下腹痛と発熱は大腸憩室炎かも|放置すると危険な症状・検査・治療を専門医が解説
更新日:2026年4月30日
「下腹部がチクチク痛む」
「お腹の痛みに加えて発熱がある」
「寝れば治ると思っていたのに、翌日も痛みが続いている」
このような症状がある場合、便秘や一時的な腸の不調だけでなく、大腸憩室炎が原因になっていることがあります。
大腸憩室炎は、大腸の壁にできた小さな袋状のふくらみである「憩室」に炎症が起こる病気です。
軽症であれば外来で治療できることもありますが、悪化すると腸に穴が開く穿孔や腹膜炎を起こし、入院や手術が必要になることもあります【1】【2】。
今回は、下腹痛と発熱をきっかけに当院を受診され、大腸憩室炎と診断して外来治療で改善した50代女性の実例をもとに、症状・診察・検査・治療の流れを専門医の院長がわかりやすく解説します。
下腹部痛でお困りの方がいらっしゃれば、このケースが受診のきっかけになれば幸いです。
下腹痛や発熱が続く方へ
下腹部の痛みや発熱がある場合、自己判断で様子を見るよりも、早めに診察・血液検査・腹部エコーなどで原因を確認することが大切です。
巣鴨駅前胃腸内科クリニックでは、腹痛・発熱・便通異常などの消化器症状についてご相談いただけます。
※ご予約がない方でも受付時間内に受診して頂ければ診察可能です。
下腹痛と発熱を起こす主な原因
下腹痛と発熱が同時にみられる場合、腸の病気だけでなく、泌尿器や婦人科領域の病気も含めて考える必要があります。
特に、痛みの場所が左右どちらかの下腹部に限局している場合や、痛みが徐々に強くなっている場合には、大腸憩室炎、急性虫垂炎、感染性腸炎、尿路感染症、尿管結石、婦人科疾患などを鑑別します。
| 考えられる原因 | 特徴 |
|---|---|
| 大腸憩室炎 | 左右どちらかの下腹部痛、発熱、圧痛、便通異常を伴うことがあります。 |
| 急性虫垂炎 | みぞおちやおへその周囲の痛みから始まり、右下腹部へ移動することがあります。 |
| 感染性腸炎 | 腹痛、発熱、下痢、吐き気、嘔吐を伴うことがあります。 |
| 尿路感染症・尿管結石 | 下腹部痛、背部痛、排尿時痛、血尿などを伴うことがあります。 |
| 婦人科疾患 | 卵巣や子宮の病気でも下腹部痛や発熱を起こすことがあります。 |
症状だけで原因を判断することは難しいため、診察所見、血液検査、腹部エコー、必要に応じたCT検査などを組み合わせて判断します。
特に大腸憩室炎の画像診断では腹部エコーや経過観察に役立つ場合があります【1】【2】【4】。
大腸憩室炎とは?
大腸憩室炎とは、大腸の壁にできた小さな袋状のふくらみである「憩室」に、便や細菌が関係して炎症が起こる病気です。
憩室があるだけでは症状がないことも多いですが、炎症を起こすと、下腹部痛、発熱、腹部の圧痛、便秘や下痢などの便通異常が出ることがあります。
軽症であれば外来で治療できることもありますが、炎症が強い場合、膿瘍、穿孔、腹膜炎などを起こすことがあり、入院や手術が必要になることもあります【2】【3】。
また、大腸憩室炎の急性期には、大腸カメラで腸管に空気を入れることで炎症を悪化させる可能性があるため、通常は血液検査、腹部エコーなどで評価します。
