実際の治療例 “食事中の喉や胸のつまり感が続く”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
40代 男性 食事中ののどや前胸部つまり感・降りて行かない感覚
【症状】
数か月ほど前から食事中に時々のどや胸のあたりがつまったり、下に降りて行かない感覚が出現。頻度が多くないので様子をみていましたが、最近頻度が増えてきたとのことで当院を来院されました。
【問診】
症状は食事中に毎回出るわけではなく、最初は2-3週間に1度くらい、最近は週に3-4回とのことでした。
食事の時以外は症状はほとんど感じないとのことで、食道病変による症状を考え胃カメラ(胃内視鏡)を行い状態を確認しました
【検査】
内視鏡では、アレルギーによる食道炎(好酸球性食道炎)を強く疑う所見を認めました。
確定診断のため生検を行い病理検査をしたところ、食道粘膜に多数の好酸球(アレルギーを起こしたときに出現する白血球の一種)を認め、好酸球性食道炎の診断が確定しました。
関連ページ:胃内視鏡(胃カメラ) 好酸球性食道炎
【治療】
好酸球性食道炎とは食物によるアレルギー反応が主な原因と考えられていますが、調べてみてもアレルギーの元がはっきりとしないこともあります1)。
慢性的な炎症が起こることで食道の機能(蠕動して食事を胃に送る)が障害され、のどのつまり感や食事が降りて行かないような感覚が生じます。
アレルギー源が分かる場合は、アレルギーとなる食物を避けてもらうことが多いですが、わからない場合は薬物療法を行います。
今回のケースでもアレルギーの原因が特定できなかったため、投薬治療を行いました。
<治療内容>
1.制酸薬
好酸球性食道炎の約半数の方はプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる胃酸を抑える薬で改善すると言われており今回も使用しました。
2.漢方薬
アレルギーを抑える漢方薬も有効との報告があり、薬自体の副作用も少ないため今回はPPIと併用して使用しました。
【経過】
投薬を開始してから数日間は症状があったものの、8日目くらいからは症状が出る頻度が減ったような感じがして、1か月経過する頃には症状がほぼ出なくなったとのことでした。
ただ、好酸球性食道炎は薬物療法で症状が落ち着いた場合でも、やめてしまうと1年以内に半数以上の方が再発してしまうため、しばらく薬は継続して様子を見る方針としました。
今回は幸いPPIと漢方の併用が非常によく効いてくれましたが、改善が乏しい場合はステロイドや免疫抑制剤などのアレルギー反応を強く抑える薬を併用し治療するケースもあります。
参考文献:1) Ishimura Net al: Limited role of allergy testing in patients with eosinophilic gastrointestinal disorders. J Gastroenterol Hepatol 2013; 28; 1306-1313
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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