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突然の腹痛と血便の正体は?【虚血性腸炎】の原因・症状・治療を専門医が解説

「突然お腹が痛くなり、下痢や血便が出た」──そんな症状は、単なる胃腸炎ではなく 虚血性腸炎 かもしれません。

本記事では、消化器内科専門医が虚血性腸炎の 原因・症状・検査・治療法 を分かりやすく解説します。

気になる症状がある方は、早めの受診が安心につながります。

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虚血性腸炎とは

「虚血性腸炎」とは、大腸に栄養や酸素を供給するための血管が一時的に詰まってしまうことで、大腸に炎症(粘膜のただれ・潰瘍など)が起こる病気です。

突然起こる腹痛・下痢・血便が特徴的で左側の下行結腸やS状結腸が好発部位といわれています。

原因は?

虚血状態になってしまう原因としては、大腸に血流を送る血管の要因大腸側の要因があります。

・血管側の要因:高血圧症・糖尿病・高脂血症などによる動脈硬化・虚血性心疾患・不整脈などによる血流の低下

・大腸側の要因:便秘・大腸内視鏡検査・浣腸・下剤の服用による大腸の内圧の上昇

 

基礎研究では血管側の血流低下と大腸の内圧の上昇が同時に起こった際に高確率で虚血性腸炎が発症することから、血管の動脈硬化などで血流低下が起こっている箇所に、便秘による腸管内圧の上昇などが加わった時など虚血性腸炎が発生すると考えられています。1)

基本的には高齢の方や、上記のような基礎疾患としてもつ場合に多くみられますが、若年者の方でも血管の一時的な痙攣でも起こると言われています

特に便秘の方はは虚血性腸炎発症リスクが 2.78 倍上昇するとの報告もあります 2)

症状は?

典型的な症状は次の3つです。

・腹痛

・下痢

・血便 

の3つが特徴的です。

特に突然発症し、左の側腹部~下腹部にかけての強い痛みを感じることが多いです。 

また極々稀ではありますが、ひどくなると、腸閉塞を来し腹部の膨満感や嘔吐を起こしたり、腸管壊死を起こしショック状態になることもあります。

必要な検査は?

問診

症状の発症した時の状態(虚血性腸炎の場合は突然発症のことが多いです)の確認や腹痛の部位、下痢・血便の有無など便の状態を確認

血液検査

炎症の程度や下血による貧血の確認

腹部エコー

腸管の炎症の場所や浮腫みの状態を見ます。

感染性腸炎」「炎症性腸疾患」「大腸憩室炎・憩室出血」など同様の症状を起こす病気の鑑別のため非常に有用です。

◆実際の虚血性腸炎のエコー画像◆

腹痛のある部分に一致して下行結腸の壁が広範に肥厚。

粘膜下層という部分が炎症で厚くなっており、白っぽく描出されます。(矢印に囲まれた領域)

このエコー所見と問診・診察と合わせ虚血性腸炎と診断します。

クリニックで拡大

大腸内視鏡(大腸カメラ)

粘膜の状態を直接確認することが出来ます。

ただ、急性期に行うと腹痛を伴うことが多いため、エコーで診断がつかない場合などに行います。

症状が落ち着いた後に、下血を来す他の病気や虚血を起こす基礎疾患(大腸がん・潰瘍性大腸炎)を確認するために行うことが多いです。

◆実際の虚血性腸炎の大腸内視鏡(大腸カメラ)画像◆

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治療は?

症状は2-4日で落ち着くことがほとんどなので、外来で通院して頂きながら様子を見ます。

治療としては、

・自宅安静

・抗生剤投与

・点滴・食事療法 :症状が強い時は絶食で水分のみを取って頂き、外来で点滴を行います。症状が改善してきたら、徐々にお食事を召し上がっていただきます。

(流動物:スープ・ミキサー食 → 半固形物:ウィダーインゼリー・プリン → 消化のいいもの:おかゆ、素うどん)

※痛みが強い時や、下血が激しい時は入院を考えます。

症状でお困りの方はお力になれますのでご相談ください。

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実際の治療例

50代女性 激しい腹痛・下痢・血便

【症状】

前日夕食後3時間ほどしてから冷や汗が出るほどの突然激しい腹痛が出現し、しばらくして水下痢が起こり始め、夜間に数回下痢を繰り返し、途中から血便を伴ったとのことで当院を初診されました。

 

【診察】

触診では左下腹部に強い圧痛を認め、症状と合わせて虚血性腸炎を疑い、鑑別診断として感染性胃腸や潰瘍性大腸炎などを考えました。

 

