コラム“大腸カメラはどんな人が受けるべき?”
大腸カメラと聞くと「下剤が大変」「痛い」といったネガティブなイメージもあり、検査に抵抗がある方も多いかと思います。
当院では大腸カメラの際に、
- 前処置の下剤の工夫
- 内視鏡のエキスパートである専門医の院長が大腸カメラの検査実施
- 患者さんの大腸の状態に合わせてスコープの細さの調整
- お一人お一人に合わた鎮静剤を調整
などの工夫を行い、苦痛のない検査を受けて頂く体制を整えております。
大腸カメラは大腸がんの早期発見や症状の原因検索には非常に有効な検査であり、特に以下の4項目に該当する方には検査を受けることを強くお勧めします。
大腸カメラを受けた方がよい方
- 症状のある方
- 大腸がんのリスクのある方
- 大腸がん検診やドックで異常を指摘された方
- 35歳以上の方
1.症状のある方
大腸カメラを受けていただきたい症状として、便通異常(便秘・下痢・細くなったなど)や血便、慢性の腹痛などがあります。
これらの症状は実は病気のサインのことが多く、大腸カメラで大腸粘膜の状態を直接見ることで症状の原因を探り病気に合わせた治療を行うことができます。
代表的な症状
✅便通異常(便秘、下痢、またはその繰り返し)
✅便が細くなった
✅血便・下血、粘液便
✅お腹が張る
✅慢性の腹痛 など
2.大腸がんのリスクのある方
大腸がんは部位別のがん死亡率で男女ともに上位にくる疾患ですが、早期発見することでほぼ完全に治療することが可能になってきました。
※2020年の部位別がんの死亡率
|
1位 |
2位 |
3位 |
4位 |
5位 |
男性 |
肺 |
胃 |
大腸 |
膵臓 |
肝臓 |
女性 |
大腸 |
肺 |
膵臓 |
乳房 |
胃 |
男女計 |
肺 |
大腸 |
胃 |
膵臓 |
肝臓 |
※大腸がんは女性で1位、男性で3位となっています。
また、大腸がん自体ははポリープが大きくなりガン化するケースが大多数を占めるため、ポリープを切除することで将来的な大腸がんの予防につながります。
ですので、症状はなくともがんの早期発見・予防のため、特に下記のような大腸がんのリスクがある方は大腸カメラを1度は受けることが大切です。
大腸がんのリスク
- 家族や親族に大腸がん・大腸ポリープの患者さんがいる方
- 過去に大腸ポリープを切除したことがある方
- 肥満、高身長などの体格が良い方
- 飲酒が好きな方
- 赤肉(牛・豚・羊の肉)・加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)をよく食べる方
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
3.大腸がん検診やドックで異常を指摘された方
現在行われている大腸がん検診は検便を用いた便潜血検査ですが、陽性の方に大腸カメラを行うと3%程の方に実際に大腸がんが見つかっております。
がん以外にも、痔やポリープなどでも陽性が出てしまう検査ではあるのですが、実際に便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告もあり、やはり大腸カメラを受けることをお勧めしています。
またドックなどで行われている腫瘍マーカー・線虫検査などでもリスクありと判定された方は大腸カメラを受けられた方がよいと考えます。
■参考文献;Zorzi M et al Gut 2022;71(3):561-567 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
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4.35歳以上の方
大腸がんのほとんどは大腸ポリープから発生します。
「ポリープが発生して、数年かけて大きくなり、やがてがん化する」という発生経路で、いきなり大腸がんが発生するということは稀の稀です。
ポリープが発生してガン化するまでには数年単位での時間を要するため、ポリープの段階で発見して切除することが大腸がんの予防に直結します。
ポリープ自体は30代からでき始めることが多いため、当院では症状がなくてもまず35歳のタイミングで大腸カメラを受けポリープの有無や実際にガンが発生していないかを確認することを勧めています。
国立がん研究センターより引用
実際の検査例
①50代 男性 便が細くなった(大腸がん)
【症状】
以前はバナナ状の形のよい排便がありましたが、半年前くらいから便が細くなった感じがあり、ここ2週間ほどでさらに細い便となりお腹の張りも出てきたとのことで当院を受診されました。
【診察】
便が細くなる要因として、腫瘍などの出来物による大腸の内腔の狭窄や大腸炎、過敏性腸症候群に代表される大腸の蠕動運動の問題などで生じることがあり、大腸内視鏡を行い病気があるかどうかを状態を確認することにしました。
【大腸内視鏡検査】
内視鏡を行うと、S状結腸のに腫瘍を認め生検にて大腸がんと診断しました。
出血を伴う不整な隆起(緑矢印部分)を認め、進行大腸がんを疑い生検を行い、がんと診断しました。ガンによって大腸の内腔は狭窄して(矢印部分)、検査スコープは通過ができない状態でした。
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【治療・経過】
大腸ガンは早期の状態であれば内視鏡で治療が可能ですが、進行がんの状態になると手術や抗がん剤治療が必要となります。
今回は残念ながら進行がんで手術が必要な状態であり、対応できる医療機関に紹介となり、同院で治療を行い無事に根治となりました。
便が細くなってしまう原因としては前述のように
- 大腸がんによる大腸内腔の圧排
- 過敏性腸症候群などの腸の蠕動異常
- 大腸炎などによる腸管の浮腫み
- 手術や反復性憩室炎などによる癒着や狭小化
などがあります。
特に大腸がんの放置しておくと腸が詰まってしまい腸閉塞になったり、ガンの進行に伴い転移を来し命に関わることも出てきます。
