お腹の張りが続く…原因は?受けるべき検査を専門医が実例を含めて解説
「お腹が張る」「ガスがたまって苦しい」「スカートやズボンがきつく感じる」——
このような症状が続くとき、「年のせいかな」と思ってしまう方も多いですが、実は内臓の病気のサインであることも少なくありません。
お腹の張り(腹満)は、消化管のガス・便秘・炎症・腫瘍・腹水などさまざまな原因で起こるため、適切な検査で原因を見極めることが大切です。
この記事では、実際の診療現場で行う「お腹の張りに対する検査」について、分かりやすく解説します。
巣鴨駅前胃腸内科ではWEB予約・電話予約を受け付けております。お腹の張りでお困りの方は是非ご相談ください。
🔹お腹の張りの主な原因
お腹の張りの原因は大きく分けて、次の5つに分類されます。
| 原因 | 代表的な疾患 |
|---|---|
| 消化管内のガス貯留 | 過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、呑気症 |
| 便の貯留 | 慢性便秘、腸閉塞 |
| 炎症や感染 | 腸炎、胆嚢炎、虫垂炎 |
| 腫瘍による圧迫 | 大腸がん、卵巣腫瘍 |
| 腹水貯留 | 肝硬変、悪性腫瘍、心不全 |
特に慢性的にお腹の張りが続く場合は、肝臓や腸の病気が隠れていることもあるため、自己判断せずに医療機関で検査を受けましょう。
🔹診察での流れ
1. 問診・視診・触診
最初に、症状の経過・食事内容・排便の状態などを確認します。
その上でお腹を触診し、圧痛(押すと痛む部位)や腫瘤(しこり)、腹水の有無を確認します。
2. 鑑別疾患の確認
お腹の張りの際に考えられる主な疾患として以下のようなものがあります。
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過敏性腸症候群(IBS)
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機能性ディスペプシア(FD)
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便秘症・大腸憩室炎
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肝硬変・腹水
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卵巣嚢腫・子宮筋腫
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消化管腫瘍(胃がん・大腸がんなど)
🔹実際に行う検査
① 腹部エコー(超音波検査)
最も一般的で負担の少ない検査です。肝臓・胆のう・すい臓・腸管・腹水などを確認できます。
肝硬変や腹水、腫瘍などが原因の場合、この検査で異常が分かることもあります。
👉 当院ではその日のうちに腹部エコーが可能です。
▶関連ページ:エコー検査について
② 血液検査
肝臓・腎臓・膵臓の機能、炎症反応、貧血などを調べます。
例えば、肝硬変では「AST・ALT・アルブミン・プロトロンビン時間」などに異常が見られます。
③ 腹部レントゲン
腸内ガスの状態や便の貯留を確認します。腸閉塞や便秘症の判断にも有用です。
④ CT検査
腹部全体を立体的に評価できるため、腫瘍・腹水・炎症の範囲を詳しく把握できます。
必要に応じて造影剤を用いることでより正確な診断が可能です。
⑤ 胃カメラ・大腸カメラ
胃や大腸の粘膜面を直接観察することで、がんやポリープ、炎症の有無を確認できます。
腹部膨満の原因として腫瘍や狭窄が疑われる場合には必須の検査です。
🔹お腹の張りが続くときの注意点
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症状が数日〜数週間続く
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体重減少や食欲不振を伴う
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黄疸・むくみ・便通異常を伴う
これらの症状がある場合は、重大な疾患の可能性があるため早めの受診が必要です。
「そのうち治るだろう」と様子を見るよりも、原因を早期に特定して適切な治療を受けることが大切です。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
🔹実際の治療例
60代 男性 お腹が張った状態が治らない
【症状】
3か月ほど前からお腹が張りを自覚。どんどん張りが悪化し、当院を受診されました。
【診察】
触診では腹部の緊満した張りを認め、腹水の貯留を疑い、腹部レントゲン・腹部エコーの検査を実施。
【検査】
腹部レントゲンでは異常ガスは認めませんでしたが、腹部エコーでは多量の腹水を認めました。
【治療】
血液検査では肝機能障害やたんぱく質の一種であるアルブミンの低下を認め、かなりの大酒家でありアルコール性肝硬変が一番に考えられました。
腹水が多量で日常生活に支障が出ている状態で入院治療が必要な状態であったため、高次医療機関にて治療を行ってもらうこととなりました。