【検査】

腹部エコーにて下行結腸からS状結腸にかけて腸管の壁の肥厚を認め、虚血性腸炎と診断しました。

下行結腸の画像です。 水色矢印の範囲で腸管が浮腫み、粘膜下層が炎症で白く見えます (黄色矢印)

 

【治療・経過】

血液検査での炎症反応は軽微な上昇のみで、血便による貧血や大腸の炎症による腸閉塞などもないため、入院は必要なく、食事制限と痛みや炎症に対しての内服薬で外来治療としました。

その後、痛みは翌日にはかなり改善し、食事制限を徐々に解除しましたが再燃なく、無事に治療完了となりました。

 

【院長からのコメント】

虚血性腸炎は痛みが激しく血便も伴うことが多いため、一見重症疾患と思ってしましますが、しっかり診察と検査を行い診断をつければ外来で経過を見ることができる疾患です。

ただし、同様の症状を伴う別の疾患もあるため、症状がある際はまず医療機関を受診し適切な診断を行い治療方針を見極めることが大切です。

また、治療完了後も実際に虚血性腸炎以外の病気がないかどうかを大腸内視鏡検査を行って確認しておくことも必要です。

お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833

まとめ

  • 虚血性腸炎は 大腸の血流が一時的に途絶えて炎症が起こる病気 です。

  • 突然の腹痛・下痢・血便 が典型的な症状。便秘や動脈硬化がリスクになります。

  • 検査は問診・腹部エコーで診断できることが多く、必要に応じて大腸カメラを行います。

  • 多くは外来で安静・食事療法・点滴で改善しますが、重症例は入院管理が必要です。

  • 再発は6〜16%程度あり、便通コントロールが予防に重要 です。

👉 突然の腹痛や血便は放置せず、早めの受診が安心につながります。

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よくある質問FAQ

Q:必ず腹痛・下痢・血便が出ますか?

A: 必ずしも出るわけではありませんが、高確率で見られます。

特に腹痛は88 %, 血便は82%と確率が高く、下痢も51%と約半数の方に見られるとの報告があります3)

Q:大腸カメラはやったほうがいいですか?

A:急性期にはやる必要は低いと考えます。

エコーなどで診断がついた場合には一旦は不要だと考えます。ただ、虚血性腸炎を起こす基礎疾患が潜んでいたり、血便の原因となる他の病変が隠れている可能性もあるため、症状が落ち着いたのちに大腸カメラは受けてた方がよいでしょう。

Q:どのくらいで治りますか?

A:2-3日でよくなる方が多いです。

大腸粘膜の再生は早い ため2~3 日以内に症状は改善していき,2週間 以内に粘膜の状態も完全に回復する方がほとんどです4)

Q:再発はしますか?

A:それほど高くはないですが再発することもあります。

虚血性腸炎の再発率は 6.8~16% と報告があり5)、実際に当院でも再発した方もおられます。

前述のように便秘が発症にかかわることが多く、普段から便通コントロールを行うことが予防につながります。

医師紹介

神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長

📍経歴

国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、

消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。

胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、

内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。

2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。

内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。

  • 日本内科学会認定医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医

🩺 診療にあたっての想い

胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。

「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」

そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。

アクセス

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所在地

170-0002
東京都豊島区巣鴨1丁目18-11  十一屋ビル4階

交通
巣鴨駅から徒歩2分、ローソン(1F)の4階  

巣鴨駅前胃腸内科クリニック

お電話での予約・お問い合わせ:03-5940-3833

文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介

 (消化器学会・内視鏡学会専門医)

お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833

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参考文献

1)大川清孝,青木哲哉,追矢秀人,青松和揆,他. 虚血性腸炎の誘因.臨床消化器内科,17(12): 1661- 1667, 2002.

2)Suh D C, Kahler K H, Choi I S, et al.: Patients with irritable bowel syndrome or constipation have an increased risk for ischaemic colitis. Aliment Pharmacol Ther 2007; 25 (6): 681―692

3)吉 田 豊, 棟方 昭博, 中路重 之: 虚血性大腸炎 の疫 学. 臨床消化器内1998; 3: 1109-1114

4)Washington C, Carmichael JC: Management of ischemic colitis. Clin Colon Rectal Surg 2012; 25: 228― 235

5)Brandt LJ, Feuerstadt P, Longstreth GF, et al.: American College of Gastroenterology. ACG clinical guideline: epidemiology, risk factors, patterns of presentation, diagnosis, and management of colon ischemia (CI). Am J Gastroenterol 2015; 110: 18―44.

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