患者さんからの質問 ”胆石ががあると言われましたが、放置して大丈夫ですか?”
患者さんからよく伺う質問です。
Q:胆石があると言われましたが、放置して大丈夫ですか?
A:症状がなければ経過観察することも多いです。
ただし前述のように年2-4%程度の確率で発作や炎症を起こすリスクがあり、年間1~3%の方が重症化するというデータがあり、患者さんが希望すれば予防的に手術治療や薬での溶解療法を行います。
また総胆管結石の場合は胆管炎のリスクが非常に高いため内視鏡にて治療を行います。
以下胆石について詳しく解説します
そもそも胆石症とは?
胆石症は、胆のうや胆管に結石ができる病気です。
結石の存在する部位により、
- 胆のう結石
- 総胆管結石
- 肝内胆管結石
と呼ばれ、一般的には胆のう結石を胆石と呼んでいます。
胆石の原因は?
胆石のもとになる胆汁は消化液の一種で、肝臓で作られ胆管を通り胆のうに蓄えられ、必要に応じて分泌され消化を行います。
胆汁の成分が濃縮される過程の中で、胆汁成分の偏りや細菌感染により胆汁の成分が分解されることにより、結晶化され胆石となります。
結石が出来やすくなる要因としては、
- 肥満
- 年齢(40歳以上)
- 食生活(食べ過ぎ、炭水化物・糖質・脂肪の過剰摂取など)
- 高脂血症
- 急激な体重減少
- 胆のうの収縮機能や腸の蠕動運動低下
などが挙げられます。
また結石ができる過程の違いで色々な性状の石になり
- コレステロール胆石
- 色素胆石(ビリルビンカルシウム結石・黒色石)
- その他の稀な胆石(炭酸カルシウム石・脂肪酸カルシウム石など)
に分類されます
症状は?
無症状のことも多いのですが、
胆石が胆のうの出口にはまり込んでしまったり、胆管に詰まってしまうとみぞおち~右肋骨下あたりに激しい発作様の痛みを感じたり、右肩や背中の痛みが放散することもあります。
唐揚げや天ぷらなどの脂肪の多い食事を摂った2-3時間後に起こることが多く、詰まった胆石が抜け落ちたり外れたりすると一時的な発作で落ち着きますが、
胆石がはまってしまい取れなくなってしまうと炎症が起こり(胆のう炎や胆管炎)持続な強い痛みが出ます。
みぞおちあたりの痛みとして感じることが多く、「胃の痛み」と誤認することもしばしばです。
また胆のう炎や胆管炎になると発熱や黄疸や肝障害なども起こります。
検査は?
腹部エコー検査が非常に有効です。
腹部エコーは簡単に行うことが出来、胆石や胆管結石の指摘率が高く、胆石を疑う場合にはまず行います。
エコー検査で胆管内の結石が疑われる場合には、追加でMRIや内視鏡による胆管造影検査を検討します。
実際の胆石のエコー画像です。胆のうの出口部分に11㎜の胆石を認めています(黄線部)
また、胆のう炎や胆管炎を疑う際には、血液検査で肝酵素の数値や炎症の数値を確認し、治療方針を考えます。
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治療は?
・症状がある場合
胆のう炎を起こし持続する痛みがある場合には胆嚢摘出手術もしくは胆道ドレナージ(胆のうにたまった胆汁を体表部から管を刺して抜いてしまう治療)や内視鏡治療を行います
※手術やドレナージは入院治療となるため、必要時には高次医療機関へご紹介ししっかりと治療してもらえる診療体制を整えております。
・症状がない場合
検診や人間ドックで偶発的に胆石を指摘されても、症状がなければ基本的には様子見となります。
ただし、年2-4%程度の確率で発作や炎症を起こすリスクがあり、年間1~3%の方が重症化するというデータがあり、患者さんが希望すれば予防的に手術治療や薬での溶解療法を行います。
- A)手術の絶対的適応(症状がなくても手術をやった方がいい方)
- ①総胆管合流異常、総胆管嚢腫の存在
②充満胆石・胆のう壁肥厚・灰化萎縮胆のうなどで、胆嚢壁の観察が不十分な場合
③胆のうの機能異常がある場合
④胆のう癌の合併が疑われる場合
- B)手術の相対的適応(希望があれば手術をやってもよい方)
- ①結石が多数あり、発作や炎症の発症のリスクが高いと思われる症例
②心疾患などの基礎疾患があり発作時や緊急手術時のリスクが高い症例
③経過観察にて胆石が増加、増大してくる場合
④患者さんが希望する場合
治療法の詳細
① 外科手術
腹腔鏡手術
腹腔鏡で腹部に数か所・もしくは臍に1か所穴をあけて胆のうを摘出します。傷口が小さく体への負担が少ないため、最もよく行われる治療です。
開腹出術
以前に胃がんや大腸がんなどの大手術を受けられている方や、胆のう炎による炎症や癒着が強い方は開腹手術を選択することもあります。
◆胆のうを取っても大丈夫なの??
