便秘・下痢・血便・残便感などの、いわゆる「便通異常」の方は人口の10-20%いるとの報告があります。
原因は様々で、生活習慣やストレスからおこる過敏性腸症候群や、がんや炎症性腸疾患と呼ばれる腸の病気、中には甲状腺の病気などの内科疾患が隠れている場合もあります。
当クリニックでは、その原因をしっかりと調べ、患者さま一人ひとりの状態に合わせて治療を行っていきます。
症状がつらく悩んでおられる方は一度ご相談ください。
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下痢外来
下痢は水分量の多い便を頻回に来す状態と定義されています。
持続時間から急激に発症し2週間以内に消失する「急性下痢」と4週間以上持続する「慢性下痢」に分けられます。
◆機能異常
大腸は便中の水分を吸収して固形便を作るという機能を持っています。この機能に異常が起こると下痢を来します。
機能異常をきたす要因としては
- 過敏性腸症候群(ストレスや疲れなどによる腸の機能異常)
- 甲状腺機能亢進症(腸の動きをコントロールする自律神経の働きを乱します)
などがあります。
関連ページ:過敏性腸症候群
◆炎症
大腸粘膜に炎症が起こると、腸が浮腫み水分が吸収できなくなったり、粘膜から浸出液がにじみ下痢を起こします。
腸炎を起こす原因としては
- 感染性腸炎:急性下痢のことが多く、細菌やウイルスによる感染によって起こります。
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病):慢性下痢のことが多く、免疫異常によって引き起こされる腸の炎症です。
関連ページ:
・炎症性腸疾患外来
・感染性腸炎
◆薬剤性
薬のアレルギーや抗生剤による菌交代現象などによって引き起こされる下痢です。
直前の服用だけでなく、数日~2週間前の薬の服用でも起こることがあるため、服用歴の把握が重要になります。
代表的な薬剤には下記のようなものがあります。
・制酸剤
胃酸を抑える胃薬で逆流性食道炎や胃痛時に使用されます。
大腸の粘膜に薄い繊維の膜のようなものを形成し、水分の吸収を阻害し下痢を起こします。
・抗生剤
抗生剤は悪い細菌だけでなく、腸内の常在菌も攻撃してしまうことがあり、菌交代現象をおこして、腸内細菌のバランスが崩れて下痢を起こします。
また偽膜性腸炎という大腸炎を来して下痢を起こすこともあります。
・下剤の服用
下剤の量の調整がうまくいかないと下痢になります。
また胃薬の中には下剤の成分が入っているものなどもあり、ご自身では自覚がなく下剤を飲んでいる場合もあり、慢性的に下痢が続く場合は飲んでいる薬を見直す必要があります。
・抗うつ薬・抗精神病薬
精神・神経に作用する薬は腸の動きをコントロールする自律神経にも作用してしまうことが多く、腸管の機能を低下させ下痢を来すことがあります。
・抗がん剤
抗がん剤はがん細胞だけでなく正常粘膜を攻撃してしまうこともあり、腸の粘膜が炎症を起こし下痢を来したり、また腸の蠕動運動を亢進させて下痢を起こすことがあります。
◆低栄養・低たんぱく
栄養状態が悪くなると、アルブミンというたんぱく質が減少して腸管の粘膜が浮腫んでしまい水分の吸収が上手くいかなくなり下痢が起こります。
◆手術後
大腸や小腸の手術後は腸が短くなってしまうため、水分の吸収が上手くできず下痢になります。
また胆のう切除、胃・膵臓の手術後も下痢しやすくなります。
◆消化不良
吸収不良症候群や慢性膵炎などによって消化吸収が上手くいかなくなると下痢が引き起こされます。
◆大腸がん
大腸がんが進行して腸管の内腔を圧迫すると、便が通りにくくなってしまい下痢状の便となってしまいます。
関連ページ:大腸がん
◆生活習慣
アルコール他院や食べ過ぎによっておこる下痢もあります。
上記のように下痢は様々な疾患が原因で起こりますが、最も頻度が高いものは過敏性腸症候群で70-80%を占めると言われています。
まずはお話をしっかりと伺い、現在の下痢の状態や生活習慣などを確認することから始めます。
そのうえで、診断に必要な検査を行っていきます。
<問診>
下痢の性状や回数、腹痛の有無や食事内容やストレスの状態の確認します。
<血液検査>
下痢の原因となる内科疾患や内臓機能の数値を調べます。
体の外側から腸管の浮腫みなどの状態や、膵臓などの内臓の状態を確認します。
<便培養>
下痢の原因となる腸内細菌の増殖がないかを調べます。
直接粘膜の状態を見て、ガンや炎症性腸疾患などの病気がないかを確認します。
下痢の原因となる病気が見つかった場合は、まずその病気の治療を行います。
特に炎症性腸疾患は生涯を通して治療を要し、当院でも力を入れて専門的な治療に取り組んでおります。
病気などの原因がなく、ストレスや生活習慣に原因があると言われる過敏性腸症候群が考えられる場合には、患者さん一人一人の状況に合わせて治療を薬を行います。
同じ食生活や仕事をしていても下痢になる人とそうでない人がおり、病気の発症には体質が関わっている場合も多く、問診や診察を通してどの薬が効くかを見極め処方をしていきます。
また同時に改善すべき生活習慣を診察の中から探し出し、下痢にならない体質作りも行っていきます。
※下痢外来はご予約なしでも受診可能です。
便秘外来
※便秘外来は現在休止中です
便秘は一般的には
・「3日以上排便がない」
・「週2回以下の排便」
・「便が出づらいという自覚症状」
などを指すと言われていますが、明確に定義をするのは難しく、
・「いつもより便が出にくい」
・「排便に30分かかる」
・「残便感がある」
といった症状も広い意味で便秘と呼べます。
つまり一言に「便秘」と言っても症状は人それぞれであり、「便秘」だから「下剤を処方」では適切な治療とはいえません。
適切な治療をするためには、まずは「どういう便秘なのか」をしっかり把握し、そして「なぜ便秘になるのか」を考えていく必要があります。
2.便秘の原因は?
