血便外来;血便の原因や検査・治療について
血便と聞くと、“お尻から血が出てる状態”を考える方が多いと思いますが、お尻から出血をきたしてるようないわゆる「下血」の状態から、肉眼的な出血はなく検便(大腸がん検診)にて指摘される「便潜血」まで、便に血が混じっている状態全てを指します。
排便後にティッシュにつく程度の少量の血便であっても、正常な状態で血便が出ることはなく、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。
頻度的には痔や裂肛といった軽症の疾患が多いですが、中には直腸がんなどの病気のサインのこともあり、
“ティッシュに血がつくのはいつものことだから”
“たまにしかないから気にしない”
と放っておかず、まずは医療機関を受診することが重要です!
血便の原因は?
血便とは
血便と便とともに大量に出血するいわゆる「下血」の状態から、肉眼的な出血はなく検便(大腸がん検診)にて指摘される「便潜血」まで、便に血が混じっている状態全てを指します。
血の色や出血の量・場所により、さまざまな病気が隠れていることがあります。
主な原因
| 血便の性状 | 具体的な特徴 | 主な原因疾患・状態 |
|---|---|---|
| 鮮血便(赤く、便の表面に血がついている) | 拭いた紙に血がつく、便の最後に赤い血がつく |
肛門や直腸の出血 ・痔出血・裂肛(切れ痔) ・直腸がん、直腸ポリープ・直腸炎 |
| 下血(真っ赤な液体状の血が出る) | 便がほとんどなく、赤い液状の血が出る |
直腸やS状結腸の出血 ・虚血性腸炎・痔出血・憩室出血など |
| 赤黒い血便(暗赤色〜黒赤色) | 便全体が赤黒く変色、やや粘液様にドロッとしている |
深部大腸や小腸からの出血 ・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病) ・大腸がん・感染性腸炎・大腸憩室出血 ・小腸メッケル憩室出血など |
| 黒色便(タール便) | ドロッとしていて黒光り、悪臭が強い |
上部消化管(胃・十二指腸・小腸)出血 ・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・小腸出血 ・食道静脈瘤破裂・服薬影響(鉄剤など) |
| 普通の便に混じった血 | 見た目は普通だが、血混じっていることがある | ・大腸ポリープ・大腸がんなど |
| 顕微鏡的血便(肉眼では見えない) | 健診で便潜血陽性と指摘される |
・大腸がん・ポリープ ・炎症性腸疾患・痔出血 |
🔽 血便が出る原因は自己判断が難しいため、専門医による診察・検査を受けることが重要です。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
血便の検査方法は?
前述のように血便の状態を把握することが非常に重要になってくるので、まずはしっかりと問診を行い、診断に必要な検査を組んでいきます。
問診
・血便状態(性状、タイミング、量)
・腹痛の有無
・慢性なのか?急性なのか?
直腸診
問診で痔などが疑われる場合は、痔や直腸の状態を確認するための診察を行います。
血液検査
血便による貧血がないか、腸炎などが疑われる場合は炎症の程度を確認します。
すぐに結果が出るので初期の緊急性を見極める際にも非常に有効です。
腹部エコー
こちらも当日すぐに出来る検査で、炎症や感染・虚血による下血の場合は非常に有効です。
大腸カメラ
大腸の病気が疑われた場合に行います。大腸の粘膜を直接見ることが出来るので、状態をしっかりと把握できます。
特に以下に該当する方は積極的に大腸カメラを受けることをお勧めします。
- ✅大量の下血
- ✅40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない
- ✅便潜血陽性
- ✅少量でも繰り返す血便・持続する血便
- ✅粘液交じりの血便
- ✅腹痛を伴う血便
【実際の大腸カメラの画像】
胃カメラ
黒色便などの胃や十二指腸からの出血が疑われる病気の場合に行います。
【実際の胃カメラの画像】
小腸カプセル内視鏡
小腸出血が疑われる場合や、胃カメラや大腸カメラを行っても原因不明の血便がある際に行います。
👉 当院では、鎮静剤を使用した苦痛のない大腸カメラ・胃カメラを行っております。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
治療は?
