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実際の治療例 “朝から始まった急激な腹痛と嘔吐”

[2025.01.18]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

30代 男性 朝から始まった急激な腹痛と嘔吐

【症状】

本日朝10時ころから急に腹痛が始まり、数回嘔吐。

かかりつけの内科を受診したところ「食あたりによる胃腸炎」と診断され、投薬され帰宅となりましたが、その後も腹痛が続き2度ほど嘔吐があったとのことで同日の夕方に当院を受診されました。

 

【診察】

急激に発症する腹痛と嘔吐という症状からは

  1. 食あたりなどによる感染性腸炎
  2. 血管閉塞による虚血性腸炎・急性腸炎
  3. 腸閉塞
  4. 急性虫垂炎

などが考えられます。

前医では特に検査をしておらず症状のみでの診断であったため、腹部エコーレントゲン血液検査で状態を評価してみることとしました。

 

【検査】

腹部レントゲンでは異常ガスなどはありませんでしたが、

腹部エコーでは虫垂の腫大を認め、血液検査にて炎症反応の上昇があり、急性虫垂炎(いわゆる盲腸)と診断しました。

実際のエコー画像です。右下腹部にある虫垂が10㎜大と肥厚しており(正常は6㎜以下)、急性虫垂炎と診断しました。

【治療】

エコー検査では虫垂の穿孔(穴が開くこと)はなく、血液検査でも炎症は軽症であり、抗生剤の点滴で炎症を散らすこととしました。

翌日の再診時には痛みはかなり落ち着いており嘔吐も消失していました。

血液検査でも炎症は改善傾向となっており、その後3日間抗生剤を続け、最終的に痛みの改善・エコーや血液検査でも炎症の鎮静化を確認し、一旦治療終了としました。

 

虫垂炎は発症初期は上腹部やみぞおちの痛みで発生し、痛みが強いと嘔吐してしまうこともあり、感染性腸炎の症状と似ているため誤診されてしまうこともあります。

ただ、適切な検査をすれば診断がつくことがほとんどなので、当院では腹部エコーや血液検査などを行い、なるべく早期に正しい診断をつけることに力を入れています

そして今回のように発症初期の軽症の状態で診断をつけることが出来れば、抗生剤治療でほとんどの場合が改善します。

ただし、散らした場合は15~30%程度の再燃リスクもあるため※1、落ち着いた後に1-3か月をめどに予防的に虫垂を切除する手術を行うケースもあります※2

また、糞石などの重症化のリスクがある場合痛みが激しい場合穿孔が疑われる場合などは緊急OPEになる可能性があり、

そのような場合は当院では速やかに高次医療機関にご紹介し、緊急OPEにも対応してもらえる医療体制で治療を行ってもらえるようにしております。

 

参考文献:※1)Tekin A, Kurtoglu HC, Can I, et al: Routine interval appendectomy is unnecessary after conservative treatment of appendiceal mass. Colorectal Dis 10:465-468,2018

※2)前田 大,藤崎真人,高橋孝行ほか:成人の虫垂膿瘍に対する interval appendectomy.日臨外会誌 64:2089-2094,2003

 

◆関連ページ:

 

参考文献:

1)Barbara G, Grover M, Bercik P, et al. Rome Foundation working team report on post-infection irritablebowel syndrome. Gastroenterology 2019; 156: 46-58.e7 , 過敏性腸症候群ガイドライン2020:p5-6

一般社団法人日本感染症学会,公益社団法人日本化学療法学会 JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会 腸管感染症ワーキンググループ:JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 ―腸管感染症―.感染症誌2015;90:31-65

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

WEB予約へ TEL:03-5940-3833

 

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