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実際の治療例 “黒い便が出た(十二指腸潰瘍)”

[2024.03.31]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

50代男性 黒い便が出た

 

症状

2日前に黒い便が出て、3度ほど続いたとのことで来院されました。

 

診察

黒い便の原因としては上部消化管からの出血から起こることが多く、血液中の鉄分が吸収され便が黒色になります。

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
  • 胃がん
  • 小腸出血

などの疾患が原因として考えられるため、胃内視鏡(胃カメラ)にて状態をチェックすることにしました。

関連ページ:・血便外来

 

検査

胃内視鏡(胃カメラ)を施行したところ、十二指腸潰瘍を認め、今回の黒い便の原因と診断しました

青丸で囲まれた領域が十二指腸潰瘍になります。 観察時には出血は止まっていましたが、矢印部分の黒ずんだ部分が出血をした後にみられる変化です。

胃の中にはピロリ菌による萎縮性胃炎を認め、ピロリ菌が今回の潰瘍の原因と考えました。

関連ページ:・胃内視鏡(胃カメラ) ・十二指腸潰瘍 ・胃・十二指腸潰瘍瘢痕

胃カメラの詳細はこちらから

 

治療

十二指腸潰瘍はピロリ菌薬剤性で発症する粘膜障害で、粘膜が炎症を起こして表面がえぐれてしまう状態です。

粘膜は常に胃酸にさらされていますが、健康な状態では粘膜の防御機能によって胃酸により粘膜が傷つかないようになっています。

ただ、ピロリ菌痛み止めの薬などによりこの防御機能がうまく機能しなくなり、粘膜が傷つきただれてしまい、ついには一部が欠損し潰瘍になってしまいます。

十二指腸潰瘍は食後に胃痛や背部痛が出たり、悪化すると今回のように潰瘍から出血し黒色便が出たり、穿孔(胃に穴が開くこと)し、緊急内視鏡や緊急手術になることもあります。

今回は幸いにも潰瘍の程度はひどくなく、出血も止まっていたことから薬で治療することとしました。

 

<治療内容>

①制酸薬

胃酸の分泌過多を抑える薬です。胃酸分泌を抑えることで、粘膜の再生力で潰瘍は治癒していきます。今回はプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を処方しました。

②粘膜保護薬

胃の粘膜の防御機能を高め改善をより早めます。

 ③食事指導

食事についてはしばらくの間は刺激の少ない粥食や消化のよい和食系のものを召し上がっていくこととしました。

 

【経過】

その後は黒い便は出ることはなく、2週間後の再診時も問題ない状態でした。

十二指腸潰瘍は90%近くがピロリ菌が原因となっており、今回もピロリ菌が陽性であったため除菌も行うこととしました。

(実際にピロリ菌除菌後の潰瘍の再発率は 1~2%と極めて低いことが報告されています※1。詳しくは、ピロリ菌と潰瘍の関係を参照ください。)

 

抗生剤と制酸剤の組み合わせを1週間飲んでもらい、1か月後に再診をして頂き、呼気検査にてピロリ菌の除菌成功を確認しました。

ただ、ピロリ菌除菌後も胃がんのリスクがあるため※2、胃カメラは定期的に行っていく方針としています。

参考文献:※1Miwa H, Sakaki N, Sugano K, et al. Recurrent peptic ulcers in patients following successful Helicobacterpylori eradication: a multicenter study of 4940 patients. Helicobacter 2004; 9: 9-16

※2Sugano K. Effect of Helicobacter pylori eradication on the incidence of gastric cancer: a systematic review and meta-analysis. Gastric Cancer 2019;

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

■関連ページ■

血便外来

ピロリ菌外来

十二指腸潰瘍

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