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実際の診療例 “痛みが強すぎて大腸カメラが受けれない”

[2024.08.20]

当院を受診された患者さんの実際の治療経過です。

 

40代 女性 痛みが強すぎて大腸カメラが受けれない

 

【症状】

会社で受けた検診で便潜血陽性を指摘され、近所にある消化器内科で大腸内視鏡(大腸カメラ)を受けたところ、鎮静剤を使ったにもかかわらず検査中の痛みが強すぎて目が覚めてしまい、痛みが辛く検査が続行できずに途中で中断となってしまい、当院で改めて大腸カメラを受けたいとのことで来院されました。

 

【診察】

便潜血検査は「大腸がん検診の位置づけであり、陽性の方に大腸内視鏡を行うと3%程度にガンが見つかっている」ため、大腸カメラを行い精査することが望ましく、当院にて再度検査を行うこととしました

関連ページ:

便潜血陽性の時は内視鏡をうけた方がいいの? 

 

【検査】

前回他院で行った大腸カメラの際に痛みが強かったとのことであり、下記のような工夫を行い検査を施行しました。

・痛みの出にくい挿入法(軸保持短縮法+潜水法+圧迫法を合わせた当院独自の低痛挿入法)

・痛みの出にくい細く柔軟性の高いスコープの使用

・鎮静剤の工夫(眠るタイプの鎮静剤だけではなく、疼痛も抑えるタイプの鎮静剤との組み合わせ)

 

実際に検査を行うと、S状結腸のカーブとたわみが強く、確かに難しいタイプの大腸ではありましたが、

上述の工夫の甲斐もあり今回の検査は痛みを感じることなくスムーズに最後まで行うことが出来ました。

 

また大腸ガンはありませんでしたが、ガンのリスクになるポリープを認めたため切除しました。

横行結腸にポリープ(青丸部分)を認め切除しました。大腸がんのほとんどはポリープから発生するため、ポリープを見つけて切除することが将来的な大腸がんの予防につながります。

内視鏡治療後も合併症なく経過し、切除したポリープの病理検査結果も良性で今回は無事に診療終了となりました。

 

 

大腸内視鏡時の痛みの原因として、

  1. 医師のスキルが低い
  2. 患者さんの大腸の形や癒着の影響
  3. 鎮静剤の使い方が適切でない

といったことが考えられます。

 

当院では

  • 内視鏡のエキスパートである専門医の院長が内視鏡検査を行い、
  • 患者さんの大腸の状態に合わせてスコープの種類を変えたり、
  • お一人お一人に合わせ鎮静剤を調整する

ことで、苦痛のない検査を受けていただくようにしております。

 

それぞれ具体的に解説していきます。

1.内視鏡のエキスパートである専門医の院長が内視鏡検査

大腸内視鏡検査は医師のスキルの差がはっきりと出る検査です。
ちゃんとした内視鏡の熟練の医師が検査を行えば、痛みなく受けられるケースが大多数なのです。
 
内視鏡の挿入法にはいくつか方法があり、単純に「押していけば入る」というものではありません。
中でも軸保持短縮法という挿入法は痛みをあまり感じることなく行える方法なのですが、習得が難しくきちんとしたやり方をできる医師は実はそれほど多くないのが現状です。
 
 
そもそも大腸の粘膜には痛覚がありません。ですから内視鏡が大腸の中に入るだけでは痛みを感じないのです。
だた、スコープを挿入する際に無理に押したりすると、腸管が引っぱられることで腸を支える周辺の筋肉などの神経が刺激され、痛みを感じます。
 
 
当院の大腸カメラの挿入方法は、大腸を無理矢理に押すことなくそのままの形を維持しながら挿入する軸保持短縮法をベースに、圧迫法潜水法といった疼痛の出ない挿入法を組み合わせた当院独自の低痛挿入法での検査を行っています。
これにより挿入時の苦痛を限りなく減らすことができ、鎮静剤なしでも痛みを感じずに検査できる方も大勢おられます。
 
ちなみに他の挿入法としては、
・プッシュ法(どんどんスコープを押して入れる方法)
・ループ法(腸管を捻じって入れる方法)
などがあり、これらのやり方は比較的習得は容易なのですがいずれも痛みを伴うことが多く、鎮静剤なしはもちろん鎮静剤を使っても痛みを感じてしまうこともあります。
 