炎症が落ち着いた後に、大腸がんなど他の病気が隠れていないか確認する目的で大腸カメラを検討することがあります【2】【4】。
関連ページ
▶大腸憩室症・大腸憩室炎について詳しく知りたい方は、大腸憩室症・憩室炎の解説ページもご覧ください。
実際の治療例|下腹痛と発熱で受診された50代女性
症状
2日前から左下腹部に違和感が出現しました。
最初は「寝れば治るかもしれない」と考えて様子を見ていましたが、翌日になっても違和感は取れず、次第にチクチクとした痛みに変わってきました。
病院受診も検討されましたが、日中は予定があり受診できず、その日の夜中になって痛みが強くなりました。
さらに37度台の微熱も出てきたため、翌朝に当院を受診されました。
診察・鑑別
診察では、痛みは左下腹部に限局していました。また、以前に大腸カメラで大腸憩室を指摘されたことがあるとのことでした。
左下腹部痛と発熱があり、大腸憩室の既往もあったため、まず大腸憩室炎を疑いました。
一方で、下腹痛と発熱では大腸憩室炎だけでなく、以下のような病気も鑑別する必要があります。
- 急性虫垂炎
- 感染性腸炎
- 虚血性腸炎
- 尿路感染症
- 尿管結石
- 婦人科疾患
- 大腸がんなどによる炎症や狭窄
症状の場所、発熱の程度、腹部の圧痛、既往歴、血液検査、腹部エコー所見を総合して判断することが重要です。
検査
腹部エコーを行うと、痛みの場所に一致してS状結腸の憩室(図:赤部分)と、その周囲の大腸の壁の肥厚(図:水色部分)が描出されました。
血液検査でも炎症反応が認められたことから、大腸憩室炎と診断しました。
治療
大腸憩室炎は、重症の場合には入院が必要になることもあります。ただし、今回は腹部エコー所見、血液検査、全身状態から軽症と判断し、外来で慎重に治療を行いました。
抗菌薬による治療
外来で抗菌薬の点滴を行い、その後は内服の抗菌薬を継続していただきました。
食事制限・腸管安静
憩室部分に便による圧がかかりにくいように、食事は水分、スポーツドリンク、ゼリー、プリンなどの流動食を中心にしていただきました。
また、炎症と戦うための栄養を補う目的で、抗菌薬と同時に栄養剤の点滴も行いました。
治療後の経過
翌日の再診では、腹痛はかなり改善していました。血液検査でも炎症反応は低下しており、外来治療で改善が見込める状態と判断しました。
その後も抗菌薬の内服を継続し、4日後の再診時には腹痛はすっかり消失していました。
血液検査と腹部エコーの所見も改善しており、大腸憩室炎の治療は終了となりました。
受診の目安|下腹痛と発熱があるときは早めに相談を
下腹痛と発熱がある場合、軽症で済むこともありますが、炎症が進行している場合には入院や手術が必要になることもあります。
特に、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 下腹部の痛みが強い
- 発熱を伴う
- 痛みが徐々に悪化している
- お腹を押すと強く痛む
- 歩くとお腹に響く
- 吐き気や嘔吐がある
- 血便や下血がある
- 以前に大腸憩室を指摘されたことがある
- 大腸憩室炎を繰り返している
炎症が落ち着いた後に大腸の状態を確認する場合は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をご案内することがあります。
