実際の治療例 “のどの違和感・つまったような感覚が治らない”
当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。
20代 男性 のどの違和感・つまったような感覚
【症状】
3か月ほど前から何となくのどの辺りの違和感が出始め、徐々にその違和感が強くなり、1カ月ほど前からはのどがつまったような感じになってきたとのことで、当初耳鼻科を受診されました。
耳鼻科で喉頭鏡(鼻から細いファイバースコープを入れてのどを観察する検査)の検査をしても異常はなく、「ストレスによるもの」と言われ様子を見るように言われましたが、やはり改善がなく症状が気になるとのことで当院を来院されました。
【診察】
「胸やけなどの症状はないが食後に痰が絡むような感覚もある」との訴えもあり、逆流性食道炎・咽喉頭逆流症などの胃酸逆流関連の症状と、またのどの違和感やつまったような感じは常にあるものの、仕事などに集中しているときは忘れることもあるとのことで咽頭の知覚過敏も関連していると考えました。
【検査】
逆流性食道炎・咽喉頭逆流症などの病変が本当に起こっているが、のどにつまりの原因となる腫瘍などの出来物がないかなどを確かめるために胃内視鏡(胃カメラ)を行いました。
内視鏡では腫瘍などの病変はなく、図のように逆流性食道炎:グレードA※を認めました。
※逆流性食道炎の分類についてはこちらをご参照ください。
ただ、内視鏡上はのどの粘膜は正常で逆流による炎症は及んでいなかったため、やはり咽頭の知覚過敏もあると考えました。
(咽頭知覚過敏になると、通常の状態ではあまり気にならない程度の刺激・内視鏡でも所見にならない程度のわずかな胃酸逆流の刺激でも、違和感やつまりとして感じることがあります。)
【治療】
内視鏡で逆流性食道炎を認めたため胃酸の逆流を抑える薬と、のどの知覚過敏を抑える漢方薬を併用することとしました。
また合わせて胃酸の分泌過多・逆流を抑えるための生活習慣の改善を指導しました。
<治療内容>
1.制酸薬
胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌過多を適正化してくれることで逆流を抑えてくれます
今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。
2.漢方薬
のどの知覚過敏を改善する薬です。
のどに病変がないにも関わらず、のどの症状がある方にはよく効いてくれます。
3.生活習慣指導
ストレスが多く、ついついアルコールをたくさん飲んでしまうとのことでした。
アルコールは食道の運動機能を低下させ食道の内圧が下げてしまい逆流を起こしやすくするため、症状があるうちは控えて頂くようにしました。
また、忙しく時間がないせいで早食いになりがちとのことで、ゆっくりよく噛んで食べてもらうことも心掛けるようにしました。
早食いしてしまい、食べ物が大きい形のまま胃内に入ってくると消化に時間がかかり、胃内に滞留してしまい逆流性食道炎の一因となるためです。
【経過】
1週間後に再診して頂くと、食後のたんがらみはなくなり、のどの違和感もすこし程度と頻度が減ってきたとのことでした。
更にもう2週間薬を続けると、かなり症状がとれたとのことでした。
ただ、朝起きた時に少しのどの違和感を感じやすいとのことで、PPI(制酸剤)の服薬時間を寝る前に変更し夜間の酸分泌過多を抑えたところ、次の再診の時には朝の症状もなくなりのどの違和感はなくっていました。
生活習慣の改善も続けているとのことで、今度は薬を徐々に減らしていきましたが、症状の再燃はなく、そのまま薬は中止し、経過をみましたが、症状の再燃はありませんでした。
このように逆流性食道炎によるのどの違和感は薬で治療するとともに、生活習慣も改善していくことで再燃を防ぐことができ、薬も減らしていくことが出来ます。
また、逆流性食道炎の原因となる胃酸の分泌過多や胃の蠕動運動の低下には、胃内細菌叢なども関連しているといわれており、胃内細菌叢の改善や過剰な胃酸の分泌を正常な状態に保つ成分(胃由来の乳酸菌や生薬)を含んだサプリを服用して頂き、症状の再燃を抑えたり体質改善を行うこともあります。
※サプリは食品ですので、通常は副作用が出ることがなく、長期に安全に飲んで頂けるというメリットもあります。
※i-katsuを使った他の治療例は “i-katsuの治療例” からご覧いただけます。
文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)
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