メニュー

実際の治療例 “過敏性腸症候群が治らない”

[2024.08.02]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

20代 男性 過敏性腸症候群が治らない

 

症状

数年前から一日数回の下痢腹痛があり、近医にて過敏性腸症候群と診断され投薬治療を受けていましたが、症状が改善しないととのことで当院を受診されました。

 

関連ページ:過敏性腸症候群

 

診察

下痢や腹痛はストレス時に悪化するとのことであり過敏性腸症候群の症状としても矛盾はありませんでしたが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性的に腸に炎症を起こす炎症性腸疾患も否定はできない症状でした。

前医では特に検査はせずに症状のみで過敏性腸症候群と診断を受けたとのことで、ご本人と相談し大腸内視鏡検査を行い腸の状態を確認してみることとしました。

 

検査

大腸内視鏡行うと大腸全体に広がる炎症を認めました。

生検を行い内視鏡所見と合わせて潰瘍性大腸炎と診断しました。

大腸内視鏡画像です。 大腸粘膜全体に潰瘍性大腸炎と思われるびらん(黄色矢印部分)・炎症によるうっ血(青丸部分)を認めました。

 

治療

潰瘍性大腸炎とは、「体内に侵入したウイルスや細菌などの外的を攻撃する免疫細胞(白血球など)が、大腸粘膜や腸内細菌を敵と誤認して攻撃してしまい、大腸の粘膜に慢性的に炎症を起こす病気」です。

大腸に炎症を来すことで、腹痛下痢血便などの症状を来します。

実は根本的な治療法が今のところはない難病の一つですが、炎症自体は薬で抑えることが可能で、継続的に薬を使っていく必要があります。

今回も患者さんにご説明し、投薬治療を開始しました。

※詳細は「潰瘍性大腸炎」をご参照ください。

 

<治療内容>

潰瘍性大腸炎に対しての抗炎症薬(5-ASA)製剤の投与

 

経過

治療開始すると1週間ほどで下痢・腹痛はかなり改善し、2週間ほどで腹痛は消失し、通常便になりました。

状態的には薬で症状が消えた状態=寛解状態となりました。

ただ、先述のように根本的な治療法はなく薬で炎症を抑えているだけであり、この寛解状態を維持するため投薬を継続しています。

(やめると高確率で再燃してしまいます。)

 

最初に他院で診断された、過敏性腸症候群は「腸に炎症や腫瘍などの異常がないにも関わらず起こる腹痛や便通異常をきたす疾患」です。

ストレスや緊張で悪化しやすいのが特徴ですが、潰瘍性大腸炎も同じように腹痛や便通異常をきたし、かつストレスで増悪することもあり、

症状が合致するからと言って必ずしも過敏性腸症候群とは言えません。

今回のように症状が治らない場合はもちろん、過敏性腸症候群と診断する際にはしっかりと大腸内視鏡などの検査することが重要です。

 

 

関連ページ:

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

大腸内視鏡(大腸カメラ)の詳細はこちらから

HOME

ブログカレンダー

2024年11月
« 10月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME