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実際の治療例 “食べるとすぐに腹痛と下痢が起こり困っている”

[2024.12.04]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

20代 女性 食べるとすぐに腹痛と下痢が起こり困っている

 

【症状】

数年前から食後に腹痛と下痢が度々起こり、ここ数か月は毎日のように起こってしまい、症状が気になって外食もできない状態になってしまったとのことで当院を受診されました。

 

【診察】

食後に起こる下痢や腹痛の原因としては、

  • 慢性膵炎などの膵臓疾患
  • クローン病などの小腸疾患
  • 潰瘍性大腸炎・感染性腸炎などの大腸疾患
  • ストレスや不安で起こる過敏性腸症候群

などが考えらえ、血液検査エコー検査大腸カメラを行い状態を確認することとしました。

 

【検査】

血液検査では膵臓の数値の異常や腸炎などによる炎症反応は認めず、腹部エコーでも膵炎や小腸疾患などを疑う所見はありませんでした。

また、大腸カメラでも異常所見はなく、症状と合わせて過敏性腸症候群と考えました

大腸粘膜には炎症などの異常はなく綺麗な状態でした

 

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【治療】

過敏性腸症候群とは、腸に異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や便秘・下痢などの便通異常を繰り返す疾患です。

もともと腸の運動は自律神経セロトニンというホルモンが調整しています。

不安や緊張といった心因的ストレスや、不規則不摂生な生活・過労や気候の変化などの環境的なストレスが続くと、自律神経がうまく働かなくなったり、腸の粘膜からセロトニンが過剰に分泌されたりすることで、

腸の運動の調整がうまくいかなくなり過敏性腸症候群が発症するのではないかと考えられています。

 

症状としては腹痛・張り・違和感、下痢や便秘といった便通異常などを起こします。

 

今回は食事をとった際に腸管が過剰に蠕動することで腹痛を生じ、また腸管からのセロトニンが過剰に分泌することで下痢が生じたと考え、そこに対しての治療を行いました。

 

<治療内容>

投薬治療

セロトニン3受容体拮抗薬

セロトニンの過剰な分泌を抑え下痢を起こしにくくしてくれます。

ただ量によってはお腹の張りなどの副作用が出てしまったり、やめると症状が再燃することが多いため、過敏性腸症候群の体質を変えていくような漢方薬を併用しました。

 

漢方薬

腹痛に対しての処方です。腸の過蠕動(動きすぎ)や知覚過敏に対して効果があり、知覚過敏などの体質も改善してくれる効果があります。

 

抗不安薬

外食時に腹痛や下痢が起こったらどうしようという不安感が強く、そのような不安感が過敏性腸症候群をさらに助長してしまうため、不安時には眠気の来ないような軽い抗不安薬を屯用することとしました。

 

【経過】

治療開始すると1週間ほどで下痢・腹痛の頻度は明らかに減少し、3週間ほどで症状はほとんど出なくなり、セロトニン3受容体拮抗薬は一旦中止としました。

 

その後は漢方をベースに処方を続けておりますが、症状は安定しており、極稀に食後に腹痛が起こったらセロトニン3受容体拮抗薬を飲んで落ち着ける、外食が不安な時には抗不安薬を頓服して症状が出ないようにする、といったような具合で薬を減薬して症状とうまく付き合って頂いています。

 

薬を減らしても大丈夫になった理由としては、漢方や整腸剤による体質改善に加え、「下痢や腹痛になったらどうしよう」ということがストレスとなり、それがまた腸に影響するという悪循環に陥ってたため、痢・腹痛が落ち着いたことで不安要素が改善され、減薬していくことにつながったと考えられます。

 

過敏性腸症候群は「体質的なものだから治らない」と思われている方も多いですが、適切な治療で症状を落ち着け不安を取り除き漢方などで体質改善をすることでしっかりとコントロールが出来る疾患です。

あきらめずに治療に取り組みましょう!

 

また、同じような症状であっても過敏性腸症候群ではなく、疾患が隠れていることもあるため、過敏性腸症候群と診断する際にはしっかりと大腸カメラなどの検査を受けることも大切です。

 

◆関連ページ◆

実際の治療例「過敏性腸症候群が治らない➡実は潰瘍性大腸炎だった」

 

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

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