実際の治療例【急激な腹痛➡下痢を繰り返している】反復性の虚血性腸炎とは?
「突然お腹が痛くなり、その後に下痢や血便を繰り返す…」
そんな症状に悩んでいませんか?
一見すると胃腸炎のように思える症状でも、実は 「反復性の虚血性腸炎」 という病気が隠れていることがあります。
今回は、当院で診断・治療を行った実際の患者さんのケースをもとに、症状のきっかけ、検査の内容、治療経過を詳しく解説します。
症例|50代女性「急激な腹痛と下痢を繰り返している」
【症状】
数年前から突然強い下腹部痛が出現し、その後に下痢や、時に血便を伴うことを繰り返していました。
近医では「急性胃腸炎」と診断されその度に整腸剤を処方されましたが、今回も同様の症状が起こり、あまりに繰り返すため当院を受診されました。
【診察】
繰り返す腹痛と下痢の経過からは、感染性胃腸炎以外に 虚血性腸炎 の可能性が考えられました。
【検査】
腹部エコーにて下降結腸の壁の7㎜大の肥厚を認め、「虚血性腸炎」と診断しました。
腹部エコーの画像所見
下降結腸の壁が炎症によって7㎜大と肥厚しています。(クリックで拡大)
【虚血性腸炎とは?】
虚血性腸炎は、大腸の血流が一時的に悪くなることで腸の粘膜に炎症や潰瘍が起こる病気です。
突然起こる腹痛・下痢・血便が特徴的で左側の下行結腸やS状結腸が好発部位といわれています。
【治療・経過】
急性期の症状に対して、食事療法と安静にて経過観察
症状自体は3日ほどで改善。
以前から度々繰り返しているとのことで反復性虚血性腸炎と考えました。
反復性虚血性腸炎とは?
通常の虚血性腸炎は一過性で改善することが多いですが、中には 再発を繰り返すタイプ が存在します。
再発の背景には以下の要因が関与すると考えられています:
1. 血流の問題
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動脈硬化:高齢者に多く、腸への血流が慢性的に減少する。
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微小循環障害:糖尿病や高血圧などによる血管障害。
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動脈攣縮:自律神経の不均衡や薬剤による血管収縮。
2. 腸管側の要因
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便秘・硬便:腸管内圧の急激な上昇により血流が途絶しやすい。
- 腫瘍:大腸の内腔を圧迫して腸管内圧の上昇を招く
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過敏性腸症候群 (IBS) との関連:腸管運動異常により腸壁の虚血が起こりやすくなることがある。
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大腸憩室や手術後の癒着・腸管の伸展異常など:腸管の通過障害や血流不全を助長。【1】【2】
3. 全身的要因
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低血圧・脱水:水分不足や降圧薬の影響。
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抗血小板薬や抗凝固薬:血流改善の一方で粘膜脆弱性を増し、炎症や再発を招くことがある。
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心疾患(心房細動・心不全):腸管血流の変動が起こりやすい。
【大腸内視鏡】
反復性虚血性腸炎大腸の原因となる大腸の器質的な異常(腫瘍や通過障害がないか)の確認のため大腸内視鏡を施行。
炎症自体は改善していたものの、直腸からS状結腸にかけて癒着と伸展不良を認め、腸管内圧が上昇しやすい状態であり、
虚血性腸炎を繰り返す要因と考えました。
大腸内視鏡の画像所見
S状結腸は癒着によって硬化してスコープの通過に抵抗があり、送気をしても膨らみが悪い状態でした
【予防】
再発予防には、癒着と伸展不良による腸管内圧上昇を防ぐ必要があり以下の治療を行いました。
・腸管運動賦活薬:腸管の動きを上げ、伸展不良部に圧がかかるのを防ぎます
・食事内容の指導:低フォドマップ食を導入し、内圧の上昇を起こりにくい食生活にしました。
便秘改善を目的に食物繊維の摂取・水分補給・緩下剤の調整を行い、定期的に腸の状態をチェックしています。
在は大きな再発なく経過観察中です。
患者さんからも、
「最初はただの胃腸炎だと思い込んでいましたが、何度も繰り返すので不安で仕方ありませんでした。
検査で原因がはっきりし、今は食事や生活習慣を意識して過ごせています。安心して相談できて本当に良かったです。」とのお声を頂きました。
院長からのコメント
虚血性腸炎は一度きりの発症で済むことも多いですが、今回のように繰り返すケースでは 大腸カメラで正確に診断することが非常に重要 です。
便秘や動脈硬化など生活習慣に関わる因子を見直すことで再発を予防できる可能性があります。繰り返す腹痛や下痢にお悩みの方は早めの受診をお勧めします。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
まとめ
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急激な腹痛と下痢を繰り返す場合、反復性の虚血性腸炎 が原因のことがある
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便秘や動脈硬化、腸管の内圧上昇がリスク要因
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大腸カメラで腸管の状態を正確に知ることや基礎疾患のコントロールが必要
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予防には便通コントロールや生活習慣改善が重要
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よくある質問FAQ
Q1. 虚血性腸炎は自然に治りますか?
A:一過性の場合は自然に軽快することもありますが、繰り返す場合は基礎に便秘や血流障害があるため、医療機関での検査が必要です。
Q2. 再発予防には何が効果的ですか?
A: 食物繊維や水分をしっかり摂る、低フォドマップ食、過度な便秘を避ける、動脈硬化のリスク管理(高血圧・糖尿病の治療など)が重要です。
Q3. 大腸カメラは必ず必要ですか?
A:診断の確定と、他の病気(大腸がんや炎症性腸疾患)との鑑別のために必要となります。
Q4. 放置するとどうなりますか?
A:腸の炎症や潰瘍が悪化し、穿孔や出血のリスクがあります。再発を繰り返すと慢性化することもあるため注意が必要です。
関連ページ
▶ [大腸カメラについて詳しくはこちら]
▶ [虚血性腸炎の解説ページ]
▶ [胃痛・腹痛外来]
参考文献
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長廻 紘. 虚血性腸炎の病態と診断. 臨床消化器内科. 2018.
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Habu Y, et al. Recurrent ischemic colitis: clinical and endoscopic features. J Gastroenterol. 2001
医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。
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文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介
(消化器学会・内視鏡学会専門医)
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