下腹痛・発熱・便通異常でお悩みの方へ
下腹痛と発熱がある場合、早期に診断して治療を開始することで、外来で改善できる可能性があります。痛みが続く方、発熱を伴う方は、無理に様子を見すぎずご相談ください。
📞 お電話でのご予約:03-5940-3833
院長コメント
今回の方は、比較的早い段階で受診していただいたため、幸いにも大腸憩室炎が悪化せず、外来通院で改善することができました。
大腸憩室炎は、軽症であれば外来治療が可能なこともありますが、炎症が強くなると穿孔や腹膜炎を起こし、緊急手術が必要になることもあります。
そのため、腹痛や発熱がある場合には、早めに診察を受けることが大切です。
また、大腸憩室炎を繰り返すと、大腸の壁が硬くなったり、狭窄を起こしたりして、便の通過障害や慢性的な腹部症状につながることもあります。
予防の観点では、便通を整えること、肥満を防ぐこと、喫煙を控えることなどが大切です。
大腸憩室を指摘されたことがある方や、過去に大腸憩室炎を起こしたことがある方は、腹痛や発熱が出たときに早めにご相談ください。
大腸憩室炎のよくある質問
Q. 下腹痛と発熱がある場合、大腸憩室炎の可能性はありますか?
A. はい、あります。大腸憩室炎では、左右どちらかの下腹部痛、発熱、腹部の押した痛み、便秘や下痢などがみられることがあります。特に痛みが続く場合や、発熱を伴う場合は、早めに医療機関で原因を確認することが大切です。
Q. 大腸憩室炎は自然に治りますか?
A. 軽症の場合、自然に改善することもありますが、自己判断で放置するのはおすすめできません。悪化すると膿瘍、穿孔、腹膜炎などを起こし、入院や手術が必要になることがあります。腹痛や発熱が続く場合は受診しましょう。
Q. 大腸憩室炎の検査では何をしますか?
A. 診察で痛みの場所や腹部の圧痛を確認し、血液検査で炎症の程度を調べます。さらに、腹部エコーやCT検査で、憩室周囲の炎症や膿瘍、穿孔の有無を確認します。
Q. 大腸憩室炎の急性期に大腸カメラは必要ですか?
A. 急性期には、炎症を悪化させる可能性があるため、通常は大腸カメラを行いません。まずは血液検査、腹部エコー、CT検査などで評価します。炎症が落ち着いた後に、必要に応じて大腸カメラで大腸がんや他の病気が隠れていないか確認します。
Q. 大腸憩室炎は入院が必要ですか?
A. 軽症で全身状態が安定している場合は、外来で治療できることもあります。ただし、痛みが強い、高熱がある、炎症反応が高い、膿瘍や穿孔が疑われる場合は、入院治療が必要になることがあります。
Q. 大腸憩室炎の治療では何をしますか?
A. 症状や重症度に応じて、食事制限、腸管安静、抗菌薬、点滴などを行います。軽症であれば外来治療が可能なこともありますが、重症例では入院や外科的治療が必要になることがあります。
Q. 大腸憩室炎のときは食事をしてもよいですか?
A. 炎症が強い時期は、腸を休ませるために食事制限が必要になることがあります。症状が落ち着いてきたら、医師の指示に従って、ゼリー、おかゆ、うどんなど消化のよいものから少しずつ再開します。
Q. 大腸憩室炎を繰り返すことはありますか?
A. はい、繰り返すことがあります。再発を繰り返す場合や、狭窄、膿瘍、穿孔などの合併症を伴う場合は、治療方針について専門的な判断が必要になります。
Q. 大腸憩室炎は大腸がんになりますか?
A. 大腸憩室炎そのものが大腸がんに変わるわけではありません。ただし、症状や画像所見だけでは大腸がんなど他の病気と区別が難しいこともあるため、炎症が落ち着いた後に大腸カメラを検討することがあります。
Q. どのような症状があれば早めに受診すべきですか?
A. 下腹痛が強い、発熱がある、痛みが徐々に悪化している、吐き気や嘔吐がある、血便がある、お腹を押すと強く痛む、歩くと響くように痛い場合は、早めに医療機関を受診してください。
まとめ|下腹痛と発熱があるときは大腸憩室炎にも注意しましょう
下腹痛と発熱がある場合、便秘や一時的な腸の不調だけでなく、大腸憩室炎が原因になっていることがあります。
- 大腸憩室炎は、左右どちらかの下腹部痛と発熱で見つかることがあります。
- 軽症であれば外来治療で改善することもあります。
- 悪化すると膿瘍、穿孔、腹膜炎などを起こし、入院や手術が必要になることがあります。
- 急性期には大腸カメラではなく、血液検査、腹部エコー、CT検査などで評価します。
- 炎症が落ち着いた後に、大腸カメラで大腸がんなど他の病気が隠れていないか確認することがあります。
医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。
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関連ページ
参考文献
- 日本消化管学会. 大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026 改訂第2版. 南江堂, 2026.
- Peery AF, Shaukat A, Strate LL. AGA Clinical Practice Update on Medical Management of Colonic Diverticulitis. Gastroenterology. 2021;160:906-911.
- Hall J, Hardiman K, Lee S, et al. The American Society of Colon and Rectal Surgeons Clinical Practice Guidelines for the Treatment of Left-Sided Colonic Diverticulitis. Dis Colon Rectum. 2020;63:728-747.
- 日本消化管学会. 大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン. 日本消化管学会雑誌 Supplement. 2017.

