実際の治療例 “電車に乗るとトイレに行きたくなってしまい困っている”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
20代 男性 電車に乗るとトイレに行きたくなってしまい困っている
【症状】
以前からお腹を下しやすい体質でしたが、就職して電車通勤するようになり「一度電車でお腹を下しそうになり途中下車する」ということがあり、それ以来電車に乗るとほぼ毎回トイレに行きたくなってしまい途中下車するような状態となってしまい、何とかしたいとのことで当院を受診されました。
【診察】
症状からは過敏性腸症候群※1という腸に異常がないにもかかわらず慢性的に腹痛や便秘・下痢などの便通異常を繰り返す疾患を疑いました。
ただ慢性的な下痢の原因として、過敏性腸症候群以外にも潰瘍性大腸炎や感染性腸炎などの可能性もあるため、ご本人と相談して腹部エコーやレントゲン・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行い、実際に大腸に異常があるかどうかを確認することとしました。
◆関連ページ◆
【検査】
腹部レントゲンでは異常ガスなどはなく、腹部エコーでは異常所見は認めませんでした。
大腸カメラも問題ない状態で、過敏性腸症候群との診断となりました。
【治療】
腸の運動は自律神経やセロトニンというホルモンが調整しています。
不安や緊張といった心因的ストレスや、不規則不摂生な生活・過労や気候の変化などの環境的なストレスが続くと、自律神経がうまく働かなくなったり、腸の粘膜からセロトニンが過剰に分泌されたりすることで、腸の運動の調整がうまくいかなくなり過敏性腸症候群が発症してしまします。
今回のケースでは、すぐにトイレに行くことが出来ない電車の中で切迫した便意があり途中下車したというエピソードがあり、次回も同様の症状が生じたらどうしようという不安感があり、その不安感が過敏性腸症候群を誘発していると考えました。
そしてその不安感が腸の運動の不具合を助長し、さらに不安時に便意を来してしまうという悪循環になっていると考えられました。
治療としては、セロトニンの過剰分泌による下痢を抑える薬や漢方を使用し経過を見ることとしました。
■治療内容■
・5-HT3受容体拮抗薬
不安やストレスによって腸管からセロトニンというホルモンが分泌され下痢を誘発します。
セロトニンの作用を抑える薬を使用することで下痢の発症を抑えます。
・漢方薬
セロトニンの分泌過剰や自律神経に不具合によって腸の過剰な蠕動が引き起こされ下痢が起こります。
過剰な蠕動を抑制し正常な状態に保つ働きのある漢方を服用し下痢を抑えます。
【経過】
薬を飲み始めて数日で効果は出始め、1週間ほどで電車に乗っていても切迫するような便意を感じることはほとんどなくなりました。
漢方は体質改善の効果も期待でき副作用も出にくいため常用を続けてもらい、5-HT3受容体拮抗薬は頓服で使用していただくこととしましたが、落ち着いた状態が続いておられます。
「不安感がストレスになり、さらに症状を起こす」という状態であったため、症状の改善とともに安定した状態になったと考えられます。
ただ、症状が過敏性腸症候群に合致する場合でも、調べてみると実は過敏性腸症候群ではなく、潰瘍性大腸炎といった他の病気の可能性もあるため、
まず最初に大腸カメラなどの検査を行い本当に過敏性腸症候群が見極めた上で治療を行っていくことが重要です。
症状でお悩みの方はお力になれると思いますので当院までご相談ください!
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
■関連ページ■