【実際の治療例】左わき腹の痛み…放置していたら「大腸憩室炎」でした
「左わき腹に鈍痛、そのうち治るだろう…」
そう思って様子を見ていたところ、徐々に痛みが強くなり、当院を受診され大腸憩室炎(けいしつえん)と診断された患者さんの実例です。
大腸の憩室と呼ばれる部位に起こる憩室炎は、初期であれば薬で改善しますが、放置すると入院が必要になることもあります。
早めの受診・診断・治療が重症化を防ぐ上で重要です。
巣鴨駅前胃腸内科ではWEB予約・電話予約を受け付けております。同様の症状でお困りの方は是非ご相談ください。
実際の治療例|50代女性「左わき腹の鈍痛」
【症状】
3日前から左わき腹に鈍痛が出現。
良くなるかと思い様子を見ていましたが、次第に悪化。歩くと響くような強い痛みとなったため当院を受診されました。
【診察】
左側腹部に強い圧痛を認め、何らかの炎症が起こっている状態でした。
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大腸憩室炎
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虚血性腸炎
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尿管結石
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卵巣疾患 などが考えられ、診断のため血液検査や腹部エコーなどを行いました。
【検査】
・血液検査:炎症反応(白血球とCRP)の上昇
・腹部エコー:下行結腸に憩室を認め、周囲に炎症による強い浮腫みの所見
以上から下行結腸憩室炎と診断しました
■実際のエコーの画像■
赤丸部分が憩室で周囲の大腸壁が肥厚しています(矢印部分)。大腸憩室炎の所見です
【大腸憩室炎とは?】
大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に膨らんだ「憩室(けいしつ)」というくぼみの部分に炎症が起こる病気です。
もともと「憩室」そのものは誰にでもできる可能性があり、加齢や腸の内圧上昇によって発生します。
日本では特に左側(S状結腸や下行結腸)にできやすく、便が滞留して細菌が増えることで炎症を起こします【1】【2】。
主な原因
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便秘や排便時のいきみ:腸内圧が高くなり、腸壁が押し出されやすくなる
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加齢による筋層の脆弱化:腸の壁が弱くなり、袋状構造が形成されやすくなる
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食物繊維不足:便が硬くなり、腸の負担が増す
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腸内細菌バランスの乱れ:腸の防御機能が低下し、炎症が起こりやすくなる
主な症状
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左下腹部や左わき腹の鈍痛・違和感
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発熱・下痢・便秘・お腹の張り
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炎症が強い場合には発熱や吐き気を伴うことも
放置するとどうなる?
軽度の憩室炎であれば抗菌薬などの内服で改善しますが、炎症が進むと膿瘍(のうよう)形成や穿孔(腸に穴が開く)を起こすことがあります。
このような状態になると、腹膜炎を起こして緊急入院や手術が必要となるケースもあります【3】。
再発予防のために
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規則的な排便を保つ(便秘の改善)
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食物繊維と水分を十分に摂取
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腸内環境を整える(整腸剤・発酵食品・i-katsuなど)
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ストレスをためない生活習慣を意識
再発を防ぐためには、「炎症を起こさせない腸環境づくり」が最も重要です。
▶関連ページ:
・大腸憩室症・憩室炎|より詳細な情報がご確認いただけます
【治療】
今回は幸いまだ軽症であり、抗菌薬と消化器症状を和らげる内服治療を行い、数日で痛みは軽快しました。
憩室の状態を正確に把握するため後日大腸内視鏡を行ったところ、下行結腸~S状結腸に多発する憩室を認め、
今後も繰り返すリスクがあり、再発防止のための生活指導を行い一旦治療は終了となりました。
■実際の大腸カメラの画像■
憩室(黄色部分)が多発していました
院長コメント
軽度の憩室炎であれば、薬で改善しますが、
放置すると膿瘍形成や穿孔を起こすこともあります。
「1日経っても痛みが治らない」「悪化している」場合は我慢せず、早めの受診をおすすめします。
腹痛のある方は是非ご相談ください。
📞 お電話でのご予約:03-5940-3833
よくある質問(FAQ)
Q1. 憩室炎は自然に治ることもありますか?
A1. 軽度であれば自然軽快することもありますが、再燃を繰り返すことが多く、医療機関での治療が安全です【1】。
Q2. 憩室炎のときに便秘薬は使っていいですか?
A2. 炎症がある急性期には避けたほうが良く、症状が落ち着いてから便通を整える治療を行います【2】。
Q3. 憩室炎と腸閉塞の違いは?
A3. 憩室炎は局所の炎症で、腸閉塞は腸の通過が遮断された状態です。症状や画像検査で区別します。
Q4. 憩室炎は再発しますか?
A4. はい。特に高脂肪食・便秘傾向の方では再発しやすいため、食事と腸内環境の改善が大切です【3】。
Q5. どんな食事に気をつければよいですか?
A5. 食物繊維を適度に取り、水分をしっかり摂ることが予防に役立ちます【3】。
Q6. 憩室炎の予防に整腸剤やサプリは有効ですか?
A6. 腸内環境を整える整腸剤・サプリは再発予防に役立つ可能性があります【4】。
まとめ
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左わき腹痛の原因として大腸憩室炎は比較的多い
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早期診断で内服治療のみで改善することが多い
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放置すると重症化するリスクあり
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腹部エコーやCTで早期に発見可能
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繰り返す場合は食生活の見直し・整腸が重要
即日のエコー検査や血液検査にも対応しております。お困りの方は是非ご相談ください。
お電話でのご相談・ご予約は03-5940-3833
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医師紹介
神谷雄介(かみや ゆうすけ)院長
📍経歴
国立佐賀大学医学部卒業後、消化器内科・内視鏡内科の道を歩み始め、
消化器・胃腸疾患の患者さんが数多く集まる戸畑共立病院・板橋中央総合病院・平塚胃腸病院にて研鑽を積む。
胃もたれや便通異常といった一般的な症状から、炎症性腸疾患や消化器がん治療まで幅広く診療を行いながら、
内視鏡専門医として年間3000件弱の内視鏡検査、および早期がんの高度な内視鏡治療まで数千件の内視鏡治療を施行。
2016年4月に巣鴨駅前胃腸内科クリニックを開業。
内視鏡検査だけでなく、胃痛・腹痛・胸やけや下痢などの胃腸症状専門外来や、がんの予防・早期発見に力を入れている。
- 日本内科学会認定医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
🩺 診療にあたっての想い
胃や大腸の病気は、早期発見・早期治療がとても重要です。
「気になるけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査は怖いし、つらそうで不安」
そんな方にも安心して診察や検査を頂けるうような診療を心がけております。お気軽にご相談ください。
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参考文献
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Strate LL et al. N Engl J Med. 2012;366:697–706.
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国立がん研究センター:大腸憩室症とは
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Peery AF et al. Gastroenterology. 2015;149:1272–1284.
-
Tan JY et al. World J Gastroenterol. 2020;26(14):1559–1570.
文責:巣鴨駅前胃腸内科クリニック院長 神谷雄介
(消化器学会・内視鏡学会専門医)