便秘の原因は様々で、大きく分類すると、
・大腸ガンなどの腫瘍や腸内の出来物による「器質的便秘」
・甲状腺などの病気に伴う「症候性便秘」
・抗うつ剤などによる「薬剤性便秘」
・主に生活習慣や体質に原因があるとされる「機能性便秘」 があります。
なかでも最も頻度が高いのが機能性便秘です。
原因となる生活習慣としては、
①不規則な食生活や過剰なダイエット
朝食を抜いたりすると、食べ物が胃に入ることで、便を出そうとする胃腸反射がおこらず、腸の動きがにぶり、便意が起こらなくなり、それが続くことで慢性的な便秘になります。
また、食物繊維の不足も腸の動きを鈍らせる一因となります。
②便意の我慢
便意をこらえすぎることで便意を感じなくなってしまい、便秘になってしまいます。
学校や仕事中などで、急にはトイレにいけない環境で我慢してしまうことなどが誘因となります。
③運動不足
体の適度な運動は腸の働きを促してくれます。デスクワークなどが続き体を動かす機会が少ない方は腸の動きが悪く便秘になりやすいです。
④ストレス
腸の動きは自律神経といって、意識しないでも勝手に動いてくれる神経が支配しています。
この自律神経はストレスに弱く、ストレスにより働きが乱れてしまうと、腸の働きも鈍くなり便秘になることがあります。
また、便秘は男性よりも女性の方に多いと言われますが、その理由の1つに腸の動きに女性ホルモンが関係していることがあげられます。
女性ホルモンの一つ、黄体ホルモンが多くなると、腸管の筋肉に作用し蠕動運動を抑制してしまいます。このため、黄体ホルモンが多くなる月経1週間前頃から毎回便秘になってしまう、という方もいらっしゃいます。
3.検査は?
なにはともあれ、現状の便通についてしっかりと把握することです。
そのためまず、しっかりと問診・診察し、その上で便秘の原因を調べるための検査を行います。
<問診>
便の性状、出方、腹痛の有無や食事内容・生活習慣などを確認します。
<血液検査>
便秘の原因となる甲状腺疾患などの有無を調べます。
体の外側から便やガスのたまり具合、腸管の浮腫みなどの状態を調べます。
粘膜の状態を見て、ガンや炎症性腸疾患などの病気がないかを調べます。
4.治療は?
便秘の原因となる病気が見つかった場合は、まずその病気の治療を行います。
例えば、甲状腺機能低下症に伴う症候性便秘の場合は、甲状腺の治療を行いながら必要に応じて投薬を考えます。
また、病気などの原因がなく、生活習慣に原因があるとされる機能性便秘などに対しては、「大腸遅延型」「直腸性」といったように便秘の状態をさらに細かく判断し、生活習慣の見直しや投薬などを行っていきます。
■生活習慣の改善■
①食事
規則正しい食生活
食物繊維の摂取:目標1日20g(管理栄養士と協力し食事指導も行っていきます。)
②適度な運動15分以上のウォーキング
③股関節~腰にかけてのストレッチ
■薬による治療■
生活習慣の改善と合わせて、患者様一人一人の便の性状や腸の動きに合わせて、薬を選択していきます。
当院では錠剤だけでなく、便秘の体質自体の改善ができ、かつ体への負担が少ない漢方薬を併用した治療を行っております。(もちろん保険診療です。)
下剤には錠剤・粉薬・漢方薬含めかなりの種類の薬がありますが、刺激を加えて出すタイプの薬だけだと便が下痢になったり腹痛が出たり、また長期に使用し続けると効果が出なくなることもあるため、腸の動きを改善する薬をベースに使用しながら、なるべく自然に近い排便環境を作っていき、最終的には最小限の投薬、出来ればお薬に 頼らない状態を目指します。
③の薬で腸の動きのリズムをつけながら、便の正常に合わせ②を併用したり、それでも便が出にくい時には①を頓服で服用します。
また女性の月経前に起こるような便秘については、黄体ホルモンによる腸の動きの抑制が関わっているため、周期に合わせ③の薬などを服用することで便通コントロールを行います。
直腸性便秘と診断された方には、座薬を併用しながら排便トレーニングを行い、自然に排便できるような治療を行います。
※便秘外来は現在休止中です
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