原因に合わせて治療を行っていきます。
| 原因 | 主な治療法 |
|---|---|
| 痔 | 軟膏・坐薬・生活指導(重症は手術) |
| ポリープ | 内視鏡的切除 |
| 憩室出血 | 経過観察または止血処置 |
| 感染性腸炎 | 抗菌薬・整腸剤など |
| 潰瘍性大腸炎など | 内服薬・定期通院・重症例は入院治療 |
| 大腸がん | 内視鏡切除、外科手術、化学療法など |
実際の治療例
- Case① 60代男性 便潜血反応陽性→大腸がん
- Case② 40代男性 繰り返す鮮血便→内痔核出血
- Case③ 50代女性 突然の腹痛・下痢・血便→虚血性腸炎
- Case④ 20代女性 度々起こる血便・粘液→潰瘍性大腸炎
- Case⑤ 30代男性 排便時の出血→ポリープ出血
Case① 60代男性 大腸がん
【症状】
特に自覚症状はありませんでしたが、検診で便潜血を指摘されて来院された方です。
【内視鏡検査】
精査のために大腸カメラを行ったところ、直腸がんが発見されました。
【治療】
残念ながら進行がんのため内視鏡治療はできない状態でしたが、幸いにも転移はなく、手術にて完治しました。
便潜血検査陽性の方に大腸内視鏡を行ってみると3%程度の方に大腸がんが見つかるとのデータがあり、実際に今回のようにガンが見つかるケースもあります。
また、便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告※1もあり、便潜血陽性の方は自覚症状がなくても、大腸内視鏡を受けることが大切です。
◆関連ページ:
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Case② 40代男性 内痔核出血
【症状】
繰り返す排便時の鮮血にて来院された方です。
【内視鏡検査】
問診と診察からは痔核出血が考えられました。
ご本人と相談し念のため大腸カメラまで行いましたが、幸い大きな病気はなく内側の痔(内痔核)と診断しました。
【治療】
痔の程度も軽いため、生活習慣の改善と薬で治療し、落ち着いておられます。
▶関連ページ: 内痔核の原因や治療について
Case③ 50代女性 虚血性腸炎
【症状】
朝からの突然の腹痛と下痢・下血とのことで急遽受診されました。
【検査】
普段便秘気味であり発症が突然であったとの問診と、腹部エコー検査でS状結腸の広範な浮腫を伴う炎症の所見から虚血性腸炎と診断しました。
【治療・経過】
程度が軽かったため、点滴・抗生剤を投与し、自宅にて安静と当日絶食で過ごして頂くと、翌日の再診時にはかなり改善していました。
治療後に改めて他の病気(がんや炎症性腸疾患など)がないかを大腸内視鏡(大腸カメラ)で確認し、最終的に確定診断に至りました。
(※急性期に大腸内視鏡を行うと強い痛みを伴うことが多いため、腹部エコーで診断がつく方は落ち着いたあとに大腸内視鏡を行うことが多いです。)
虚血性腸炎は便秘の方に起こりやすく(便秘の方はは虚血性腸炎発症リスクが 2.78 倍上昇するとの報告もあります 1)、普段から便秘の方に突然の腹痛・下痢・血便が生じた場合には虚血性腸炎の可能性があるので早めに医療機関に受診することが大切です。
▶関連ページ:虚血性腸炎の原因や治療について
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Case④ 20代女性 潰瘍性大腸炎
【症状】
8か月ほど前から時々便に赤い血が混じるような状態の血便があり、近くの肛門科を受診し、「痔」と診断され薬を出されて様子をみていましたが、改善なく度々血便を繰り返す状況が続いていました。
最近、血便の頻度が増え、粘液も交じってきたため不安になり当院を受診されました。
【診察】
ここ1-2か月ほどは便に血が混じる状態に加え、便自体も形が崩れていたり粘液のような便だったりと、いわゆる便通異常を伴っている状態でした。
症状からは「痔」というよりも、腸の粘膜に炎症を起こす「何らかの腸炎」による出血・便通異常を考えました。
(単なる「痔」の場合は便通異常は伴わないことが多いです。)
【検査】
食事を摂らずに来院されたので、当日すぐに腹部エコーを行い状態を確認しました。
S状結腸に腸管の炎症像を認め経過と合わせて「潰瘍性大腸炎」という病気を疑いました。
状態を説明し、後日大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。
内視鏡の所見と病理検査結果から「潰瘍性大腸炎」の確定診断となりました。
【治療】
潰瘍性大腸炎は約80%の患者さんが、5-ASA製剤という内服薬で症状が落ち着くため、まず同薬の治療を開始しました。
【経過】
内服開始1週間ほどで血便はなくなり、粘液のような便も2週間ほどで消失しました。ただ、便の形は軟便傾向がつづいている状態だったため、腹部エコーで状態を評価したところ、炎症像は軽減していたものの残存しており、検便でも炎症の数値が軽度の上昇を認めました。
炎症の範囲が肛門から近いS状結腸までであり、内服薬に加えスプレー式の注腸整剤を併用したところ、2週間ほどで便の普通便にもどりました。
その後、注腸製剤は中止し、内服のみで緩解維持療法を続けています。
潰瘍性大腸炎は緩解状態(症状が消失した状態)になった後も、再燃を起こしやすい病気のため基本的には内服製剤などを続け緩解状態を維持していくことが大切になります。
▶関連ページ:潰瘍性大腸炎について
Case⑤ 30代男性 ポリープ出血
【症状】
数か月前から排便時の出血があり、肛門科にて「痔」という診断を受け軟膏で治療を受けていましたが、度々出血が起こるとのことで当院を受診されました。
【診察】
問診では便の色自体は正常であり、腹痛などもなく、痔出血に合致する出血のパターンでしたが、直腸診を行ってみると目立つ痔核はなく、他の原因が考えられるため、大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。
【検査】【治療】
内視鏡では、やはり痔核は認めず、
直腸とS状結腸の境目付近に巨大なポリープを認め、同部位からの出血を疑い、内視鏡的に切除しました。
【経過】
切除後から出血はなくなり、今回の血便も出血源と考えられました。
また、ポリープ切除後は特に合併症はなく経過し、切除ポリープも良性であり、ご本人に状態をご説明し今回は治療終了となりました。
痔出血では便の色自体は正常のことが多く、出血は鮮血のことが多いですが、他の直腸病変からの出血でも同じようなパターンの血便をとることがあります。
診察で明らかな痔核を認めない場合や、痔の治療を行っても改善ない場合などは、大腸内視鏡を行い状態を評価する必要があります。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
まとめ
・血便=すべて要注意:鮮やかな赤い血・赤黒い血・黒色便・便潜血陽性のいずれも「正常」ではありません。
一度は専門医を受診しましょう。
・受診の目安:
①大量の下血/フラつき
②40歳以上で未受診
③便潜血陽性
④少量でも反復
⑤粘液を伴う
⑥腹痛や発熱を伴う
・当院の強み:
鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡
当日採血・腹部エコーで迅速トリアージ
必要時は小腸カプセル内視鏡まで院内完結。
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よくある質問FAQ
Q1. ティッシュに少量の鮮血が付くだけでも受診すべきですか?
