患者さんからの質問 ”食道がんの原因と予防法を教えてください”
がんの予防とは?
「予防」と聞くと、“がんにならないようにすること”と考えてしまいがちですが、実はそれだけが予防ではありません。
実はがんの予防には「一次予防」と「二次予防」の2つがあります。
- 一次予防:生活習慣や生活環境の改善により癌のリスクを減らすこと
- 二次予防:早期発見・早期治療によって癌による死亡を減らすこと
いわゆる「予防」として言われている、がんにならないようにするような生活習慣つくり(一次予防)は非常に重要ですが、
一次予防には限界がありどんなに健康的な生活を送ってがんのリスクを減らしても、決してがんにならないという保証はありません。
ですからしっかりと一次予防をしつつも、がんで命をおとさないための早期発見(二次予防)を合わせておこなっていくことが、がんの予防には重要なのです。
食道がんのリスクは?
「飲酒(特に顔が赤くなる方)」「喫煙者」要注意!
食道がんのリスクについて、医学的データのあるものをまとめてみました。
リスクを確実に上げるものとしては、「喫煙」、「飲酒」があり、2つが相乗的に作用してリスクを上げることも指摘されています。
特に、飲酒後すぐに顔が赤くなる方は、少量飲酒の場合健常人と比較して8.84倍の食道癌発ガンリスクがあり、3合以上飲酒した場合はなんと114倍の発ガンリスクがあるとの報告もあります。
また、逆に喫煙や飲酒の習慣がない人は食道がんになることはほとんどありません。
※なぜお酒で顔が赤くなると食道がんのリスクが高いの??
お酒をのんですぐに顔が赤くなる方は、アルコールの分解能力が低く、分解される過程で発生するアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすい体質だということを意味します。
このアセトアルデヒドが、顔が赤くなる・頭痛・吐き気といった症状や二日酔いを引き起こし、さらに発がん物質にもなるため、分解できずに体内に蓄積されるとがんのリスクが上がってしまうのです。
食道がんの予防法は?
前述の食道がんのリスクを念頭に、食道がんになりにくくなるような生活習慣;禁酒・禁煙を徹底・野菜・果物の摂取することで食道がんの「一次予防」はかなり期待ができるのですが、
嗜好品であるお酒・たばこを完全にやめるのは簡単ではありません。
ですから、なるべくリスクを減らすための努力をしつつ、食道がんのリスクを評価し早期発見を行う二次予防が大切になってきます。
食道がんは年間約19000人の方に見つかり、そのうち6割強に当たる約12000人の方が亡くなる非常に恐ろしい病気です。
病気の発症者数に対しての死亡者数の割合が6割と高くなっている理由としては、食道の壁が薄いため浸潤・転移し易くがんの進行が早いという特徴のためですが、
ただ、表面にとどまっている表在がんの場合は胃カメラで根治することが可能なため、食道がんのリスクのある方は定期的(半年~1年毎)な胃カメラを受けることを勧めています。
ひと昔前までは、胃カメラでも食道表在がんを見つけるのが困難だった時代もありましたが、現在はハイビジョン胃カメラが登場したり、NBIと呼ばれる色調を変化させる観察法などの技術が進み、かなり早期の表在がんでも発見が出来るようになってきました。
当院でもオリンパスの第二世代NBIを搭載した次世代内視鏡システムEVIS-X1とUltra HDの4Kモニター・高解像度胃カメラを採用し、通常の胃カメラや第一世代NBIではわかりにくい超早期のがんでも発見することが可能となっています。
さらに胃カメラでは、通常の食道がんとはやや異なるバレット腺がんと呼ばれる胃と食道のつなぎ目に出来る食道がんの観察をすることもできます。(詳しくは、バレット食道・食道がんをご参照ください。)
また、食道がんと咽頭がんのリスクは共通することが多く、実際に食道がんの方の2-3割程度に咽頭がんも併発していることが報告されています。ですので、食道がんのハイリスクの方は、咽頭の観察もより念入りに行います。
このように、リスクを評価し胃カメラを定期的に行えば、がんを早期発見することが出来、食道がんで命を落とす危険性はかなり改善できると思われます。
<まとめ>
食道がんの予防:喫煙・飲酒の習慣の改善+リスク評価+定期的胃カメラ
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