繰り返す胃痛の原因はピロリ菌?胃カメラで萎縮性胃炎が見つかった実例
公開日:2023年10月9日 更新日:2026年4月30日
胃痛を何度も繰り返していると、「胃炎かな」「ストレスかな」「市販薬で様子を見れば大丈夫かな」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、胃痛の原因は一つではありません。
胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、ピロリ菌感染、まれに胃がんなど、さまざまな病気が関係していることがあります。
今回は、週に1〜2回の胃痛を繰り返していた30代男性の方で、胃カメラでピロリ菌感染による萎縮性胃炎が見つかり、除菌治療後に胃痛が改善した実際の治療例を専門医の院長が分かりやすく解説します。
繰り返す胃痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
巣鴨駅前胃腸内科ではWEB予約・電話予約を受け付けております。
胃痛でお困りの方は是非ご相談ください。
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
繰り返す胃痛を起こす主な原因
胃痛を繰り返す場合、原因は「胃酸が多い」「ストレス」だけとは限りません。
痛みの場所、食事との関係、痛む時間帯、吐き気、黒色便、体重減少、貧血の有無などを確認しながら、必要に応じて胃カメラや腹部エコーなどで原因を調べます。
- 急性胃炎・慢性胃炎:胃の粘膜に炎症が起こり、胃痛や胃もたれを感じることがあります。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:みぞおちの痛み、空腹時痛、食後の痛み、黒色便などがみられることがあります。
- ピロリ菌感染・萎縮性胃炎:慢性的な胃炎の原因となり、胃痛や胃もたれの背景にあることがあります【1】【2】。
- 逆流性食道炎:胸やけだけでなく、みぞおちの痛みとして感じることがあります。
- 機能性ディスペプシア:胃カメラで大きな異常がなくても、胃痛、胃もたれ、早期満腹感などが続く病態です【4】。
- 胃がん:初期には無症状のこともありますが、胃痛、食欲不振、体重減少などをきっかけに見つかることがあります。
関連ページ
ピロリ菌・萎縮性胃炎とは?
ピロリ菌は、胃の粘膜に感染する細菌です。感染が長く続くと、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こり、胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」につながることがあります【1】【3】。
萎縮性胃炎がある方では、胃痛、胃もたれ、胃の張り、食欲不振などの症状が出ることがあります。一方で、症状がほとんどないまま胃カメラで初めて指摘される方もいます。
また、ピロリ菌感染は胃炎や胃潰瘍だけでなく、胃がんリスクとも関係します【1】【3】。
ピロリ菌が見つかった場合は、胃の状態を確認したうえで除菌治療を行い、除菌後も必要に応じて定期的な胃カメラを続けることが大切です。
実際の治療例|30代男性:週に1〜2回の胃痛を繰り返す
症状
以前から週に1〜2回ほど胃痛を繰り返しており、「原因を一度しっかり調べたい」とのことで来院されました。
診察・鑑別
診察では、胃痛の部位、痛みが出るタイミング、食事との関係、吐き気、胸やけ、体重減少、黒色便、服用中の薬、過去のピロリ菌検査歴などを確認しました。
繰り返す胃痛では、以下のような病気を鑑別する必要があります。
- 胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- ピロリ菌感染による萎縮性胃炎
- 逆流性食道炎
- 機能性ディスペプシア
- 胆石・胆のう炎
- 膵炎など膵臓の病気
- 胃がん
今回の方は、胃痛を繰り返していたことから、腹部エコーと胃カメラで状態を確認する方針としました。
検査
腹部エコー
胆のう・膵臓に異常なし
胃カメラ
胃潰瘍・胃がんは認めず、ピロリ菌による萎縮性胃炎を確認

治療
ピロリ菌による萎縮性胃炎があると、胃痛、胃もたれ、胃の張りなどの慢性的な胃症状が出ることがあります。
今回の方では、ピロリ菌感染が確認されたため、ピロリ菌の除菌治療を行う方針としました。
治療内容
- 胃酸を抑える薬
- 抗菌薬2種類
- 上記を組み合わせたピロリ菌除菌薬
除菌治療後は、一定期間をあけて呼気検査でピロリ菌が除菌できているかを確認します。
経過
除菌薬を飲み終わってからしばらくすると、胃痛を感じる頻度が少しずつ減少しました。
服用から約1か月後に呼気検査で除菌判定を行ったところ、ピロリ菌は無事に除菌できていました。
そのころには胃痛の頻度はかなり減っていたため、いったんご自身で経過を見ていただくことにしました。
その後、除菌から1年が経過し、胃カメラの再検査に来られた際には、胃痛はほぼ消失しており、日常生活も快適に過ごされているとのことでした。
再検査の胃カメラでも胃がんの発生は認めませんでした。今後も、萎縮性胃炎があるため、定期的な胃カメラを続ける方針としています。
胃痛がある方は、必ずピロリ菌が原因ですか?
