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実際の治療例 “下腹痛と発熱(大腸憩室炎)”

[2023.10.09]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

50代 女性 下腹痛と発熱

【症状】

2日前から左の下腹部に違和感が出てきていましたが、寝れば治るだろうと思い、そのまま様子をみておられました。

ところが、翌日も違和感は取れておらず、次第にチクチクとした痛みに変わってきました。

病院に行こうか迷っておられましたが、日中に予定があるため受診出来ずにその日も様子を見られていました。しかし夜中になり痛みが強くなり、37度台の微熱も出てきたとのことで、朝になって当院を受診されました。

 

【診察・検査】

診察では、痛みが左下腹部に限局しており、以前に大腸カメラを受けて大腸憩室を指摘されていたとのことで、大腸憩室炎を疑いました。

エコーを行うと、痛みの場所に一致してS状結腸の憩室(図:赤部分)と周囲の大腸の壁の肥厚(図:水色部分)が描出されました。

憩室症例図

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血液検査でも軽度の炎症反応が認められたことから、大腸憩室炎と診断しました。

 

【治療】

憩室炎は重症の場合は入院して様子を見ることもありますが、今回はエコー所見・血液検査ともに軽症であったので外来で治療を行うこととしました。

■治療内容■

①抗生剤

外来にて抗生剤の点滴を行い、内服薬の抗生剤を飲んで頂きました。

②食事制限

腸管を安静にし憩室部分に便による圧がかからないように、お食事は水分やスポーツドリンク、ゼリーやプリンなどの流動形のものの摂取にとどめてもらいました。

また、炎症と戦うための栄養を補うために抗生剤と同時に栄養剤の点滴も行いました。

 

【経過】

憩室炎が悪化してないかどうかの経過をみるため、翌日にクリニックを再診して頂いたところ、腹痛はだいぶ改善してきており、血液検査での炎症反応も低下してきていました。

このままの治療方針で憩室炎の改善が見込める状態と判断し、食事は2-3日おかゆやうどんなどの柔らかいものを食べて頂くようにし、抗生剤の内服で治療を継続とし、4日後に再診としました。

再診時には腹痛の症状はすっかりなくなっており、血液検査・エコーの所見とも改善しており、憩室炎の治療は終了となりました。

 

今回の方は比較的早期に受診して頂いたため、幸いにも憩室炎が悪化せずに外来通院で完治することが出来ました。

このように憩室炎は早期に治療を開始することが重要ですので、当院では大腸カメラで憩室を指摘された方や憩室炎の既往がある方には、腹痛や発熱などの症状があるときにはすぐに来院してもらうようにお伝えしております。

ただ、憩室炎は悪化すると穿孔といって腸が破れてしまい腹膜炎という重篤な状態に陥り緊急手術になったりするケースもあるので、炎症が強い場合や腹痛が強い場合には入院して慎重に経過を見る必要があります。

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

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