A. はい。痔が多い一方、直腸がん・直腸ポリープでも同じパターンがあります。反復する場合や治療しても続く場合は大腸カメラで確認を。
▶関連ページ:大腸カメラ|実際の検査の流れや鎮静剤とオリジナル低痛挿入による無痛大腸カメラの詳細がご確認いただけます
Q2. 便潜血が陽性=がん確定ですか?
A. 確定ではありませんが、がんの可能性は否定できません。便潜血陽性の一部で大腸がんが見つかるため、放置せず精査(大腸カメラ)を。
▶関連ページ:便潜血検査陽性の場合は大腸カメラを受けた方がいいの?
Q3. 黒色便(タール便)が出ました。受診の緊急度は?
A. 胃・十二指腸出血の可能性があり当日受診を。フラつきや冷汗、動悸を伴う場合は救急外来受診の検討が必要です
Q4. 鉄剤やビスマス製剤で便が黒くなりますか?
A. はい、薬剤性の黒色化があります。ただし出血の黒色便と鑑別が必要なため、症状や採血で評価します。
Q5. 便に粘液+少量の血が混じります。痔でしょうか?
A. 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患で見られることがあり、痔だけでは説明できない所見です。エコー→大腸カメラで評価します。
▶関連ページ:潰瘍性大腸炎
Q6. 便秘がちで突然の腹痛・下痢・血便が出ました。
A. 虚血性腸炎の典型です。多くは保存的治療で改善しますが、がんや他の病気除外のため落ち着いてから大腸カメラを行います。
▶関連ページ:虚血性腸炎
Q7. 抗凝固薬・抗血小板薬を服用中でも内視鏡は可能?
A. 可能です。ポリープ切除の有無で取り扱いが変わります。お薬手帳をご持参ください。
Q8. 大腸カメラは痛くて不安です。鎮静は使えますか?
A. はい。当院では鎮静+スコープ操作の工夫で苦痛を最小化します。体質や既往薬に合わせて用量調整します。
▶関連ページ:なぜ当院の大腸内視鏡は「痛くなく」「苦しくない」の?
Q9. 便潜血が陽性→2回目は陰性。精査は必要?
A. 最初の陽性で精査を推奨します。陰性化しても病変が隠れることがあるため、大腸カメラをご検討ください。
医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。
アクセス
所在地
〒170-0002
東京都豊島区巣鴨1丁目18-11 十一屋ビル4階
交通
巣鴨駅から徒歩2分、ローソン(1F)の4階巣鴨駅前胃腸内科クリニック
お電話での予約・お問い合わせ:03-5940-3833
文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介
(消化器学会・内視鏡学会専門医)
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
参考文献
- Zorzi M, et al. Long-term mortality outcomes after positive fecal immunochemical test and colonoscopy adherence. Gut. 2022;71(3):561–567.
- 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン(改訂版). 国立研究開発法人国立がん研究センター/日本対がん協会 ほか.
- 日本消化器内視鏡学会(JGES)ガイドライン:大腸腫瘍に対する内視鏡診療ガイドライン 改訂版.
- 日本消化器病学会(JSGE)ガイドライン:潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン(最新版).
- Suh DC, Kahler KH, Choi IS, et al. IBS/便秘と虚血性腸炎の関連. Aliment Pharmacol Ther. 2007;25(6):681–692.
- JGES:上部消化管出血の内視鏡診療ガイドライン(タール便・緊急内視鏡の適応に関する推奨)。
- 日本大腸肛門病学会:痔疾患診療ガイドライン(内痔核の診断と治療、保存療法・手術適応)。
■関連ページ■
・痔核

