実際の治療例 “突然始まった冷や汗を伴う強い下腹部痛”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
20代 女性 突然始まった冷や汗を伴う強い下腹部痛
【症状】
もともと便秘気味でしたが、最近は悪化気味で5日ほど排便がない状態でした。
便秘が続く中、夜間にいきなり強い腹痛が出現。便が出れば楽になるだろうとトイレに行き排便をしましたが全く改善せず、痛みで冷や汗も出てきたため近くの救急病院を受診。
腹部CTを施行したところ下腹部が張れ炎症と思われる所見があり、大腸カメラを受けるうように言われたとのことで当院を受診されました。
【診察】
問診からは虚血性腸炎や感染性腸炎などの一過性の腸炎が疑われ、ご本人と相談し実際に大腸カメラを行って状態を把握することとしました。
【検査】
大腸内視鏡を行うと下行結腸からS状結腸にかけて区域性のある炎症を認め、虚血性腸炎に合致する所見でした。
関連ページ:大腸内視鏡(大腸カメラ)の詳細へ
【治療】
「虚血性腸炎」とは、大腸に栄養や酸素を供給するための血管が一時的に詰まってしまうことで、大腸に炎症(粘膜のただれ・潰瘍など)が起こる病気です。
突然起こる腹痛・下痢・血便が特徴的で左側の下行結腸やS状結腸が好発部位といわれています。
血管が詰まる原因としては、大腸に血流を送る血管の問題と大腸自体の問題があります。
・血管側の問題としては、高血圧症・糖尿病・高脂血症などによる動脈硬化・虚血性心疾患・不整脈などによる血流の低下があり、
・大腸の問題としては便秘,大腸内視鏡検査,浣腸,下剤の服用による大腸の内圧の上昇があります。
基本的には高齢の方や、上記のような基礎疾患としてもつ場合に多くみられますが、若年者の方でも血管の一時的な痙攣でも起こると言われています。特に便秘の方はは虚血性腸炎発症リスクが 2.78 倍上昇するとの報告もあります
<治療内容>
今回は便秘を契機に発症した虚血性腸炎と考えられましたが、症状は2-4日で落ち着くことがほとんどで、外来で通院して頂きながら様子を見るこ詳細へ安静
・症状を抑える漢方や整腸剤などの内服薬
・食事療法(絶食からはじめ、症状の改善をみながら食事形態を上げていきます。)
を行いました。
【経過】
翌日には痛みはかなり改善し、食事制限を徐々に解除しましたが再燃なく無事に治療完了となりました。
虚血性腸炎は突然発症する
・腹痛(左の側腹部~下腹部に多い)
・下痢
・血便
の3つが特徴的ですが今回のように腹痛だけという方もおられます。
また虚血性腸炎は腹部エコーで診断がつくことも多く、極々稀ではありますがを来し腹部の膨満感や嘔吐を起こしたり、腸管壊死を起こしショック状態になることもあり、腹痛が長引く際、痛みが強い際は我慢せず医療機関を受診することが重要です。
関連ページ:腹部エコー
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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