胆のうは消化液である胆汁を作る臓器と誤解されがちですが、実際胆汁自体は肝臓で作られ、胆のうは肝臓で作られた胆汁を一時的の貯めておく臓器です。
てすので、胆のう自体を摘出しても胆汁は作られるため消化できなくなるということはないため、胆のうがんのリスクがある際には摘出手術を行います
② 胆汁酸溶解療法 :
内服薬で徐々に胆石を溶かす方法です。直径15mm以下の胆石にはある程度は有効(溶解率:24-38%程度)ですが、石灰化を伴う結石には無効です。
また一旦溶解することが出来ても、薬を中止すると60%ほどの方が再発するため、基本的には続けていく必要があります。
症状や治療方針についてお困り・お悩みの方は当院にご相談ください。
実際の治療例
40代男性 食後しばらくしてからのみぞおちの痛み
【症状】
以前から度々食後しばらくしてとみぞおちの痛みを感じており、たまに激しい痛みとなることもありました。
かかりつけ医で胃カメラを受けて異常がなく、機能性ディスペプシア(胃酸の分泌過多や粘膜の知覚過敏で痛みを感じる状態)と診断され薬で様子見となりましたが、薬が効かず度々痛みを繰り返し、昨日に激痛が起こったとのことで当院を受診されました。
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【診察】
ご本人に詳しく話を聞くと、食後1-2時間してから痛むことが多く特に油物を食べた時は高頻度で起こり、昨日も天ぷらを食べてしばらくしてから激痛が起こったとのことで、胃というよりも胆石発作や胆嚢炎の可能性が高いと考え腹部エコーを行いました。
【検査】
エコー検査では胆のうの壁が腫れて厚くなっている状態で胆嚢炎を起こしている状態でした。
胆のうの壁が7㎜大と著明に肥厚し白く見えています。(矢印部分)
胆のう頚部(胆のうの出口付近)には巨大な胆石を認め、胆石がはまり込んだことによって起こる胆石胆嚢炎と診断しました。
胆のうの出口部分に30㎜超の巨大な胆石を認めました(点線部)
◆関連ページ◆
【治療】
胆石胆のう炎は胆のう内に出来た胆石が大きくなり、詰まってしまうことで発症する炎症で、食後2-3時間してからみぞおち~右上腹部の激痛で発症します。
一過性の発作の場合もありますが、繰り返す場合や痛みが取れない場合は胆のうを摘出する手術を選択することが多く、今回も患者さんと相談し手術する方針としました。
<治療内容>
胆石治療のため手術;入院しての治療となるため対応できる高次医療機関に紹介となりました。
【経過】
手術は無事に終了し、その後は食後の痛みは出ることはなくなり、診察終了となりました。
今回のように胆石や胆嚢炎はみぞおちの痛みとして感じることもあり、「胃の痛み」と考えられ、胃内視鏡(胃カメラ)を受け異常なしと診断されてしまい、「機能性ディスペプシア」や「心因性」といった誤った診断を受けてしまうことも少なくありません。
「みぞおちの痛み」があった場合には、胃内視鏡だけでなく腹部エコーも行い胆石の有無などの上腹部の臓器も併せてしっかりと確認することが重要です。
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胆石Q&A
Q:胆石は自然に消えますか?
A:自然に消えることは少なく、落石して十二指腸に排出され消失することは稀にあります。
Q:胆石ができるとどうなりますか?
A:胆のう炎などを起こした場合には食後2-3時間してみぞおちあたりに強い痛みが生じることがあります。
Q:胆石があると癌になりますか?
A:胆石と胆のう癌の発生に直接的な関係はないのではと言われています。
Q:胆石の予防のための食事改善法は?
A:下記のリスクに注意しましょう
胆石発生の増加因子:1日の総摂取カロリー数・炭水化物・糖質・動物性脂肪の過剰摂取・夜間の長時間の絶食など
胆石発生の低下因子:果実・野菜・ナッツ・食物繊維・植物性たんぱくなど
以上から、脂肪や糖質を過度にとりすぎず、野菜や食物繊維をとるような食生活が有効です。
文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介
(消化器学会・内視鏡学会専門医)