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実際の治療例 “食後の胃痛が悪化した(胃潰瘍)”

[2024.04.07]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

40代男性 食後の胃痛の悪化

 

症状

2-3週間ほど前から食後に胃痛を感じていたものの、しばらくすると落ち着くので様子をみていましたが、昨日から痛みが強くなったとのことで当院を受診されました

 

診察

食後に感じる痛みは

  • 胃潰瘍
  • 胃酸分泌過多などの胃の機能異常
  • 胆石症などの胆のう疾患
  • 膵炎などの膵疾患

などの患が原因として考えられるため、腹部エコー胃内視鏡(胃カメラ)にて状態をチェックすることにしました。

 

検査

腹部エコーでは胆のうや膵臓に異常は認めませんでしたが、胃潰瘍を疑う所見がありました

胃の一部に潰瘍と思われる領域を認め(丸で囲まれた部位)、周囲の胃壁が潰瘍による炎症によって腫れている状態です(矢印部分)。

 

実際に胃内視鏡(胃カメラ)を施行したところ、胃の出口付近に胃潰瘍を認めました

胃の出口付近にえぐれて窪んだ部分があります(青丸部分)。ここが胃潰瘍部分で、内視鏡で見ると中心が白みがかった窪みとして認識されます。表面の粘膜が炎症により欠損した状態です。

潰瘍部分に近接して見てみるとしっかりとしたくぼみとして認識されます

関連ページ:・腹部エコー ・胃内視鏡(胃カメラ) ・十二指腸潰瘍 ・胃・十二指腸潰瘍瘢痕

 

治療

胃潰瘍はピロリ菌薬剤性で発症する粘膜障害で、粘膜が炎症を起こして表面がえぐれてしまう状態です。

胃の粘膜は常に胃酸にさらされていますが、健康な状態では粘膜の防御機能によって胃酸により粘膜が傷つかないようになっています。

ただ、ピロリ菌痛み止めの薬などによりこの防御機能がうまく機能しなくなり、粘膜が傷つきただれてしまい、ついには一部が欠損し潰瘍になってしまいます。

胃潰瘍の場合は食後の胃痛として感じることが多く、悪化すると潰瘍から出血したり穿孔(胃に穴が開くこと)し、緊急内視鏡や緊急手術になることもあります。

今回は潰瘍の程度はひどくなく出血もないことから薬で治療することとしました。

<治療内容>

①制酸薬

胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌を抑えることで、胃の粘膜の再生力で潰瘍は治癒していきます。今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。

②粘膜保護薬

胃の粘膜の防御機能を高め、潰瘍による胃痛を抑え改善をより早めます。

 ③食事指導

食事についてはしばらくの間は刺激の少ない粥食や消化のよい和食系のものを召し上がっていくこととしました。

 

【経過】

投薬開始翌日には痛みは取れ、1週間後の再診時には痛みはほぼなくなったとのことでした。食事は通常食に戻し内服を続け、1か月後の再診時もほぼ問題ない状態でした。

胃潰瘍は90%近くがピロリ菌が原因となっており、今回もピロリ菌が陽性であったため除菌も行うこととしました。

(実際にピロリ菌除菌後の潰瘍の再発率は 1~2%と極めて低いことが報告されています※1。詳しくは、ピロリ菌と潰瘍の関係を参照ください。)

 

抗生剤と制酸剤の組み合わせを1週間飲んでもらい、1か月後に再診をして頂き、呼気検査にてピロリ菌の除菌成功を確認しました。

ただ、ピロリ菌除菌後も胃がんのリスクがあるため※2、胃カメラは定期的に行っていく方針としています。

 

十二指腸潰瘍や胃潰瘍は悪化すると出血したり、十二指腸・胃に穴が開いたり(穿孔)することもあるため、慢性的な痛みやその増悪、または強い胃痛背部痛がある場合は腹部エコーや胃カメラの検査を行うことが大切です。

また、症状がある場合にすぐに胃カメラを行う必要があるかどうかの判断には、今回のように腹部エコーが有用な場合も多く、当院では積極的に腹部エコーも行い、内視鏡検査の適切なタイミングを逃さないようにしております。

参考文献:※1Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16

※2Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer 2019;

 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

■関連ページ■

ピロリ菌外来

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