【経過】
入院後の検査でアルコール性肝硬変との診断が確定し、禁酒・食事制限・投薬治療にて腹水はかなり減少し、1ヶ月後に退院されたとのことでした。肝硬変になると、肝がんのリスクが高くなりますが、現時点では幸いガンはなく、禁酒と投薬治療で肝臓の専門外来の通院を続けておられます。
【院長からのコメント】
腹部の張りの原因の一つに腹水があります。
腹水は今回のように肝硬変で出現したり、炎症やガンなどでも起こります。エコー検査で指摘できることが多く、お腹の張りを認めた場合にはエコー検査は非常に重要になってきます。
🔹まとめ
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お腹の張りの原因は多岐にわたる
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腹部エコー・血液検査・CT・内視鏡などで原因を特定
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慢性的に続く場合は肝硬変や腫瘍性疾患の可能性も
→ 原因を知る第一歩は「検査」です。
当院では、腹部エコー・胃カメラ・大腸カメラを同日に行うことも可能です。お気軽にご相談ください。
🔹よくある質問(FAQ)
Q1. お腹の張りはストレスでも起こりますか?
A1. はい。自律神経の乱れにより腸の動きが不安定になると、ガスがたまりやすくなります【1】。
Q2. 腹水があるとどんな症状が出ますか?
A2. 下腹部の膨満感や体重増加、息苦しさなどを伴うことがあります【2】。
Q3. 腹部エコーは痛みがありますか?
A3. ありません。ゼリーを塗ってプローブを当てるだけの安全な検査です【3】。
Q4. どの検査を受けるべきかわからないときは?
A4. まず腹部エコーと血液検査で全体をチェックするのがおすすめです。
Q5. 便秘が続くだけでも検査が必要ですか?
A5. はい。長期の便秘には大腸ポリープや腫瘍が隠れていることもあります【4】。
Q6. お腹の張りと肝臓の病気は関係ありますか?
A6. 肝硬変では腹水がたまり、張りを感じることがあります【5】。
Q7. 食事で気をつけることはありますか?
A7. 炭酸飲料や早食いを避け、食物繊維や発酵食品をバランスよく摂ると腸内ガスの軽減につながります【6】。
Q8. ガスが溜まりやすい人に共通する原因は?
A8. 早食い・会話中の嚥気・炭酸飲料・ストレス・腸内細菌バランスの乱れなどが挙げられます【7】。
Q9. 何日くらい続いたら病院に行くべきですか?
A9. 1週間以上お腹の張りが続く場合、あるいは食欲低下・体重減少を伴う場合は、早めの受診をおすすめします【8】。
Q10. 市販薬で改善しない場合はどうすればいいですか?
A10. 胃腸の動き以外に肝臓・すい臓・腫瘍性疾患などが関与している可能性があるため、専門医によるエコー・血液検査を受けて原因を明らかにしましょう【9】。
🔹関連ページリンク
医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
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🔹参考文献
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日本消化器病学会:「過敏性腸症候群の診療ガイドライン2023」
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日本肝臓学会:「肝硬変診療ガイドライン 2022」
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日本超音波医学会:「腹部エコー検査マニュアル」2023
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厚生労働省:「大腸がん検診ガイドライン 2023」
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国立がん研究センター「肝硬変・腹水の症状と治療」2023
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厚生労働省e-ヘルスネット「腸内環境を整える食事」
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田中雅之ほか.「機能性ディスペプシア・IBSにおけるガス症状」消化器病学会誌, 2022
-
日本消化器内視鏡学会:「腹部症状の初期対応指針」2021
-
日本消化器病学会:「慢性腹部膨満症の診断アルゴリズム」2022
文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介
(消化器学会・内視鏡学会専門医)
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
