実際の治療例 “区の検便検査(便潜血)陽性で受診された2名”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
区が実施している大腸がん検診の検便検査(便潜血)陽性で受診された2名の患者さんのそれぞれの検査結果です。
それぞれ自覚症状はありませんでしたが、便潜血検査は大腸がん検診の位置づけであり陽性の方には大腸がんのリスクがあることをご説明し、大腸内視鏡検査を受けていただくことにしました。
検査結果は大きく異なるものでした。それぞれ見ていきましょう
① 50代男性
【内視鏡検査】
大腸内視鏡検査ではガンやポリープなどは認めませんでしたが、内痔核(直腸の出口にある静脈叢がうっ血して浮腫んだ状態)を認め、便潜血反応陽性の原因と診断しました。
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【治療】
内痔核は悪化すると下血したり肛門から突出して痛みや違和感の原因となりますが、今回は自覚症状はなく、うっ血しないために排便時にいきまないなどの生活習慣指導で経過観察としました。
② 60代女性
【内視鏡検査】
内視鏡検査では直腸ガンを認め、便潜血検査陽性の原因と考えました。
【治療】
内視鏡診断では進行がんが疑われ内視鏡治療の適応はなく、外科的に手術を行いました。幸い進行度はI期と早い段階だったため転移の心配もなく手術にて根治することができました。
区検診の検便検査(便潜血検査)は便中の血液の混入をチェックする検査なので、①の方のように単なる「痔」のこともありますが、検査陽性の方に大腸内視鏡を行ってみると3%程度の方に大腸がんが見つかるとのデータがあり、実際に②方のようにガンが見つかるケースもあります。
ただ検査をしてみないことには、「ガン」なのか「それ以外の痔などの良性疾患」なのかは判別がつかず、ガンだった場合には進行すると命にかかわることとなり、また便潜血陽性反応後に大腸内視鏡を施行しなかった方は施行した方に比べ、直腸ガン・大腸ガンによる死亡率が2倍以上になったとの報告(※1)もあり、
便潜血陽性の方は自覚症状がなくてもやはり大腸内視鏡を受けることが大切だと考えます。
※1 参考文献;Zorzi M et al Gut 2022;71(3):561-567
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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