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実際の治療例 “慢性的な右下腹部の痛みに悩まされている”

[2025.06.27]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

20代 男性 慢性的な右下腹部の痛みに悩まされている

【症状】

1年ほど前から右下腹部に何となく違和感や時折軽い鈍痛を感じていました。

3か月ほど前からたまに軟便が出るようになったため心配になり近くの消化器内科を受診したところ、大腸カメラを勧められ検査を受けましたが異常なく「過敏性腸症候群」と診断され投薬となりました。

ただ投薬後もあまり効いた感じはなく、むしろ鈍痛を感じる頻度も増え常に右下腹部が気になってしまう状態となっていました。

通院中の消化器内科では「ストレスのせいで過敏性腸症候群がよくならない」と言われ痛み止めを追加されましたが、

本当に過敏性腸症候群なのか不安になり当院を受診されました。

 

【診察・検査】

男性の右下腹部の原因として

  • 上行結腸や盲腸などの大腸疾患
  • クローン病やメッケル憩室などの小腸疾患
  • 腹腔内(腸の外側)疾患
  • 腎泌尿器系の疾患

などが考えられます。

大腸カメラでは異常がないとのことで、小腸疾患や腹腔内の病変を調べるため腹部エコー血液検査を行いました。

 

【検査】

血液検査では軽度の炎症反応の上昇を認め、腹部エコーでは右下腹部の小腸(回腸末端部)の一部に炎症像を認めクローン病を疑う所見でした。

実際のエコー所見です。右下腹部の痛む部位に一致して小腸を認めました。 小腸壁がかなり肥厚しており(点線部分)、同部位に強い炎症があることがわかりました。

炎症部分はかなり血流が豊富であり(赤色部分)、強い炎症が起こっていることを表します。部位・所見からクローン病を強く疑います。

【治療】

クローン病は炎症性腸疾患と呼ばれる体の免疫機構の異常によって腸に慢性的な炎症が起こる疾患です。

ヒトの体内にはウイルスや細菌が体内に侵入した際に攻撃する免疫細胞(白血球など)がありますが、

この細胞が腸や本来共存すべき腸内細菌に対して攻撃的に働いてしまい、腸の粘膜に慢性的に炎症が引き起こされます。

ただ、なぜ免疫機構の異常が起こるかということは、はっきりと分かっていません。

最近の研究では、食事内容1)遺伝子の関与2)腸内細菌叢の変化3)などが要因になりうるのではということが言われています。

 

腸内に慢性的な炎症が起こることで、今回のような持続的な腹痛が引き起こされます

確定診断には小腸造影や小腸内視鏡などの小腸の検査が必要となるため対応可能な高次医療機関への紹介となり、

同院にてクローン病の確定診断となり治療が開始となりました。

(当院では小腸の検査としてカプセル内視鏡は行っておりますが、クローン病では小腸に狭窄を伴っている可能性があり初回の検査としては行っておりません。)

 

下腹部痛の原因精査のためには大腸カメラを行うことが多く、異常がなければ「過敏性腸症候群」と診断されることは珍しくはありません。

ただ、治療しても改善がない場合などには今回のようなクローン病などの小腸疾患も考え、エコー検査なども行い正しい診断をし治療をすることが重要です。

お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

■関連ページ■

参考文献:1)Sakamoto N, Kono S, Wakai K, et al. Dietary risk factors for inflammatory bowel disease: a multicentercase-control study in Japan. Inflamm Bowel Dis 2005; 11: 154-163

2)Jostins L, Ripke S, Weersma R, et al. Host-microbe interactions have shaped the gene archiyecture of
inflammatory bowel disease. Nature 2012; 491: 119-124

3)Morgan XC, Tickle TL, Sokol H, et al. Dysfunction of the intestinal microbiome in inflammatory bowel disease and treatment. Genome Biol 2012; 13: R79

 
 

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