実際の治療例 “発作のような胃の激痛で胃痙攣と言われた”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
50代男性 発作のような胃の激痛
【症状】
昨晩に胃の激痛があり救急外来を受診。
「胃痙攣」と言われ一旦投薬で帰宅となりましたが、朝になっても痛みが続くとのことで当院を受診されました。
【診察】
以前にも同様の発作様の胃の激痛を数回起こしており、いずれも食後2時間位してからの痛みとのことと、
昨日も夕食に唐揚げを食べてしばらくしてから激痛が起こったとのことで、胃というよりも胆石発作や胆嚢炎の可能性が高いと考え腹部エコーを行いました。
【検査】
エコー検査では胆のうが腫大し壁が腫れて厚くなっている状態で胆嚢炎を起こしている状態でした。
実際のエコー画像です。胆のうの短径が50㎜大と腫大し(青矢印)、壁が3㎜大と肥厚し(赤矢印)白く見えています。
胆のう頚部(胆のうの出口付近)には胆石を認め、胆石がはまり込んだことによって起こる胆石胆嚢炎と診断しました。
胆のうの出口部分に11㎜大の胆石がはまり込んでいる状態でした。(黄色円部分)
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【治療】
胆石胆のう炎は胆のう内に出来た胆石が大きくなり、詰まってしまうことで発症する炎症で、食後2-3時間してからみぞおち~右上腹部の激痛で発症します。
一過性の発作の場合もありますが、繰り返す場合や痛みが取れない場合は胆のうを摘出する手術を選択することが多く、今回も繰り返していることから患者さんと相談し手術する方針としました。
<治療内容>
胆石治療のため手術;入院しての治療となるため対応できる高次医療機関に紹介となりました。
【経過】
手術は無事に終了し、その後は食後の痛みは出ることはなくなり、診察終了となりました。
胆石発作や胆のう炎は右の肋骨の下あたりからみぞおちの痛みとして感じることもあり、「胃の痛み」と考えられてしまい、誤った診断を受けてしまうことも少なくありません。
胆のう炎は軽症であれば手術ではなく抗生剤の内服や点滴で治療することも可能であり、
そのためには「胃の痛み」があった場合には、胃カメラだけでなく腹部エコーも行い、胆のうなどの上腹部の臓器も併せてしっかりと確認し適切な診断をすることが重要です。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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