胃痛や胃の張りなどの症状は、ピロリ菌以外の病気でも起こります。そのため、胃痛があるからといって、必ずピロリ菌が原因とは限りません。
ただし、ピロリ菌に感染している方では、除菌治療によって胃痛や胃もたれが改善することがあります。慢性的な胃の症状がある方は、一度ピロリ菌感染の有無を調べることが大切です。
院長コメント
繰り返す胃痛は、胃潰瘍や胃がんなどの明らかな病気が隠れている場合もあれば、胃カメラでは大きな異常がなく、機能性ディスペプシアとして治療する場合もあります。
今回の方は、胃カメラで胃潰瘍や胃がんは認めませんでしたが、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が見つかりました。除菌治療後に胃痛が改善したことから、ピロリ菌感染が症状に関係していた可能性があります。
大切なのは、「胃痛=ストレス」と決めつけないことです。
特に、胃痛を繰り返す方、ピロリ菌を調べたことがない方、家族に胃がんの方がいる方は、一度胃カメラで胃の状態を確認することをおすすめします。
胃痛がある時の受診の目安
以下のような症状がある場合は、早めに消化器内科へご相談ください。
- 胃痛を何度も繰り返している
- 市販の胃薬を飲んでも症状が続く
- 胃もたれ、吐き気、食欲不振を伴う
- 黒色便が出る
- 体重が減ってきた
- 貧血を指摘された
- 家族に胃がんの方がいる
- ピロリ菌を調べたことがない
- 以前ピロリ菌を除菌したが、その後胃カメラを受けていない
胃痛・ピロリ菌・胃カメラのご相談はこちら
巣鴨駅前胃腸内科クリニックでは、胃痛の診察、胃カメラ、ピロリ菌検査・除菌治療に対応しています。
鎮静剤による無痛胃カメラも行っております。お困りの方は是非ご相談ください。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
よくある質問
Q. 繰り返す胃痛の原因はピロリ菌ですか?
繰り返す胃痛の原因が必ずピロリ菌とは限りません。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胆のうや膵臓の病気など、さまざまな原因があります。ただし、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎が胃痛の背景にあることもあるため、症状が続く場合は胃カメラやピロリ菌検査で確認することが大切です。
Q. ピロリ菌がいると胃痛が出ますか?
ピロリ菌に感染していても症状がない方は多くいます。一方で、ピロリ菌による慢性的な胃炎や萎縮性胃炎があると、胃痛、胃もたれ、胃の張り、食欲不振などを感じることがあります。症状だけでは判断できないため、検査で確認することが重要です。
Q. 胃カメラで異常がなければ安心ですか?
胃カメラで胃潰瘍や胃がんなどの大きな異常がないことは重要な確認になります。ただし、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなどが関係していることもあります。症状が続く場合は、ピロリ菌検査や治療方針の見直しが必要です。
Q. 萎縮性胃炎とは何ですか?
萎縮性胃炎とは、胃の粘膜に慢性的な炎症が続き、胃の粘膜が薄くなった状態です。ピロリ菌感染が関係していることが多く、胃痛や胃もたれの原因になることがあります。また、萎縮性胃炎がある方では胃がんリスクも考える必要があるため、定期的な胃カメラが大切です。
Q. ピロリ菌を除菌すると胃痛は治りますか?
ピロリ菌除菌によって胃痛や胃もたれが改善する方はいます。ただし、すべての胃痛が除菌だけで治るわけではありません。胃痛の原因が機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、胆のう・膵臓の病気など別にある場合は、別の治療が必要になります。
Q. ピロリ菌の除菌治療はどのように行いますか?
一般的には、胃酸を抑える薬と2種類の抗菌薬を組み合わせた除菌薬を一定期間内服します。治療後は、ピロリ菌が本当に除菌できたかを確認するために、尿素呼気試験などで除菌判定を行います。
Q. ピロリ菌を除菌したら胃がんの心配はなくなりますか?
ピロリ菌を除菌することで胃がんリスクの低下が期待されますが、リスクが完全にゼロになるわけではありません。特に萎縮性胃炎がある方では、除菌後も胃がんが見つかることがあります。そのため、除菌後も定期的な胃カメラで経過を確認することが大切です。
Q. 胃痛がある場合、すぐ胃カメラを受けた方がいいですか?
胃痛が一時的で軽い場合は経過をみることもありますが、胃痛を繰り返す、胃薬で改善しない、黒色便がある、体重が減る、貧血がある、食欲不振が続く場合は胃カメラを検討します。胃潰瘍や胃がんなどを見逃さないためにも、症状が続く場合は受診をおすすめします。
Q. 若い人でもピロリ菌や萎縮性胃炎はありますか?
はい、若い方でもピロリ菌感染や萎縮性胃炎が見つかることがあります。30代や40代でも、胃痛、胃もたれ、家族歴、健診での指摘などをきっかけに検査を受けて判明することがあります。年齢だけで安心せず、症状が続く場合は検査をご相談ください。
Q. 胃痛があるとき、市販薬で様子を見てもよいですか?
一時的な胃痛であれば市販薬で改善することもあります。ただし、胃痛を繰り返す、症状が長引く、薬をやめると再発する、黒色便や体重減少を伴う場合は、自己判断で様子を見続けずに医療機関で原因を確認することが大切です。
まとめ
繰り返す胃痛は、ストレスや一時的な胃炎だけでなく、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎が関係していることがあります。
✔ 胃痛を繰り返す場合は、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃がんなどを考える必要があります。
✔ ピロリ菌感染があると、萎縮性胃炎を起こし、胃痛や胃もたれの背景になることがあります。
✔ 胃カメラで胃潰瘍や胃がんがないか確認することは重要です。
✔ ピロリ菌が確認された場合、除菌治療で症状が改善することがあります。
✔ 除菌後も胃がんリスクが完全になくなるわけではないため、定期的な胃カメラが大切です。
関連ページ
参考文献
- 日本ヘリコバクター学会:H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版
https://www.jshr.jp/citizen/info/guideline.html - American College of Gastroenterology. ACG Guideline on Treatment of Helicobacter pylori Infection, 2024
https://gi.org/journals-publications/ebgi/schoenfeld_sep2024/ - MSDマニュアル家庭版:ヘリコバクター・ピロリ感染症
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ - 日本消化器病学会:機能性ディスペプシアガイド 2023
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/fd_2023.pdf - 日本消化器病学会:機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/fd.html
文責:神谷雄介 院長(消化器内科・内視鏡専門医)
