実際の治療例 “明け方から始まった胃痛と嘔吐”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
50代女性 明け方から始まった胃痛と嘔吐
【症状】
明け方にみぞおちをつかまれるような強い胃痛で目が覚め、数回嘔吐。
その後も断続的に強い胃痛が続き、翌朝近所の内科を受診したところ、食あたりによる胃腸炎(感染性腸炎)と診断され投薬治療となりましたが、
周期的に強い胃痛が起こるとのことで同日の昼に当院を受診されました。
【診察】
前日の夕食に刺身を食べたとのことで、症状の原因として感染性腸炎以外にもアニサキス症を考えました。
感染性腸炎なのかアニサキス症なのかで治療方針が全く異なり、またアニサキス症の場合は胃と小腸のどちらかを見極める必要があり、まずは腹部エコーやレントゲンで状態を評価することとしました。
【検査】
◆レントゲン・エコー
レントゲンでは異常所見は認めませんでしたが、腹部エコーで胃の壁の限局的な肥厚を認め、
胃のアニサキス症を考え胃カメラを行うこととしました
実際のエコー画像です。胃の壁が13㎜大と限局性に肥厚しており(青矢印)、胃のアニサキス症を考えました
※感染性腸炎の場合はレントゲンで異常ガスが出現したり、腹部エコーで腸管の炎症像が描出されます。
また小腸アニサキスの場合は、小腸に限局的な壁の肥厚像を認めます。
◆胃カメラ
胃の壁に食いついたアニサキスを認め、周囲の粘膜が浮腫を起こしている状態でした。
実際の胃カメラの画像です。黄色い中の白く細長いものがアニサキス虫体です。
胃の壁にしっかりと食いついており、鉗子を用いて回収しました
【治療】
アニサキスによる痛みは、アニサキスが胃壁に食いつくことで体がアニサキスを異物と認識してアレルギー反応を起こすことで誘発されます。
ですので、アレルゲンであるアニサキスを取り除くことで症状が消えることがほとんどです。
今回も胃カメラ終了後には痛みは消え、無事に治療完了となりました。
アニサキス症はイカやサバ・アジなどの海鮮を食べて数時間後に激しい胃痛として発症することが多く、嘔吐や軟便などを伴うことも少なくなく、
海鮮を摂取後の「胃痛」「嘔吐」「軟便」という症状からだけではアニサキスか胃腸炎か迷うこともあります。(実際に最初のクリニックでは胃腸炎と誤診されていました)
感染性腸炎の場合は投薬治療を行いますが、アニサキス症の場合は胃カメラによる治療が必要になるため、適切な診断をつけることが重要で、
エコーやレントゲンなどを組み合わせることで判断できることが多く、当院では症状のある方に積極的に検査を行い診断に役立てています。
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文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)