大腸ガンによる便通異常は進行することはあっても、ガンを治療しない限りは自然治癒することはなく、2週間以上便通異常が続いた場合は医療機関で検査を受けることが望ましいと考えます。
②40代 女性 過去に大腸ポリープをしている
【症状】
以前から大腸カメラを受けポリープを何度も切除し、施行医から「大腸ポリープが出来やすい体質なので毎年大腸カメラを受けたほうが良い」と言われておられました。
今回転居に伴い、当院での大腸カメラ検査を希望され受診されました。
【検査】
実際に大腸カメラを行うと大腸内にいくつかの扁平な大腸ポリープを認めました。
大腸の奥に扁平なポリープ(黄色矢印部分)を認めました。周囲と同色調で丈が低く、非常にわかりづらいタイプのポリープです。
NBIというモードに変更し拡大観察の上、内視鏡的に切除可能であることを確認して、そのまま内視鏡切除をしました。
NBIモードではガン化を示唆する所見はなく、良性と判断しその場で内視鏡切除を行いました。
他にも同様のタイプのポリープを認め、いずれも切除しました。
こちらのポリープもNBIモードで切除可能と診断し、その場で内視鏡切除を行いました。
その後も出血などの合併症なく、切除後の病理検査結果では細胞の異型を伴っていたもののガン化はしておらず、治療は終了となりました。
【今回のポリープについて】
大腸ポリープの中での今回のように扁平なタイプを鋸歯状病変と呼びます。
このタイプのポリープが多発しやすい方を、鋸歯状ポリープ症候群( SPS;Serrated polyposis syndrome)と言い、いわゆる「ポリープが出来やすい体質」のことを指します。
原因としてはご自身の遺伝子異常・遺伝的な素因に年齢・食生活などの生活環境が合わさることで発症すると考えられています。
SPSの有病率は1,000~1,700人に1人であり,大腸癌の合併率は25~54%と極めて高く、定期的に大腸カメラを行いガン化する前にポリープを適宜切除していくことが重要です。
大腸がんやポリープについて気になる方・ご不安な方はお力になれますのでご相談ください!
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
③50代 男性 3年ほど前から検診で便潜血陽性が続いている
【症状】
3年ほど前から会社で受けている検診で便潜血陽性を指摘されていましたが、自覚症状がないため医療機関は受診していない状態でした。
今回会社の産業医から必ず医療機関を受診するようにと指示があったため当院を受診されました。
【診察】
ご本人に便潜血検査は「大腸がん検診の位置づけであり、陽性の方に大腸内視鏡を行うと3%程度にガンが見つかっている」ことをご説明し大腸内視鏡を行うこととしました。
【検査】
内視鏡を行うと直腸に20㎜大のポリープを認め、便潜血陽性の原因と考えました。
内視鏡上は一部ガン化している早期がんの可能性がありましたが、内視鏡治療で根治出来る状態と考え内視鏡切除を行いました。
直腸の20㎜大のポリープ(青丸部分)
内視鏡治療でポリープを切除しました。 黄色部分が切除部です。
【治療】
内視鏡治療後も合併症なく経過し、切除したポリープの病理検査結果はやはり早期ガンでしたが、幸いにも転移の心配のない状態であり、根治が出来ました。
前述のように便潜血検査陽性の方に大腸内視鏡を行ってみると3%程度の方に大腸がんが見つかるとのデータがあり、実際に今回のようにガンが見つかるケースもあります。
また、便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告(※1)もあり、便潜血陽性の方は自覚症状がなくても、大腸内視鏡を受けることが大切です。
※1 参考文献;Zorzi M et al Gut 2022;71(3):561-567
④30代 男性 父親が大腸ガンになり自分も大腸ガンが心配
【症状】
特に自覚症状はありませんでしたが、父親が大腸がんで手術を受け、自分も大腸がんが心配になり大腸内視鏡検査を受けたいとのことで来院されました
【内視鏡検査】
大腸内視鏡を行うと、S状結腸に25㎜大のポリープを認めました(青矢印部分)。
病変部の拡大NBIモードでの観察です。青丸部分が陥凹して構造が不明瞭化し、異常な血管像もあり、早期大腸がんと診断しました。
比較的大きなポリープでしたがその場で内視鏡で切除しました。切除直後は少量の出血がありましたが、内視鏡で止血して、その後は出血や合併症もありませんでした。
【経過】
切除したポリープを顕微鏡検査(病理診断)で確認するとやはりガンの状態でした。
ただ幸いにも転移の心配のない早期ガンでしたので、内視鏡治療で治癒切除となりました。
大腸ガンはポリープから発生することがほとんどで、サイズが大きくなると今回のようにガン化し、最終的に進行がんになって転移を来していきます。(例外的に小さなポリープでもガン化することも稀にあります。)
基本的には40代以上の方に発生することが多いのですが、20代や30代の方にもサイズの大きなポリープやガンが見つかることがあります。
大腸がんのリスク要因としては、家族歴などの遺伝的な要素に加え飲酒・肥満・喫煙・赤身肉や加工肉(ベーコン・ソーセージなど)の摂取などの生活習慣があげられ、また逆に運動や食物繊維の摂取が大腸がんのリスクを下げることがわかっています。
大腸内視鏡検査を受けることで将来的なガン化のリスクのあるポリープを発見・切除することができ、大腸がんの予防をすることができ、また今回のように早期ガンであれば内視鏡で治療完了となるため、20代・30代の若い方でもご家族に大腸がんの方がおられる方やリスク因子がある方は大腸内視鏡を受けることをお勧めします。
当院では数ミリの小さなポリープやガンも発見できるように
- 超高解像度の次世代内視鏡システム「EVIS-X1」の導入
- Ultra HDの4Kモニターの導入
- 襞をめくって観察するための特殊フードの使用
などの工夫を行い、安全で正確な内視鏡検査体制を整えております。
■関連ページ:
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)