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実際の治療例 “急性胃腸炎と診断されたが治らない”

[2024.06.04]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

50代 女性 急性胃腸炎と診断されたが治らない

 

症状

夕食後しばらくしてから、当然冷や汗が出るような強い下腹痛嘔吐があり、しばらくすると血便交じりの下痢も起こり夜間の救急病院を受診しました。

同院で血液検査とCTを行い「食あたりによる急性胃腸炎」と診断され、整腸剤と痛み止めを処方され帰宅となりましたが、腹痛は改善せず下痢・血便も続くため、朝に当院を受診されました。

 

診察

経過からは虚血性腸炎感染性腸炎などの腸炎が疑わるため、腹部のエコー検査を行い状態を確認してみることとしました。

 

検査

腹部エコーを行うと下行結腸~S状結腸にかけて広範囲の炎症像を認め、症状と合わせて虚血性腸炎と診断しました。

エコーでは虚血性腸炎に特徴的な下行結腸に広範な壁肥厚を認め(矢印部分)ました。

関連ページ:腹部エコー 虚血性腸炎 感染性腸炎

 

治療

「虚血性腸炎」とは、大腸に栄養や酸素を供給するための血管が一時的に詰まってしまうことで、大腸に炎症(粘膜のただれ・潰瘍など)が起こる病気です。

突然起こる腹痛下痢血便が特徴的で左側の下行結腸やS状結腸が好発部位といわれています。

 

血管が詰まる原因としては、大腸に血流を送る血管の問題大腸自体の問題があります。

・血管側の問題としては、高血圧症・糖尿病・高脂血症などによる動脈硬化・虚血性心疾患・不整脈などによる血流の低下があり、

・大腸の問題としては便秘腫瘍などによる腸管の狭窄大腸内視鏡検査浣腸下剤の服用による大腸の内圧の上昇があります。

基本的には高齢の方や、上記のような基礎疾患としてもつ場合に多くみられますが、若年者の方でも血管の一時的な痙攣でも起こると言われています。特に便秘の方はは虚血性腸炎発症リスクが 2.78 倍上昇するとの報告もあります 

 

<治療内容>

症状は2-4日で落ち着くことがほとんどで、外来で通院して頂きながら様子を見ることとしました。

治療としては、

・自宅安静

・痛みや下痢などの症状を抑える漢方や整腸剤などの内服薬

・食事療法(絶食からはじめ、症状の改善をみながら食事形態を上げていきます。)

を行いました。

 

経過

翌日には痛みはかなり改善し、食事制限を徐々に解除しましたが再燃なく無事に治療完了となりました。

後日、虚血性腸炎の原因となる病変(大腸ガンなどによる通過障害など)がないかを調べるため大腸内視鏡(大腸カメラ)を行いました。

結果は虚血性腸炎はほぼ治りかけで、ガンなどの病変もなく無事に診療終了となりました。

大腸内視鏡では虚血性腸炎に特徴的な片側性に発赤と引き連れを認めました(矢印部分) ほぼ治りかけの状態で、またガンなどの悪性所見もないため、診療は終了となりました。

 

虚血性腸炎と同様の腹痛や下痢・嘔吐といった症状は食あたりなどによる急性胃腸炎(感染性腸炎)炎症性腸疾患などでも起こることがあり、またCTでは鑑別がしにくいこともありしばしば誤診されてしまうことがあります。

適切に腹部エコーを行うことで正しい診断がつくことも多く、胃腸炎と診断されても症状が治らない場合は専門外来で改めて検査を行う必要があります。

また、虚血性腸炎の原因として大腸ガンによる狭窄などもあり得るため大腸内視鏡まで行っておくことも大切です。

 

関連ページ:大腸内視鏡(大腸カメラ)

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

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