2.患者さんの大腸の形や癒着に合わせたスコープの選択

大腸内視鏡の痛みの原因には患者さんの大腸の状態も関係します。
 
過去に内臓の手術歴があったり、虫垂炎や憩室炎といった腸の炎症があったり、女性の場合は婦人科臓器の影響などで腸の癒着が起こったりすることがあります。
また便秘の方には大腸の過長などがみられ、挿入が難しい場合もあります。
 
そのような際には挿入法の工夫に加え、患者さんの腸の形や病歴に合わせて内視鏡の種類を選ぶといったことも大切になります。
 
大腸カメラと一口に言っても、実は使用するカメラの種類はたくさんあります。
柔らかくて細いもの、コシがあり少し太いもの、など色々です。
 
当院は数種類のカメラをそろえており、患者さんの腸の状態によって内視鏡を選択して検査を行っております。
例えば、
・手術歴があり癒着が予想される方;痛みが出にくいように柔らかくて細い内視鏡
・過長気味の大腸の方:コシがある内視鏡
といったように適切な内視鏡の用いることで、より苦痛を少なくスムーズに検査を受けることができます。
 

3.鎮静剤の使い方の工夫

内視鏡の際に鎮静剤を使っても辛いというのにも理由があります。

  1. 鎮静剤の量が少ない
  2. 鎮静剤が体質的に効きづらい。鎮静が覚めやすい
  3. 普段から抗不安薬や安定剤を飲んでいる

などです。

当院ではこれらの効かない理由に対して対策を行い、苦痛のない検査を受けていただくようにただ鎮静剤を使うだけでなく、お一人お一人に合わせ工夫して鎮静剤を使用しております。

a.鎮静剤の量が少ない

鎮静剤は種類により体重あたりの目安量があり、超過すると副作用が出てしまったり鎮静からの覚醒が遅くなったりすることがあります。

ただ少量増やすだけでも効きが具合が変わり、体重だけでなく患者さんの年齢や性別によって微調整することで、極力副作用を出さずに効果を発揮させることができます。

当院では鎮静剤の量を0.1㎎(1gの1万分の1)単位で調整しており、必要最小限の薬の量でも無痛で、かつ副作用の頻度も少なく安全に検査を行うことができます。

 

b.鎮静剤が体質的に効きづらい。鎮静剤が覚めやすい

鎮静剤は種類がいくつかあり種類によっては体質的に効きづらいことがあり、効きづらいからと言って量を増やすと副作用が出てしまうこともあります。

当院では種類の違う鎮静剤を組み合わせ、1種類では効かない方でも鎮静効果が出るような体制で検査を行っております。

また、覚めやすい体質の方は検査中に鎮静から醒めてしまうことがあります。そうした際にも途中で適量を追加投与出来るようにしております

 

c.普段から抗不安薬や安定剤を飲んでいる

心療内科や精神科で薬を飲んでいる方は、鎮静剤に対して耐性ができており鎮静がかなり効きづらい状態となっています。

このような場合でも上記のような量や種類の調整で対応できることがほとんどで、多くの方が苦痛なく検査を受けていただいております。

 

また当院では検査後の「張り」についても対策を行っております。

検査が終わったあとも、実は大腸カメラはまだ辛くなる要因が残っています。
それが、“空気によるお腹の張り”です。
 
大腸の中は普段はペタンとした状態ですが、検査中は大腸の中の襞の間などまでしっかりと見るために、空気を送り膨らませた状態で隅々まで観察します。
そのためどうしても空気によるお腹の張り感や、場合によっては吐き気が起こってしまうこともあります。
医師によっては過剰に送気を行ってしまい、張りによる苦しさを発生させてしまうことも少なくありません。
 
当院ではこのような検査中・検査後の張りによる苦痛を減らすため、必要以上の送気は行わないことはもちろん、空気の100倍吸収が早くお腹の張りが少ないと言われる炭酸ガスを用いて検査を行っております。
これにより検査後のお腹の張りが劇的に少なくなり、検査後もスムーズにご帰宅頂けます。
 

文責:神谷雄介院長(消化器内科・内視鏡専門医)

 

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