。
関連ページ:食道アカラシア
【症状】
2か月前から食事の際に食べたものを飲み込んだ時に降りていかないような感じのつかえ感・違和感がするとのことで来院されました。
【診察】
症状からすると咽頭や食道疾患の可能性があり、内視鏡検査(胃カメラ)検査を行うこととしました。
【検査】
内視鏡検査では咽頭に白斑を認め、咽頭カンジダ症と診断しました。
【治療】
カンジダ症はもともと口腔内や食道内にいる常在菌です。通常の状態だと内視鏡で視認はできませんが、繁殖しすると白斑として認識できます。
症状がなければ経過観察することもありますが、今回のようにつまり感などがあるケースでは投薬による治療を行います。
<治療内容>
カンジダ菌に効果のある抗真菌薬の服用。
【経過】
薬を飲み始めて4-5日目からつかえ感の症状は和らぎ、2週間後の再診の際には症状はすっかり改善したとのことでした。
カンジダ症は診断がつけば投薬にて改善することがほとんどなので、今回のように嚥下時の飲み込みにくさなどの症状があるときはカンジダを疑い内視鏡検査を行うことが重要です。
【症状】
4日ほど前から食べ物が突然のどの下のあたりで詰まるようになったとのことで来院されました。
【診察】
飲み込み自体は問題なく、飲み込んだ後にのどの下に詰まる感じがするとのことで何らかの食道疾患を考え内視鏡検査(胃カメラ)検査を行うこととしました。
【検査】
内視鏡検査では食道に潰瘍を認め症状の原因と判断しました。
潰瘍部分の通過時の刺激や実際に潰瘍部分に食べ物がひっかかてしまい症状を引き起こしていると考えます。
【治療】
詳しく話を聞くと、症状が出る前日に美容サプリを少量の水で飲んで少し詰まったような感じがあったが気にせずに就寝してしまったとのことで、食道にサプリが停留してしまい粘膜に傷害を与えて潰瘍化してしまったと考えられます。
このような潰瘍に対しては粘膜保護剤などの投薬と、潰瘍部分を刺激しないように熱い物や辛い物などの摂食を控えて頂き経過を見ます。
<治療内容>
潰瘍に対しての投薬治療、刺激物やアルコールを避ける
【経過】
治療を行って3日目くらいから症状が徐々に改善し、1週間後の再診の際にはほとんど感じない状態まで改善していたとのことでした。
突然始まるのどや胸のつまりの症状は病気のことも多く、診断がつけば速やかに治療ができるため早めに医療機関を受診し胃カメラなどの検査を受けることが重要です。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
■関連ページ■
・食道がん